第35話 任せる
百四十七枚。
◇
「……無理。」
「はい。」
即答だった。
ココアが顔を上げる。
「先生。」
「はい。」
「もう少し。」
「考えてから言ってもいいと思う。」
「昨日の時点で。」
「分かっておりましたので。」
「……。」
朝食の席。
テーブルには。
この周辺の畑を記した地図。
その数。
百四十七枚。
昨日。
聞いた時は。
多いと思った。
でも。
調べればいいとも思った。
土を取る。
水を入れる。
混ぜる。
待つ。
濾す。
水を飛ばす。
残ったものを比べる。
一枚ずつ。
丁寧に。
「……。」
ココアは。
研究帳の端へ。
一枚に必要な時間を書く。
掛ける。
百四十七。
「……。」
もう一度。
計算する。
「……やっぱり無理。」
「はい。」
「二回目。」
「結果は。」
「変わりませんので。」
セバスが。
紅茶を置いた。
「ココア様。」
「なに?」
「まさか。」
「お一人で。」
「百四十七枚すべてを。」
「調べるおつもりでしたか?」
「……ちょっと。」
「ちょっと?」
「かなり。」
「でしょうな。」
ココアは。
地図へ視線を戻した。
自分で見ればいい。
自分で調べればいい。
分からなければ。
もっと調べればいい。
前世でも。
そうしてきた。
この世界へ来てからも。
そうしてきた。
でも。
百四十七枚。
一人では。
届かない。
「じゃあ。」
「はい。」
「人を増やす。」
「誰を?」
「ヨハンさん。」
「他には?」
「農家の人。」
「何人ほど?」
「……いっぱい。」
「どのように。」
「調べていただきますか?」
「昨日の方法。」
「土の量は?」
「同じ。」
「何をもって。」
「同じといたします?」
「……。」
「水の量は?」
「同じ……。」
「待つ時間は?」
「……。」
「使う布は?」
「……。」
「皿に残ったものを。」
「多い。」
「少ない。」
「誰が判断いたしますか?」
「……先生。」
「はい。」
「今日。」
「質問多い。」
「百四十七枚。」
「ございますので。」
「それ。」
「便利だね。」
「ええ。」
◇
人を増やす。
それだけでは。
駄目。
ココアができる方法ではなく。
誰でも。
同じようにできる方法にする。
そうしなければ。
人を増やしても。
結果が。
ばらばらになる。
「……揃える。」
「何を?」
「全部。」
ココアが。
椅子を降りる。
「先生。」
「はい。」
「ノエルのところ行ってくる。」
「朝食は?」
「……。」
「朝食は?」
「食べる。」
「よろしい。」
◇
朝食後。
ヨハンの家。
◇
「分かりにくい。」
「……。」
「これも。」
ノエルが。
調査票へ指を置く。
「分かりにくい。」
もう一つ。
「これも。」
「……全部?」
「全部じゃないよ。」
「……よかった。」
「半分くらい。」
「……。」
ココアが作ってきた調査票。
『雨後の滞水時間』
『土壌含水状態』
『排水先までの高低差』
『前年差収量』
ノエルが。
眉を寄せる。
「これ。」
「農家の人に。」
「聞くんだよね?」
「うん。」
「だったら。」
指差す。
「雨の次の日に。」
「水が残ってた?」
「……。」
「去年より。」
「採れた?」
「採れなかった?」
「……。」
「水がどっちに流れるかは。」
「畑見れば分かる。」
「……。」
ココアが。
ノエルを見る。
「駄目?」
「駄目。」
「全部?」
「半分。」
「……。」
隣で。
ヨハンが。
肩を震わせている。
「ヨハンさん。」
「ん?」
「笑ってる。」
「笑ってない。」
「笑ってる。」
「気のせいだ。」
「ノエル。」
「笑ってるよ。」
「ほら。」
「ノエル。」
「なに?」
「味方だと思ってた。」
「味方だから。」
「分かりにくいって言ってるの。」
「……。」
ココアが。
もう一度。
調査票を見る。
