20.5:【紫炎の魔女】
美しく花が咲き乱れ、綺麗に整備された庭園をゆっくりと花を愛でながら優雅に歩く女性がひとり。
「……きれいに咲いちゃって……バカみたい、もうすぐ枯れちゃうのに」
ゆるい巻き髪にした薄紫色の長い髪を揺らしながら庭園の中央にある噴水に着くと、人差し指でチョンっと水を弾く。水の形状がするすると変化し、丸い形の水鏡になった。水面を滑らせるように指を動かすと、ポンポンと映る景色が変わっていく。
ひと通り見終わったのだろう、顎に手をあて、首をかしげて不思議そうにしている。
「おかしいわ……【サウス】の絵がでない……うーん?」
確かめるためにもう一度……今度は少しだけ、じっくりと。
「……解けた?」
そして、気付いた。
「はぁん?【聖女】として役目を果たしているとでも思ってるのかしら?」
しかめっ面をし、水鏡をひっかいて散らし、水に戻した。
「バカな女……私がいる限り、永遠に貴女は【聖女】として迎え入れられることはない……でも――」
にんまりと笑って、くるくると指を回して水鏡をもう一度新しく……今度は、どこかと通信をし始めた。
「はぁいバイパーちゃん?例のお仕事お願いね?もうそこにいるみたいだから……ワンチャンいけそうなら奪っちゃってもいいわ」
「承知しました……愛しき【紫炎の魔女】様」
肌に鱗が付いた小柄な男がそれに応える。続けて話そうとした時、近づく足音が耳に入り、即座に通信を切った。
そして振り返り、満面の笑顔で声をかけてきた男に駆け寄り、べったりと体を押し付けて、抱き合う。
「ここにいたのかユヅキ……探したよ」
「リンクス様……花がとても綺麗で……時間を忘れて鑑賞してしまいました」
「そうだったか……残りわずかな時間を花を慈しむために使うとは……あぁ……止められるものなら止めたい」
「心配なさらないでリンクス様……私がいます、必ず、この美しい国を守って見せますわ」
「見目だけでなく心も美しい……そなたのような美しき【聖女】が余の腕の中にいてくれること……誇りに思う」
【ウェスト】の王リンクスは【紫炎の魔女】を、さらに抱きしめた。
「【紫炎の魔女】を止めましょう……ねえ、リンクス様?」
その腕の中で不敵に笑い呟いた彼女は……【紫炎の魔女】なのか……本当は、【聖女】なのか。




