1.リベルフィリア 4.5
その本を読んでいて一番悲しかったのは、願い事の王の成り立ちを知ったときだった。
それはとても不幸で孤独な王冠なので、
先代の王は自分に連なる子供を見付けて、嬉々としてその役目を押し付けたのだ。
崩御した王の代わりになった子供は、
子供染みたたわいもない願い事と引き換えに、その先に叶うかもしれなかった全ての願い事を失った。
(あなたが孤独でなくなるには、どうしたらいいんだろう?)
それを読んだ後、暫く考えてみたけれど未だに解答は見付からない。
(ねぇ、クリスマスの王様。あなたの願い事が叶えば、私の願い事も叶うんだよ。
私達の願い事は捩れて固まった毛糸玉みたいなんだもの)
“何者でもない君よ、どうか側にいてくれないか”
書の国に持ち込まれたユジィの本には、そう始まる対になる一冊の短編の本がある。
それは、物語を剥ぎ取られたユジィから溢れたクリスマスの王様自身の物語で、
見知らぬ小さな子供に手を差し出して救いを求めた、悪しき神隠しの王の物語。
(その子供は、クリスマスの王様の願いに応えて、本来の自分が属する家を失った)
人外者にかどわかされた者は、殆どの場合帰り道を奪われてしまう。
この物語に限りそれでもその子供が幸福だったのは、
彼女が元々はとても不幸せな子供だったからだ。
(だから、クリスマスの王様の願い事は、私自身の願い事でもあった)
ひとりぼっちの王座で眠っていた王が、初めて手に入れた自分だけの家族。
不器用な思い出も多いけど、幸せな思い出は更に有り余る。
(もう一度会いたかった…………)
だからきっと、あなたのいる世界の土をもう一度踏んでみせると願ったのだけど。