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26:離せ……っ!

 今まで立ち寄ったどの都よりも大きく、活気に満ち溢れている【ウェスト】の王都。


「だいぶ平和というか……なんの異変もないって感じですね……」

「俺が訪れた時と変わらない……」

「……私が売られていたところもそのままっぽいですね、この感じだと」


 貧困街も変わらずそこにあり、グラウが王妃アマロックと共に訴えていた奴隷制度も、かわらずそこにあるようで、時折、すれ違う大荷物を持って歩く獣人の足には枷が見えていた。

 昔から根付いている制度は、早々に変わるものではないということなのか、王の力が弱いのかは定かではないが……他国の事情に大きく関わることはなかなか難しいのだとグラウは心を痛めた。

 今回のことが落ち着いた後に、もう一度尽力しようと強く思った。


「今更なのだが……イサネはなぜ……売られていたんだ?」

「あ、そっか……当時の私、人見知りで黙ってましたもんね……あははは!」

「(あれは人見知りだったのか……)」


 女神と会い、送り出され目覚めた時……【ウェスト】の王都の水路に横たわっていたイサネ。

 たまたま近くを通った奴隷商に、たまたま話しかけた結果……捕まって商品にされたとのこと。


 グラウがイサネを引き取る前に、2箇所の豪邸持ちの獣人に買われたのだが……しゃべらず、獣人としての耳や尻尾の特徴の無かったイサネを気味悪がりすぐ返品された。同じ商品として檻に入れられた獣人の傷を密かに治したりしながら、売れ残っていた。


「たまたま奴隷商に話しかける奇跡か……」

「笑うなら笑ってください……私もそう思いますもの」

「イサネらしい……」

「それは、誉めてくれてるんですか……?」


 じっとりと睨まれグラウは少しだけ足早に城へ向かう。はぐれないように、手はつないだまま。


「……いきなり乗り込むんですか?」

「今までもなんとかなった……たぶん大丈夫」


 なぜか自信たっぷりな様子のグラウの後ろに体を隠しつつ、城門へ。


「とま……貴方は!」

「グラウ様!お久しぶりでございます!」

「突然すまない……」


 門を守る兵士に深々と頭を下げられるグラウ。


「おぉ……大丈夫そう」


 と、思ったのだが……安心して顔を覗かせたイサネをみた兵士の目つきが変わる。


「……後ろの方は?」

「その耳は……【紫炎の魔女(リラ・ウィッチ)】!!」

「え?」

「違う……いや違う訳じゃない……いや……」


 兵士が無理やりイサネの腕を掴み引っ張り上げ、連れて行こうとする。


「まさか捕らえてくださったとは……さすがグラウ様です!」

「違う……」

「い……いたっ!……やめっ!」


 ドゴッ!!!


「ぐあ!」

「なにを?!」

「離せ……っ!」


 痛がるイサネの姿に、思わず手が出てしまったグラウ。イサネを掴み、連れて行こうとしていた兵士を殴り飛ばしていた。


「まさかグラウ様……【紫炎の魔女(リラ・ウィッチ)】の術に落ちて……だれか!!手を貸してくれ!!」

「イサネ……」

「あたたた……ちょっと変な風に掴まれて声出しちゃいました……ありがとうグラウ様……でもちょっとやりすぎです」


 そっとイサネを抱き上げ心配そうに声をかけるが、その間に兵士に囲まれ、槍を突き立てられる。


「これは……抵抗しない方がよさそうですね……」

「なにをしゃべっている!これ以上グラウ様を惑わすんじゃない!この魔女め!!」

「……俺は……惑わされて……いない……」

「おいたわしや……自分を見失っておられる……!」


 話が全く通じない……届かない声のその答えは、兵士たちの目に宿る紫色の揺らぎにあった。


「大人しく……こちらへ」


 言われるがままに城内へ招かれる……ある意味では、歓迎されていると、言えるだろう。

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