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ふたりの天下人ー西播怪談実記草稿から紐解く播州戦国史ー  作者: 浅川立樹
第十五章・西播怪談実記草稿七【天文二十二年十二月二十五日(1554年1月28日)~】
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17・西播怪談実記草稿七4-3


「使者殿が下りられましたな。我らも戻りましょう」


 政宗らは尼子氏からの使者を出迎えるべく、本拠地室津室山へと踵を返す。


 冬の陽は想像以上に沈むのが早い。夕刻間際の寸でのところで尼子氏の使者三名は上陸に成功。その後二日に渡って室津に逗留し、浦上氏からの手厚い歓待を受けた。


 上陸して数日、使者らは今度は政宗の嫡男を連れ立ち再度安芸の田河原方面に出航していくのだが、結果としてこの数日のタイムロスが明暗を分けた。


 新年が明けて天文二十三年に入ると今度は天候が一変して海が荒れ始め、使者一行は備前国児島近辺で足止めを喰らう。


 その間の同年一月二十一日、先行して安芸国に戻っていた二形船が、備後国神島付近にて潮待ちのために停留していたところ、乗務員が不審な動きをみせた(かど)で小早川水軍の手の者によって拿捕。乗船していた水夫らが毛利方の尋問を受け、尼子氏と室津浦上氏の繋がりが露見する。


 そして毛利氏側は、尼子氏が室津の浦上氏だけでなく、陶・大内氏との和睦に向けた使者を送り合っているという情報を同時に掴む。


 得られた情報は直ぐに毛利氏当主・毛利隆元のもとに届けられるのだが、これは前当主・毛利元就に陶氏と断交を迫る隆元の一助になっただけでなく、浦上の人質を見逃せば尼子の主力は東に向かい、毛利軍にとって陶軍と尼子軍という二つの大きな勢力との二正面作戦を確実に回避する担保ともなった。


 荒れた海が凪いだ一月下旬、自分達が目こぼしされているとは露知らず、やっとの思いで備後国草津(福山市)に到着した浦上政宗の嫡男一行は、人質としてから陸路で出雲国へと入る。


 赤松氏、佐用七条氏、毛利氏、尼子氏、大内、陶、それぞれが大きな転換期を迎え、場に駒は出揃う。


 いよいよ運命の天文二十三年が、始まりを迎えて大きく唸り始めていた。


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