12. 拠点を構えて
餓者髑髏の戦闘以来、二人は自分の弱さに気づき自らの弱さを克服する事に重点を置いていた。
依頼を遂行し魔物を倒し、そして自身を強くして行く行為を疎かにしていた事が弱さに繋がったと言える。
ルティは町や下水道など様々な依頼や単独行動により、様々なスキルが上がり、その経験値によって自らを強化していた。
カナデは遠征で得た経験値などを、上級職の転職に使っていた。
お互いが自分の出来る事を考えた結果と言える。
「ルティ様、これを..」
カナデに渡された指輪。
「この指輪は?」
先日の餓者髑髏のドロップ品です。
品名「変身リング」と表示されていた。
「へえ、変身リングか..」
ルティはカナデに指輪を返す。
この指輪はネットゲーム・セブンサーガ時代、変身リングともてはやされた逸品で、この指輪を使うと戦闘力が上がり噂になった指輪だった。
「カナデ、この指輪は君みたいな獣人変身が出来る指輪なんだ。確か一段階目が戦闘力強化だった筈だ」
手のひらに置かれた指輪を見つめ、ルティに視線を送るカナデ。
察した様にルティはカナデの手を引き、左手薬指に指輪をはめた。
「ルティ様..」
歳若い主人の大胆不適な行動に、カナデは驚きの表情をする。
自分の甘えから出た行動と、思いがけないルティ行動にカナデの目から涙があふれた。
あれからルティはミゼッタの町の南地区に家を借り住む事にした。
家は二階建てのこじんまりした建物だ。
「ルティ様、では行って参ります」
カナデは冒険者ギルドで仲間を募り冒険をする。
それで良いのかと言われれば何とも言えないが、これが二人にとって最善であると結論だった。
カナデは冒険者としての腕はピカイチで、以前以上の戦闘力を持ち合わせている。
その事を考えると一緒に行動するのは勿体ない。
それにルティもミゼッタの町では仕事が困らなかった。
下水道を巡回し商店街を歩き帰宅しても、別の用件を持った者たちが詰めかけていた。
「えーと何でしょうか?」
ルティの家の前で行ったり来たりする青年は、ルティの顔を見るなり土下座をした。
「妹の病を治して下さい」
何処で聞いたのか?
ルティの家には曰くを持った者たちが集まるように成っていた。
[回復の出来ないプリースト]の噂が広まっていた。
「僕は回復は出来ないんだよ。他のプリーストの所に行くといいよ..」
ルティは地面の膝をついている人に誤った。
しかしその青年は首を左右に振り語る。
「あなたのその力が必要なんです。どうか妹の病気を、お助け下さい」
毒・呪い・病気・恐怖・洗脳、どれを取っても死に続く病。
通常何千何百万ギルもの金を使い。
高位神官に直して頂く病気だが、そんな金を庶民は持ち合わせていない、そう彼らはスラム街の出身だった。
100%治る訳ではなく術者の力量な所がある。
ギルドの依頼でもなく。
何処の馬の骨とも分からない奴に頭を下げ、命を繋ぎ止め様と必死になる人々。
そんな者たちに心を打たれルティは、この場所に家を構えたと言う訳だった。




