★NO.dodici――成長した クッチョロッティ
「へえ! 逢瀬って響きがいいわ! 俺もやってみっかな! grande figonaと逢瀬!」
「ダメ! 僕たちが許さないよ!」
「ふうん? ンじゃ、秘密でしちゃお」
「相手は誰!? 殺す! 抹殺!」
「もう……、キミたちは」
三人の会話に苦笑する。本気な口調だから強くつっこめない。
(兄さん大神さん、二人の子供はこんな感じで元気に育ってます。いま十七歳で名前はイチゴにブドウ、ヴーくんが名づけ親だよ。二人が命懸けで未来へ繋いだ命は、彼の元でキラキラ輝いてる。これからもずっと、見守っていてね)
そう心中で亡き二人に語りかけると、風が吹き草花が空高く舞った。まるで二人が喜んでいるようだ。
「おーいロトさんや、ちょっくら隠れんぼしよーぜ! 負けたら夕飯はお前のおごりな!」
「総大将が負けたら『逢瀬』の相手教えてよね!」
「じゃあ俺はそうだな、三人が負けたら今度アルカディアへ遊びに来てもらう!」
ここからまた新しい物語は始まる。可能性は無限大だ、踏み出す一歩に迷いはない。
「鬼は俺がやるよ!」
「オッケーロト、こりゃお手並み拝見だな」
「ミイラ男に見つかる僕たちじゃないよ」
「俺も舐められたモノだね。絶対、三人をアルカディアに招待してやる!」
俺の宣言に三人は顔を見合わせて笑い、凄まじい速さで一斉に散らばった。遠くなる三人の背中は希望で満ち溢れている。
「……護ろう、紡ごう、俺の未来」
狼族と血族、変えられない軋轢はない。一人は唯一無二の友達、二人は血の繋がる甥、失いたくない宝だ。
「頑張るね、兄さん」
俺は独りごち、青空を見上げたのだった。隠れんぼの結果は――言うまでもない。




