24.the old site
一時保留となっていた八の一番街跡地の工事がいよいよ始まろうとしていた。
ディック・オルソン会長は強引にカジノの建設を推し進めた。
「ニックは外した。私が直々に取り仕切る」
十二月の寒空、早朝。
今、二人の土木作業員がそこへ足を踏み入れた。
氷点下の地表。ザクッザクッと霜が鳴る。
測量の道具を肩に掛け、白い息を吐きながらレベル係のロンが言う。
「うぅ〜〜寒ぃ〜なぁー はぁ〜!」
測量ポールを持つロッドが鬱々と呟く。
「あぁ……しかしマジで来んのかよ帝王(ディック会長)、ここを視察にぃ?」
「ああ。NOEAの開店前に見ておきたいって。……この寒さであの禿げ頭も凍るぜ〜」
「ワハハ、ツルピカで眩しい〜ってな!」
「ワハハ」と、二人がふざけ合っていたその先にいたのは――。
「おい、見ろよ。あの猫。知ってるか?」
「なんかずっとウロついてんだろ?」
「なんでもあそこにあったパン屋の飼い猫だったらしいぜ。時には……ぁ、ほら来た。ゴールデンレトリバーも」
「何だ? ご主人様はよ?」
「死んだって」
「えー! ……何でまた」
「その土地売ってから……病気でな」
「例のあれか、ニックさんが五百万で買って、そいで会長が怒って」
「んーでもニックさんも脅されただとか、恨まれるだとか、理由があったみてえ」
「まー元々ソリの合わねえ親子だからな。勝手にしやがれだ」
「しかし見ろよ猫ちゃんとワン公……なんだか可愛そうじゃねえか……スゲーやつれてんぞ」
「うむー。だな〜」
その時だった。門の向こうに一台のベンツが停まった。
「「わ! 会長だ!」」
二人は慌てて走っていき、門を開け、車を彼らのワゴン車のそばに誘導した。
そして並んでペコリと頭を下げる。
「「おはようございまーす!」」