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016:引っ越し完了

帰ってきました。ハティアの町 今日からは住民になるので、居住区の方に移動した。実はこの町、採掘した宝石類を運ぶために、トロッコの線路が町中に走っている。そのため、螺旋状(らせんじょう)に建物が立っているのだ。



その中で、他の民家から少し距離があり、鉱山にも近くて実験しても迷惑の掛からない場所…… 

さすがシン。見つけてくれました。優秀だね! 




初日から一週間は家の片づけと、近所へのあいさつ。シンはもともとこの町の出身者だからすんなり溶け込んでいたけれど、私は行く先々で声をかけられる。




それから、初めの頃この町に設置した霧発生装置 通称:【ミスト】が時間でちゃんと稼働しているのかの確認もしに行った。町の住人からは、はじめ苦情が来ていたらしいのだが、町長からの説明と、医者であるロロ先生の協力の元納得していただけたらしい。




そして実際に症状が軽くなったり、治まったりした人も出てきたことにより、半信半疑だった人たちからの納得も得られたらしい。




ただ、これもある意味解決ではなく、対処療法に過ぎない。早く治療法を探さなくては、ドロテアのお母さんが手遅れになってからでは遅い……





窓の外を眺めながら、ぼーっとしていると家から対面の崖のようになっている場所をヤギらしき生物が登っている…。




「シン、シン。あれ、あそこ登ってるの何?」


「何って、野生のコヤンじゃないか。」


「コヤンって、なに?」


「ヤンの仲間で、食用。角とか皮、内臓も全部活用できる食材。」



質問したら謎が深まったけど、まぁ、要するにヤギに近い食用の何かって事かな。




「コヤンってずっとここで生活してるの?」


「人間がここに住む前からいたらしいぞ。」


「あれの寝床とか、行動範囲とかわかる?」


「そう言う事なら、山じぃに聞けばすぐわかる。」


「シン、山じぃのところに行こう‼ 」



早速シンを伴って山じぃの家に向かった。


「山じぃ、今まで山に登ってコヤン見たことあるよね?」


「もちろん。あれらはこの辺りの山なら、どこにでもおるよ。ただ、見た目に反して凶暴だから、子ども達だけで近づいてはダメだよ。」


「うん、わかった。シンがいるから大丈夫‼ それでね、聞きたいことがあって、今まで見てきたコヤンで変に咳をするやつとか、弱っている個体って見たことなかった?」



少し考えるそぶりをした山じぃが、



「そういえば、ここ最近もやたらと足の遅いコヤンがいたね~。若いのだったと思うよ。なぜかそういうのは、こぞってモナリ山に向かう事が多いね~。」


「モナリザ?」


「違う、違う。モナリ山。ここからすぐ見える鉱山になっている山が、イメロデ山、その奥が今回移動した、モリーア山。そしてモリーア山のさらに奥にあるのが、モナリ山。」


「山じぃ、もし、私がその山々をすべて見て回りたいってお願いしたら、どのくらいかかるかな?」



シンが横で、嘘だろ… みたいな感じで天を仰いでいたけれどお構いなしだ。



「泊まりになるだろうね~。調査をするつもりなんだろう?1週間から10日はいるかもしれないね~。」


「わかった。出発は3日後。山じぃ、お願いしてもいい?」


「必要なものは、シンに聞きなさい。あと、1人ほど同行者がいた方がいいだろうね。」


「メリルさんに声かけてみる。」



さぁ、こうして楽しい10日間のサバイバル生活がスタートしようとしていた。








ところ変わって、ここはメラおばさんの宿屋さん。我が家の台所は狭くて、保存食づくりに向かなかったので厨房をお借りすることにした。



「とりあえず、大量にスープを作って、フリーズドライにするのが一つ。あと、ピタパン作って、ジップロックに…… あぁ~ビニールとか無いのか…? 風呂敷みたいな? 除菌滅菌殺菌しとくか‼ あとは……、」


「ウル、おまえ、なんか怖いぞ。食材は基本、現地調達。あとは、保存食くらいじゃないか。荷物はありすぎると邪魔になる。」



「カバンに軽量と亜空間設置、それから、時間経過 無効の陣を刻んどけばいいんじゃない?」


「おまえは、いい加減自分が規格外な事に気づけ‼ そんなぎゅうぎゅうに詰め込んだ魔法陣なんか、普通の人間なら発動はおろか、刻むことさえ無理なんだよ。」



あれ? ここで得点はもらってないはずなんだけど…? みんな馬鹿正直に詰めようとするから入らないんじゃない? 折りたたんだり、丸めたり、形状変えれば陣の中に入ると思うんだけど。

あとは、昭和のテレビみたいに叩けば点くよ。たぶん



そんなことを言うと、所詮(しょせん)、お前みたいなタイプは天才肌って言うんだよと言われた。

褒められてる気がしない。



「ウルちゃんはここで見てるから、さっさと必要なもの買いに行っといで。」


宿屋の肝っ玉母さんメルさんがシンをさっさと追い出しにかかった。悪ガキどもをいなしていた手腕は打伊達ではない。


「ウル、ここにいろよ。おばん、こいつの事よろしく。」



まだ信用は回復していないみたいだ。仕方ないよね。気長に行こう。



「ウルちゃんがよっぽど大事なんだね~、この間もね、起き抜けのまんま飛び出して行こうとしたものだから、首根っこ捕まえてそりゃ大変だったよ。」



そういってメラさんはカラカラ笑ったが、まさかそんな事になっていたとは、知らなかった私はすごく申し訳ない気持ちになった。



「預かり者ですからね。私 」


「それだけじゃないと思うよ。長年、あの子を見ているからわかる。あんたが大事なんだよ。」


少し心がほっこりした。





準備も済ませて、あとは明日を待つばかり。

明日に備えて早めに布団に入ったのだが、興奮して寝付けない…… 遠足前の子供みたい。でも、人生にわくわくがあるって大切だよね。



山が動くんだから、木も歩いてたりするのかな? 動物しゃべったりしないかな? 明日シンに聞いてみよう。楽しみだな~ そんなことを考えていたらいつの間にか眠りに落ちていた。


 

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