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むかしむかしの和風乙ゲー
「一族どころか家族いないから」
不敬罪の謝罪が欲しかったのであろうバカ様にそう答えるや否や先ほどまでの自信満々な顔が歪んだ。
一族がいないどころか家族がいない発言が理解出来ないと言った面持ちだった。
「とんだ甘ちゃんね。今のお殿様が崩御された時がこの国の終わりだわ」
「なっ、お前、何言ってるかわかってるのか?」
「この国を憂いてるだけ。バカ様は何も知らないのね?」
自棄っぱちである。
先ほどまで思い出していた家族は元より凛音はつい昨日の大火でこの世界に住む家族を亡くしたばかりだった。
そこへ現れた真が呆然とする自分を救い前世を思い出したのだ。
その夜は1人になってから涙が枯れたのでは?と思う程に泣き腫らした。
「・・・」
無言で冷えた視線になったバカ様に冷たい汗が背筋を通った。
それと同時に首に鋭い歯が寸止めで当てられている事に気付いた。
凛音は呟く。
「現れたか、難攻不落の砦」