25.here comes the emperor
アルフレッドはトムに言った。
『もうここへ来ても、ビンセントさんには会えんぞ。もう帰っては来んのじゃ』
『うん。わかってる。もうわかってきた』
トムは笑ってみせ、アルフレッドが言う前に言った。
『ビンセントさんは心の中で生きてる。だからいつでも会えるんじゃ。……でしょ?』
そして胸を張り、目を閉じて冷気を吸い込んだ。
『じいちゃん、ちょうど今の時季なんだ。ぼくがビンセントさんに拾われたの』
『おぅ、そうじゃった。覚えているとも。小ちゃいお前がぶるぶる震えておった』
と、アルフレッドは身震いした後、大きなクシャミをした。
『へぇーーっくしょい! ぅう〜〜! 老体には沁みるわい』
鼻水をだらんと垂らしたアルフレッドを見てトムは吹き出す。
『プッ、ぶるぶる汚ね〜! ハハハ』
『これ、笑うでない! フフ……ゥホホ』
聳えるNOEAを眺めながら、ディック・オルソンは呟いた。
「……ニックのやつめ。どこへ消えやがった……」
それから毛皮のコートを脱ぎ、ロンとロッドを従え敷地を見て回る。
やがてディックはドン! と音を立てるようにある方向を指差した。
「あれは何だ? あの犬と……猫か?」
「あ、あれは、その〜、以前パン屋の親父が飼ってた犬と猫のようでして」
「……はは〜ん。例の土地か、あそこが。何故追い払わん!」
「あ、はぁ……では今から……」
ロンとロッドが顔を見合わせもたついていると、
「えーーい! そいつをよこせ!」
と、ディックはロッドの持つ測量ポールを取り上げ、いきなり走り出した。
トムが耳を立てる。
『じいちゃん、人が来る!』『何?』
アルフレッドは振り向き、遠くから一直線に向かってくる人間に吠えた。
『何じゃ? わしらを狙うておる!』