その通りだった。
◇
知りたいことを書く。
それだけでは。
駄目。
これは。
研究帳ではない。
この土地の人が。
自分の畑を。
自分で調べるためのもの。
自分にとって。
正確でも。
使う人が。
使えなければ。
意味がない。
「……直す。」
「うん。」
「ノエル。」
「なに?」
「手伝って。」
「いいよ。」
◇
二人で。
作り直した。
雨の次の日。
水が残る。
○。
×。
去年より。
収穫が減った。
○。
×。
川から。
近い。
遠い。
畑の中で。
水が溜まりやすい場所。
あり。
なし。
そして。
土を入れる器。
水を入れる器。
混ぜる回数。
待つ時間。
濾す布。
皿へ入れる量。
全部。
同じにする。
最後。
水がなくなった皿へ。
残ったものを。
『少ない』
『普通』
『多い』
三つに分けた。
「これなら?」
「分かる。」
「ほんと?」
「うん。」
「ヨハンさん。」
「ん?」
「やってみて。」
「俺が?」
「うん。」
◇
ヨハンが。
調査票を持つ。
決められた器で。
土を取る。
水を入れる。
決めた回数だけ。
混ぜる。
待つ。
濾す。
皿へ移す。
ココアは。
一度も。
手を出さなかった。
「……。」
途中。
一度だけ。
右手が。
ぴくりと動いた。
量が。
少しだけ。
気になった。
でも。
止める。
自分が直したら。
意味がない。
「……できたぞ。」
「うん。」
「これでいいのか?」
「いい。」
「昨日も。」
「似たようなこと。」
「やっただろ?」
「違う。」
ココアは。
調査票を。
持ち上げた。
「昨日は。」
「私が調べた。」
「今日は?」
「方法を作った。」
「……。」
「私じゃなくても。」
「できる方法。」
◇
昼。
ヨハンの畑へ。
五人の農家が。
集まった。
「難しいことは。」
「やらない。」
ココアが。
説明する。
「同じ器。」
「同じ量の土。」
「同じ量の水。」
「同じ回数。」
「同じ時間。」
「それで。」
「同じように。」
「記録する。」
一人の農夫が。
紙を見る。
「字が苦手な奴は?」
「……。」
ココアが。
止まる。
「あ。」
ノエルが。
横から。
紙を取った。
「じゃあ。」
「絵にすれば?」
「絵?」
「水が残るなら。」
「水たまり。」
「川なら。」
「川の絵。」
「去年より採れなかったなら。」
「空っぽの籠。」
「……。」
ココアが。
ノエルを見る。
「ノエル。」
「なに?」
「頭いい。」
「昨日も聞いた。」
「今日も思った。」
「じゃあ。」
「明日も言って。」
「分かった。」
農家たちが。
声を上げて笑った。
◇
文字。
数字。
簡単な絵。
読める人も。
読むのが苦手な人も。
同じように。
使えるものへ。
◇
「これなら。」
一人の農夫が言った。
「俺でもできるな。」
「うん。」
「魔法は。」
「いらないのか?」
「いらない。」
「お嬢が。」
「見なくても?」
「できる。」
「……。」
農夫が。
少し不思議そうに。
ココアを見る。
「魔力がないって。」
「聞いてたが。」
「うん。」
「なのに。」
手にした。
調査票を見る。
「魔法がなくても。」
「畑を調べられる方法を。」
「作るのか。」
「……うん。」
隣にいた男が。
苦笑した。
「変な話だな。」
「何が?」
「魔力がないから。」
「何もできないって。」
「ずいぶん聞いたぞ。」
男は。
紙を。
ひらひらさせる。
「その何もできないはずの子に。」
「俺たちは今。」
「畑の調べ方を。」
「教わってる。」
「……。」
誰かが。
小さく笑った。
でも。
それは。
ココアを。
馬鹿にする笑いではない。
「そういや。」
別の農夫が。
ぽつりと言う。
「眼鏡作ったのも。」
「このお嬢なんだろ?」
「そうらしいな。」
「白い調味料も。」
「マヨネーズ。」
