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第四十九話/決戦前夜①

 幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。

 しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……


 彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――

 今、試練の扉が開かれる。


【登場人物】

中間爽哉なかまそうや  イケメン高校生→ブサメン高校生

藤川千絵ふじかわちえ  爽哉の幼馴染

木崎優子きざきゆうこ  第三十六代生徒会長。図書委員

小澤詩織おざわしおり  攻守両立のコミュニケーションお化け

本八幡香奈もとやわたかな 大手健康器具メーカーの社長令嬢

宮永遥みやながはるか   陸上部。インターハイ優勝候補

皆川結衣みながわゆい  第三十七代生徒会長

本条鈴音ほんじょうすずね  第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在

中間涼香なかまりょうか  爽哉の妹

内藤亮介ないとうりょうすけ  爽哉の親友

大里拓馬おおさとたくま  ブサメン高校生→イケメン高校生


 八月上旬に催されたインターハイの結果は、七位入賞だった。

 遥はとても悔しがったが、どこか吹っ切れたような表情が印象的だった。大会の会場では遥の母に再会して大変だった。そんな余談はいいだろう。ともかく、遥とは今も早朝の参拝を続けている。




 夏休みに入ってからも、生徒会の活動に休みはない。毎週水曜日に会議があり、作業の進捗を擦り合わせ、翌週の会議までの課題が割り振られる。以前の記憶の通りであれば、いま頃は校則緩和の調整作業で忙殺されていた。しかし、その懸念がなくなった生徒会は、秋の文化祭へ注力している。副会長である森崎かなみの提案で、これまで学内限定行事だった文化祭を学外へ開放して開催する準備を進めていた。オープンスクールを兼ねる事で、入学希望者数の増加を目論もくろんでいる。


 緊張感の漂う生徒会室で、会議は続いていた。


「……では、協賛企業への連絡が遅れているんですね。かなり重要なポイントです。急いでください。高木先輩、来週の会議までには完了できますね?」


 結衣は会計の高木に発破を掛けていた。高木は蛇に睨まれた蛙のように背筋を伸ばして、できます! と答えた。これでは、どちらが先輩かわからない。


「続いて、講堂の使用スケジュールですが……」


 結衣の進行は鮮やかだった。当初、意見がぶつかり対立することの多かった結衣だが、今では入学希望者数の増加という一致した目標へ向かって共闘している。敵に回すと恐ろしいが、味方にしておけばこれほど頼りになる存在はない。


 思い返すと、今見ている結衣は、以前の記憶で考えると俺たちが三年生に進級し、生徒会長に任命されたばかりの結衣と合致する。冷徹で、なにものにも付け入る隙を与えない雰囲気を漂わせている。


 俺は記憶を辿るままに、思い出の中へ没入していった。

 秋になってようやく発効した新校則により、校内の雰囲気が変わった。それを風紀の乱れだと断じ、対策の徹底を公約に掲げた結衣は生徒会長選挙で当選した。有無を言わせぬ正論スピーチに大衆が迎合したというのが正しいかもしれない。俺たちは弾劾されたかのような心持ちで生徒会の任を明け渡したのだった。しかし、生徒会長に就任した結衣は、すぐに現実を目の当たりにすることになる。俺が結衣に見せた持ち出し禁止の資料、入学希望者数の推移と、入学説明会へ来た学生へのアンケート結果の存在を、ようやくこの段階で知ることになる。生徒会は、新校則を却下することもできず、改定することもできず、八方塞がりの状態に陥った。まさに前門の虎、後門の狼とはこのことだった。

 更に、学校運営に関わる諸問題が結衣を立て続けに襲う。俺と優子は大学入試対策の合間を縫って、生徒会運営を手伝うことにした。結衣と打ち解けられたのは、やっと三年生の夏休みに入ってからだったと記憶している。その頃になって、優子が己の理想像だという事に結衣が気づいたのだった。ようやく歩調を合わせたものの、時すでに遅し。


 結局、その年度の受験志望者数を基に、翌年二月には学校規模の縮減が決定されてしまうのである……。


お読みいただき、ありがとうございます。

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