お母様の葛藤
こちら、舞台はアルマー村、双子のお母様が営む宿屋です・・・。
(ミサトとタマキは元気にしているかしら・・・?)
お母様、もう何十回となく、胸の内で同じ思いを繰り返します。
「ふぉふぉふぉ、ベーターや、寂しいのかね?」
「習慣になっているみたい・・・ここにいないとわかっていても、ついつい子供達のこと考えているわ」
ガウリアさんに問われ、思わず母心が顔を覗かせます。
去年の紅葉の頃だったかしら? ラシルさんが戻る前に猿王がやってきて、トゥルクの様子が分かったのは良かったのだけれど・・・。
お母様は、子供達のトゥルクに行きに反対したあの日を思い返します・・・。
・・・・・・・・・
「学校行く! 龍巫女姉様と一緒に勉強するの~!」
「ダメよ!タマキ、いい加減にしなさい!」
「嫌だ~! 絶対の絶対に、嫌~!」
タマキちゃん、今度ばかりはお母様のいうことを聞かず、自己主張します。
「ダメったら、ダメ!」
「嫌―!」
タマキちゃん、表に飛び出していきます・・・。
「もう、本当にあの子は!」
「ベーター様、お子様方のご意見も聞かれてはどうでしょう? 何故学びたいのか、とか・・・」
(貴方が、余計な話を持ってきたくせに!)
お母様は、職業訓練校の話を子供達に伝えた、猿王を睨みつけます・・・。
ガウリアさんは、我関せず、とお茶を飲みます。すると、玄関から声が聞こえます・・・。
「占いはいらんか~?」
「・・・?」
「くわっくわっ!」
聖仙様、スーリアさんを伴って登場です・・・。
「ベーターさんや、あんたが心配するのもわかる。じゃが、もう10歳になれば、親元を離れ暮らす子だっておる。いつまででも、自分の庇護下に置く訳にもいくまい?」
お母様、それは分かっていても、自分の感情がそれを許しません。
「どうして、皆、私の大事なものを取り上げようとするの!」
「・・・」
「ベーターさんや、子供達は、あんたがお腹を痛めて生み、大切に育ててきた自分の分身。何ものにも代え難い、かけがえのないものじゃ。じゃが、あなたの持ち物ではないぞ。」
「どうして、皆、そうやって私の邪魔ばかりするの!」
お母様、まだ納得できません。激しい感情が胸の内に渦巻きます・・・。
「自らを、犠牲にすればするほど、苦しいものじゃ・・・。子供達の為に、生きようとすればするほど、つらいものじゃ・・・」
ガウリアさんが、そっとつぶやきます・・・。
結局、最後はお母様が折れました。
(占い? 私が自分で引いたわよ。何が出たかは、ご想像におまかせだわ。あの、インチキ聖仙!)
子供達のトゥルク訓練校行について、占いで何が出たか? 前作「命を継ぐ者 (ラシル) の旅」73部、面接の章、最後をご覧ください。