ココアが訂正する。
「それ。」
「……。」
最初の男が。
もう一度。
調査票を見る。
「魔力がないと。」
「何もできねえ、か。」
鼻で。
少し笑った。
「誰が言い出したんだろうな。」
「噂なんて。」
ヨハンが言った。
「畑じゃ。」
「芽も出さんからな。」
農家たちが。
笑う。
「……。」
ココアだけが。
少し。
首を傾げた。
「噂を蒔いたら。」
「芽が出る?」
「出ない。」
「肥料にしたら?」
「ならん。」
「燃やす?」
「そこ。」
「真面目に考えるな。」
「むぅ。」
また。
笑いが起きた。
◇
魔力零。
それだけで。
何もできないと。
決められた。
けれど。
今。
魔法を使える農家も。
使えない農家も。
その少女が作った方法を。
手にしていた。
噂より。
目の前の結果。
この土地の人たちは。
少しずつ。
そちらを。
見始めていた。
◇
「じゃあ。」
ココアが。
地図を広げる。
「分かれる。」
農家たちが。
覗き込む。
「ヨハンさんは。」
「西側。」
「分かった。」
「こっちは。」
「二人で。」
「おう。」
「こっちは――」
割り振っていく。
そして。
ココアは。
東側を見る。
「私は――」
言いかける。
「……。」
◇
自分で見れば。
早い。
間違いも。
少ない。
分からなければ。
エレメントサイトを使えばいい。
それが。
一番。
確実。
◇
でも。
昨日。
一番嬉しかったのは。
自分が。
塩を減らした区画ではなかった。
自分が。
何もしなかった区画。
自分がいなくても。
芽が出た場所。
『私がいなくても、できたから』
そう。
思った。
なのに。
調べる時だけ。
全部。
自分でやるの?
◇
ココアは。
隣を見る。
ノエル。
水が残る畑を。
最初に見つけた。
今日。
ココアが作った調査票を。
半分。
駄目だと言った。
そして。
もっと。
使いやすくした。
この土地の畑を。
ココアより。
ずっと知っている。
◇
自分でやった方が。
安心。
でも。
それでは。
百四十七枚には。
届かない。
「ノエル。」
「なに?」
ココアは。
一枚の調査票を。
差し出した。
「東側。」
「お願いしていい?」
「……。」
ノエルが。
紙を見る。
「私が?」
「うん。」
「ココアは?」
「行かない。」
「……なんで?」
ココアは。
一瞬。
迷った。
それから。
「私が全部やったら。」
紙を。
もう少し。
前へ出す。
「ずっと。」
「私がいないと。」
「できないから。」
「……。」
ノエルは。
まだ。
紙を受け取らない。
「私。」
「ココアみたいに。」
「見えないよ?」
「うん。」
「土の中が。」
「どうなってるかも。」
「分からない。」
「うん。」
「だったら――」
「でも。」
ココアが。
ノエルを見る。
「畑は。」
「私より見てる。」
「……。」
「水も。」
「土も。」
「作物も。」
「私より知ってる。」
「……。」
「私にできることと。」
「ノエルにできることは。」
「違う。」
「違うから。」
「一緒にできる。」
「……。」
ノエルが。
ココアを見る。
「分からなかったら?」
「分からないって書いて。」
「それでいいの?」
「いい。」
「間違えたら?」
「一緒に調べる。」
「……。」
ノエルが。
ゆっくり。
紙を受け取った。
「分かった。」
ぎゅっと。
握る。
「行ってくる。」
「うん。」
◇
ノエルが。
走っていく。
ココアは。
その背中を。
見ていた。
落ち着かない。
自分で。
見に行きたい。
ちゃんと。
同じ量を使えているか。
記録できているか。
一歩。
足が動く。
「ココア様。」
「……なに?」
「西側は。」
「こちらでございます。」
「分かってる。」
「左様で。」
セバスが。
眼鏡を押し上げた。
「任せるというのも。」
