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プロローグⅩⅢ『旅の始まり』◆

『もう大丈夫だよ』

 そう告げた貴方は、その身を投げ出して——

「おい無事か!? かぷ……こーん……」


 TOIKIを振り返ることもせず、かぷこーんが吹き飛ばされた方に駆け寄るが、そこにいた存在を目にした瞬間、それがかぷこーんであると結び付けることが出来ずにいた。


「どう、して……」


 すのぴも同様で、目の前の存在に驚きを隠せずにいた。

 兎人族を思わせる特徴的な長耳——そして桃色の体毛が、背負ったすのぴと同質の存在であることを突きつけてくる。


「……凄いですね、これは」


 こちらの動揺には目もくれず、自身の様子に感心しているようだった。


「お前、かぷこーん……だよな?」


 声がそうだったのだが、未だに信じられずにいる自分を納得させるために質問を投げかける。


「はい、かぷこーんですよ」


 その肯定は聞いたこちらの心の内を複雑に掻き乱していく。

 無事で良かったと思う反面、彼の姿がこれから何をしようとしているのかを連想させて、怒りが沸き立つ。


「お前、変な事考えてんじゃねぇだろうな!?」


 詰め寄り、その胸倉を締め上げる。

 だが、こちらの予想通りと言うべきか、返ってきたのは曖昧な苦笑だった。


「逃げてください」


 短くそう告げる言葉に、予感は確信へと変わる。

 どうしてという問いは言葉にせずとも良かった。

 騎士と同列に語る気はなかったが、きっと自分が同じ状況でもそうしたであろうから——


「え……かぷこーんさん、は?」


 状況が飲み込めず、狼狽するすのぴを見やり、かぷこーんが優しい声音を向ける。


「もう大丈夫だよ」


 問いに対する答えではなかったが、ただそれだけを告げてこちらの肩越しにすのぴの頭を撫でていた。

 慈しむかのような優しい瞳を湛えながら、かぷこーんがこちらを真っ直ぐに見つめてくる。


「とらさん——これを」

「お前……」


 有無を言わせず、押し付けてきたのは、


 ——マジカルソフトと、


「比翼の燈籠という古代遺物です。深淵領域外で待機している仲間の元へ導いてくれます」


 ガラスで覆われたランタンの中で揺れる青い灯火が偏り、片割れがいる方向を指し示している。


「それと、これを」


 仲間に会えたら渡して欲しいと羊皮紙の束を握らせてくる。


「……自分で渡せよ」

「頼みましたよ」


 時間が惜しいと言わんばかりに、こちらの言い分を聞く気はないらしい。

 すると、後方——自分が駆けてきた所から異常なまでの威圧感が膨れ上がるのを察知する。


「もしかしたら、この身体ならTOIKIと良い勝負になるかもしれませんよ」


 こちらの手を解き、かぷこーんが歩み始める。


「逃げ切れそうなら……そうですね、二ヶ月後にギルド総本部で合流しましょう」


 けど、


「それが難しそうなら——」


 一年後またここで、と告げた直後に跳躍し、気配が遠ざかるのを感じた。

 その言葉だけで、今の彼がどんな存在へと変貌したのかは、想像に難くなかった。


「——」

「とらさん!? かぷこーんさんが!」


 ようやく事態を理解してきたのか、すのぴが声でこちらを引き止めようとしてくる。


「行くぞ」

「でも——!」

「——ッ! 行くぞ!!」


 声を張り上げ、すのぴを黙らせる。

 もうどうしようもない。他に手がない。

 その事を理解したすのぴが、それでも追い縋るような嗚咽と共に滂沱の涙を流しているのを背中越しに感じる。

 後方から響く咆哮や破砕音を背に受けて、歩を前に進めていく。

 生かされた、その事実を胸に抱き、荒れ果てた大地を突き進む——


 全てを取り戻すために——


 抗いの旅が始まった。

 悔恨が身を焼き、己の無力さが心を締め付ける。

 されど、その意志は折れず——

『必ず助けるから』

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プロローグ全体を読ませていただきました。全体の感想を一つにまとめさせていただきます。 伝説と絶望が交錯する超大陸マイアケ。その深淵領域と呼ばれる闇の底で、記憶を失った桃毛の兎人族「すのぴ」が、ギルドの…
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