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08:新たな夜明け

♪~カラァ~ン♪カラァ~ン♪



教会の鐘が高らかに鳴り響く。参列者は少ないがそれなりに高貴な人間の式だと言う事は感じてもらえるだろう。旅立つのに、こんなにいい日はないと言わんばかりの快晴。



本日は、アスクウェル=プリラモールのお葬儀です。




裁判終了後、あれだけのギャラリーがいる中、意識を失った私は王都にある屋敷の一室で目覚めましたが、世間的にはまだ昏睡状態継続中。



それから2週間後、アスクウェル=プリラモールは残念ながらこの世を去りました。




はじめは、領地で静かに細々と葬儀を上げて、それとなく王都にいる貴族たちに告知するつもりだったのだが、どういった訳か話を聞きつけた陛下が今まで気づかなかった詫びに、自分が葬儀を受け持とうかとそれはそれは大騒動だった。




何とか宰相と父様が説得して、王都で葬儀を上げるだけに留めてもらった。大々的にされたら、ほとぼり冷めるまで何年かかることやら。




私は背中辺りまであった頭髪を肩口でバッサリ切り落とし、魔法を駆使してオレンジだった髪色を桜色のピンクに、ふわふわパーマをストレートにした。



目をいじるのはさすがに怖かったので色はそのままだが、もう別人だ。




そもそも、10年寝ていたので当時の同級生はみんな成長して、すれ違ったとしても誰かわからない。

棺の中にはバッサリ切った髪で作った私そっくりさん人形が納められている。



またまた影の仕事なんですが、あまりにも本物との見分けがつかなくて、鳥肌が立った。



葬儀の間、私は父様の割と側に従者として紛れ込んでいたのだが、心配になるぐらい憔悴しきってる。私生きてるよね?



棺は高温炎魔法が得意な教会関係者が骨も残さずに火葬するらしい。最後の別れの時、父様は棺に入っている私の身代わりを抱きしめながら、涙を流して別れを惜しんでいた。



私はその光景を見ながら、ここにはいない‘彼’に思いを馳せた…。




数か月後、市井では父様の株が急上昇。


なぜなら血の繋がらない子供など、貴族会の恥で、失笑や嘲笑のネタになるはずなのだが、そんな子供を我が子の様に愛して、こんなにも別れを惜しんでいるなんて、なんと情が深い、さぞ領民にも心砕いている事だろうと王都で歌劇になり株が急上昇しているらしいとは、あとから風のうわさで聞いた。










あれから半年――― 私はというと、父様に❝ウル❞と新たな名前をいただいて、領地にある書庫に籠ってありとあらゆる本を読み漁っている。



分からないことがあれば、父様に着けてもらった教師にとことん質問しまくり、知識を吸収しまくった。



ある程度、満足するまで情報を溜め込んだら、ときどき城下町にコッソリ繰り出し検証。



「ウル~、今日は魚新鮮なのはいってるよ‼ 持っていくか? 」


「帰りにまた寄るから、その時にさばいてよ。」


「今日は珍しい果物が入ったよウル坊、持ってきな!」


「おばさん、ありがとう。宣伝しとくね。」


「ウルちゃん、こっちのも食べとくれよ。」



今日も城下町は大賑わいだ。経済的に困窮しているようには見えない。それもそのはずだ、父様の納めるここプリラモール領地は貿易の要であり、他国との玄関口でもある。




王都から領地に帰ってきてからまず初めにしたのは、地図を眺めることだった。すると、はざまの国エンプレなんてうまいもんだよね~。この国すごく大きな2つの国に挟まれている国だった。




昔は戦争も多かったみたいだが、ここ100年ほど何とか均衡を保ちながら平和が続いている。

地図上で見るとEの真ん中がエンプレその先頭、で最果てがプリラモールの街だ。



昔は、陸路から物を運んで商売をしていたので、プリラモール領までモノがほとんど届かず見捨てられた街何て呼ばれていたのだが、ご先祖様ががんばりました。なんと、蒸気機関車を発明。



それも魔力が原動力なのでクリーン。横長の土地を活かし王都を串刺しにしたように列車の線路を設計。


Eの上が大国ダスタフ、下が帝国マーラル。この二国仲が悪いので、たびたび陸路では衝突することもあったのだが、プリラモール領に二つ港の窓口を作り、間に港町を作る。



お互いが顔を合わせず取引きをすれば後は、機関車で王都まで一直線のルートを作れば物流スピードが桁違い。プリラモール領が三日月形の地形をうまく利用した提案だった。


当時の王様のGOサインが出たので国の一大事業となり、産業革命突入。



ではどうして、今 困窮しているのかというと… まず一つは王都にある屋敷の維持費、散財していた経費分は削ることができたので、何とか少しの間は持ちそうなのだが、まだ苦しい。




プリラモールの領地は三日月形になっているのだが、その上と下は魔の森が広がっている。言葉の通り人間が足を踏み入れてはならない魔の森だ。




開拓しようものなら、普段は大人しい魔の森の住人たちが牙をむくらしい。まぁ、詳しい話は置いておいて、この領は人間の生活範囲が全体の3割ほどしかない。魔の森に続きその隣に山脈があり、宝石などが数多く出土したが今では全盛期の三分の一程度。



港町はあるので賑わってはいるが、自分たちの領から出荷している物はほとんどなく、国に納めなければならない税金、貿易費用、その他もろもろを合わせるとマイナスになる。




特に廃れてきているのは、採掘の町【ハティア】加工の町【モルデラ】。採掘がないと加工するものがなく、仕事がない。しかし、宝石がないから取りたくてもとることができず、生活苦の為、町から若者が出ていき衰退していく。



完全なる悪循環…… 


近々父様にお願いして、まずは採掘の町【ハティア】に秘密裏に視察しに行くつもりだ。


でもまずは、おいちゃんのところでおいしい魚の串焼きをいただいてからでも遅くないかな~。




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