「なかなか。」
「難しいものでございましょう?」
「……うん。」
「ですが。」
「はい。」
「ノエル殿へ。」
「任せたのでしょう?」
「うん。」
「でしたら。」
セバスが。
西側を見る。
「まずは。」
「ご自身のお仕事を。」
「……うん。」
ココアは。
ノエルとは。
反対の方向へ。
歩き出した。
◇
夕方。
一人。
また一人。
農家たちが。
戻ってくる。
調査票が。
集まった。
水が残る。
収穫が減った。
川に近い。
皿に残るものが多い。
そして。
「ただいま!」
ココアが。
振り返る。
ノエル。
泥だらけ。
髪には。
草。
でも。
笑っている。
「これ!」
三枚の。
調査票。
「三つ?」
「うん。」
「一つは。」
「たぶん大丈夫。」
「一つは。」
「雨のあと。」
「すごく水が残る。」
「最後の一つは……。」
ノエルが。
少し考える。
「分かんない。」
「……。」
「水は残るけど。」
「作物は普通。」
「だから。」
「分かんないって書いた。」
ココアが。
紙を見る。
『分からない』
ちゃんと。
そう書いてある。
「……。」
ココアが。
笑った。
「すごくいい。」
「分からないのに?」
「うん。」
「分からないことを。」
「分かったことに。」
「しなかったから。」
「……。」
「それ。」
「すごく大事。」
◇
「じゃあ。」
「確認する。」
ココアが言った。
ノエルの顔が。
少しだけ。
曇る。
「私のこと。」
「信用してない?」
「違う。」
ココアは。
すぐに。
首を振った。
「今日だけ。」
「今日だけ?」
「この方法で。」
「ノエルが調べた結果と。」
「私が見た結果が。」
「同じになるか。」
「確かめたい。」
「……。」
「同じなら。」
「次から。」
「全部は見ない。」
「ほんと?」
「うん。」
「今日の三枚は。」
「ノエルを試すんじゃなくて。」
「この方法を。」
「試すの。」
「……。」
ノエルが。
紙を見る。
「分かった。」
◇
一枚目。
ココアが。
土へ意識を向ける。
「すいへー……。」
「りーべー……。」
世界が。
変わる。
見る。
二枚目。
見る。
そして。
三枚目。
「……。」
しばらく。
黙る。
◇
戻った頃には。
ノエルが。
待ちきれない顔をしていた。
「どうだった?」
「……。」
「間違ってた?」
ココアは。
三枚の紙を見る。
一枚。
二枚。
三枚。
「合ってる。」
「……どれが?」
「全部。」
「……全部?」
「うん。」
ノエルが。
目を見開く。
「私。」
「見えてないよ?」
「うん。」
「ココアみたいには。」
「何も。」
「見えてない。」
「うん。」
ココアが。
調査票を。
ノエルへ返す。
「でも。」
「分かった。」
「……。」
ノエルが。
紙を見る。
その顔が。
ゆっくり。
笑顔になる。
「分かった!」
「うん。」
「私にも!」
「うん!」
ココアも。
笑った。
「じゃあ。」
「次から。」
「うん。」
「ノエルのところは。」
「任せる。」
「……。」
一瞬。
ノエルが。
何も言わなくなる。
それから。
大きく。
頷いた。
「任せて!」
◇
任せるのは。
怖かった。
自分で確かめる方が。
ずっと。
簡単だった。
でも。
任せたから。
自分以外にも。
分かる人が。
一人増えた。
◇
「ノエル。」
後ろから。
声。
昼にいた。
農夫だった。
「なに?」
「明日。」
「うちの南の畑も。」
「見てくれないか?」
「……。」
ノエルが。
固まる。
「私?」
「ああ。」
「ココアじゃなくて?」
「お嬢は。」
「他も見なきゃならんだろ。」
男が。
笑う。
「お前。」
「分かるんだろ?」
「……。」
ノエルが。
ココアを見る。
ココアは。
何も言わない。
ただ。
笑って。
頷いた。
「……うん。」
ノエルが。
農夫を見る。
