26.roaring flames
ディック・オルソンが喚きながら背丈ほどあるポールを振りかざして二匹のところへ迫り来る。
『邪魔だああ! この畜生どもぉおお!』
ひるむアルフレッド。
『逃げるぞトム!』
だがトムはディックを睨み、逃げない。
アルフレッドが唸り声を上げた。
『いかん! わしが盾とならねば!』
その時、走って来るディックに飛びかかる黒い影が。ディックの腕に食らいつき、煌めく爪が弧を描く。
慌てふためく帝王ディック。
「クッソ、この黒猫め!」
襲いかかるのを力任せに振り払われた彼――カシラは勇ましく着地した。
アルフレッドは目を疑った。
『お、お前……』
忽然と舞い戻ったのは彼だけではなかった。
その周りにはサブ、ゴツ、ペロ、そしてマナの姿も。
カシラはアルフレッドに言った。
『嫌な予感がしたんでな』
そしてまたディックに身構えた。
ディックはロンとロッドを呼びつけた。
「何をモタモタしておる! この猫どもを追っ払え!」
そして長いポールを振り回し、トム目掛けて声を張り上げた。
「ええーーい! ここから出て行けーーーー!」
トムを背に立ちはだかるカシラ。
『己の欲のために力ずくで邪魔者を排除する……これが人間の醜さよ……哀れなり!』
カシラはそう吐き捨て、サブたちに指示を。
飛びかかる彼らに作業員二人は逃げ腰だ。
カシラの強襲を撥ねのける帝王ディック。
それでもトムは動かなかった。
立ち向かう気迫で一閃にディックを睨む。
その目には紅蓮の炎!
『やってみろ! ここで死ねるなら本望だ!』
マナがディックの手に飛びつき、引っ掻いたその時だった。
暴れるディックの腕をガシリと掴み、その動きを完全に封じる者が。
それは、
「ニ、ニック! お前、いつの間に?!」
そこへ訪れていたニックは父親のディックを冷ややかな目で見ていた。
「……恥ずかしいとは思わないか? 親父よ」
「はぁあ? 何をぬかすかキサマ!」
ニックはディックの襟元を鷲掴み、拳を握ると次の瞬間、
「この大馬鹿野郎!」と、懺悔の一発を食らわした……。