「見る。」
◇
昨日まで。
ノエルは。
農家の娘だった。
今日。
初めて。
別の農家から。
畑を見てほしいと。
頼まれた。
◇
そして。
少し前まで。
魔力零の伯爵令嬢は。
何ができるのかと。
遠巻きに。
見られていた。
今日。
その少女が作った。
調査票を持って。
農家たちは。
自分の畑へ。
帰っていった。
魔力がある者も。
ない者も。
関係なく。
◇
「何もできない。」
そう言った者が。
ここにいたのかは。
ココアには。
分からない。
けれど。
少なくとも。
もう。
目の前で。
そう言う者はいなかった。
言葉より。
結果の方が。
ずっと。
分かりやすかった。
◇
夕方。
叔父の屋敷。
地図には。
昨日より。
多くの印が。
ついていた。
「一日で。」
叔父が。
地図を見る。
「ここまで調べたのか。」
「うん。」
「お前が?」
「違う。」
ココアは。
首を振る。
ヨハン。
農家たち。
そして。
少し離れたところで。
泥だらけの靴を。
ヒルダに拭かれている。
ノエル。
「みんなで。」
叔父が。
ココアを見る。
それから。
ノエルを見る。
「そうか。」
少しだけ。
笑った。
「なら。」
地図の印を。
指差す。
「次だ。」
「次?」
「ああ。」
赤い印。
黄色い印。
まだ。
色のない場所。
「全部を。」
「同時には直せん。」
「……。」
「人も。」
「金も。」
「水も。」
「時間も。」
「無限ではない。」
ココアの顔から。
笑みが。
消えた。
「ココア。」
叔父の指が。
地図を。
叩く。
「お前なら。」
「どこから直す?」
◇
どの畑にも。
人がいる。
どの畑にも。
生活がある。
困っているなら。
全部。
助けたい。
でも。
全部を。
同時には。
助けられない。
◇
今日。
全部を。
自分でやらなくてもいいと。
覚えた。
次は。
全部を。
同時にやらなくてもいいと。
覚えなければならない。
◇
ココアは。
研究帳を。
開く。
新しいページ。
そこへ。
『優先順位』
と。
書いた。
「……。」
しばらく。
その文字を。
見る。
「……これ。」
「研究より。」
「難しい。」
叔父が。
笑った。
◇
屋敷を出た頃。
空は。
赤く染まっていた。
「お嬢様。」
隣を歩く。
ノエル。
「なに?」
「……。」
「ノエル?」
「ねえ。」
「うん。」
ノエルが。
前を向いたまま。
言う。
「ずっと。」
「お嬢様って。」
「呼ばないと駄目?」
「……?」
ココアが。
足を止めた。
「なんで?」
「だって。」
ノエルも。
止まる。
「一緒に畑見て。」
「一緒に土調べて。」
「今日。」
「私に任せてくれた。」
少しだけ。
言いにくそうに。
「だから。」
「ココアって。」
「呼んでもいい?」
「……。」
お嬢様。
ココア様。
伯爵令嬢。
そう呼ばれることには。
慣れていた。
でも。
同じくらいの女の子から。
ただ。
名前だけで。
呼ばれることには。
慣れていなかった。
「……いいよ。」
ノエルが。
笑う。
「じゃあ。」
「ココア。」
「……うん。」
「ココア。」
「二回言った。」
「言ってみたかった。」
「変?」
「ちょっと。」
「やめる?」
「やめない。」
ココアも。
笑った。
「ノエル。」
「なに?」
「明日も。」
「お願いしていい?」
「うん。」
今度は。
すぐに。
返事が返ってきた。
◇
百四十七枚。
一人では。
とても。
届かない。
以前のココアなら。
それでも。
自分で。
全部見ようとした。
でも。
今日は。
違う。
◇
自分に。
できないことを。
認める。
誰かに。
できることを。
見つける。
方法を。
共有する。
確かめる。
そして。
任せる。
◇
一人では。
届かない場所にも。
人と。
繋がれば。
きっと。
届く。




