SIDE:獣人界編 魔族の胎動
とある巨大国家の城の中・・・・・何やらキナ臭い会話が聞こえてきた。
「忌々しいクロフォード王国をいつになったら打ち倒せるのだ!」
「王よ!今暫くお待ちくだされ・・・・。」
「ライゼンよ! あ主の言いたい事は分かっておる! 兵力を蓄え、戦力を増強するのだろうが、10年ぞ!毎年開催されるサミットでクロフォードの顔を見る度に・・・・・偉そうな物言いに腸が煮えくり返る思いだ!」
ライゼンと呼ばれた高齢の髭を生やした大臣が冷や汗をかいて王を宥めていた。
「水面下にて、徐々に戦力が増えておりますゆえ3年・・・・否、2年後には、準備が整うと考えております。 他国に戦力を増強している事を知られる訳にもいきますまいて・・・・・そうなれば、戦争を起こそうとしている事が他国に知られてしまいますぞ!」
「フン! そんな事は分かっておるわ! クッ! 忌々しい! 何か良い手はないのか? アズールよ!軍事参謀でもある国家上級魔術師の長としてのお主の意見・・・・・以前、申していた件は、どうなったのだ!」
アズールと呼ばれた魔術師だが、老人ではなく逆に年の若い子供の様な印象を受ける。
「はい。エキセンブルグ王よ! 例の計画は、今月中には、実現可能な段階へと至るでしょう♪ 数年前から始めた、低級悪魔。レッサーデーモンの召喚・・・・・こちらは問題ありません。 さらに中級悪のグレーターデーモンの召喚もコントロールする事に成功いたしました。」
ほくそ笑むがマントで口元を隠した事で誰からも見られることはなかった。
王の周りにいる臣下達からドヨメキが沸き起こった。
「本当か! それは、僥倖! だが、本当に悪魔を制御可能なのか? 低級悪魔であるレッサーデーモンでさえA級以上!レベル次第でS級になる者もいると言うし、中級悪魔のグレーターデーモンに至ってはS級以上・・・・否、古い悪魔であればXクラス以上と聞いているぞ?」
「王よ! 流石にグレーターデーモンクラスの召喚は簡単では、ありませぬ! せいぜい数体召喚できれば良い方でしょう・・・・・。僅か数体であれば何の問題がありましょうか?」
立派な甲冑に身を包んだ壮齢の騎士が話に割って入った。
「ふむ・・・・・少ないな。 余は悪魔の軍団でも作るのかと思っておったのだが、それでは、大した戦力になりそうもないな・・・・・期待していた余が愚かという事か・・・・・。」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ 滅相もありません王よ! 私の話には続きがありますが、続けても宜しいでしょうか?」
「構わん! 続けよ!」
「感謝いたします! 今お話に合ったグレーターデーモンですが、召喚後の完全制御に成功したのは2ヵ月前の事! 現在は・・・・・アークデーモンの召喚を試みている最中です」
先程よりも戸惑いを含んだどよめきが広がって行く。
「アズールよ! 貴様!気は確かか? グレーターデーモンでさえ十分危険な存在なのだぞ! まして、アークデーモンとは・・・・万が一野放しにしてしまえば国家が滅ぶことになる存在だぞ!」
「カスケード将軍!ご安心ください♪ 軍の総大将である貴方にご迷惑はかけません。」
「何が迷惑を掛けないだ! その召喚が何を意味しているか分かっているのか! アークデーモンとなれば、国家存亡の危機に当たる神クラスの悪魔だぞ! 我々人間には制御できるとは思えん!」
周りがザワザワと騒ぎ始めた。2人のやり取りを聞いた臣下達から非難が飛び始めた。
「ヒャッヒャッヒャッ♪ ですので、悪魔を制御する魔道具の開発に成功したと言いたいのですよ♪」
「アークデーモンを制御する魔道具だと?」
「制御できるものなのか?」
「神クラスの悪魔を従えたとなれば・・・・凄い事になるぞ!」
先程までの避難から賞賛へと変わりつつあった。
「アズールよ!それは本当か!」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ 王よ!私が嘘などついて何の得になるというのです? 現在、地下の研究施設で、アークデーモンの召喚に成功し、既にコントロールに成功しています♪ 良ければ視察に来られますかな?」
「なんと・・・それは、誠か! あの伝説のアークデーモンを召喚しただけではなく制御に成功したと申すのか!」
「王よ! それは、いささか危険ではありますまいか? 先ずは、我々が見に行き安全を確認してからご報告いたしますので、暫しお待ちいただけないでしょうか?」
「フン! 心配が過ぎるな・・・・・カスケードよ! しかし、お主の顔を立てるとしよう。では、急いで事の真偽を調て参れ! 結果いかんによっては、直ちにクロフォードに乗り込んでくれるわ!」
そして、カスケード将軍一行は国家上級魔術師の長アズールと共に城の右にある研究棟に辿り着くと地下30mにある研究施設へと螺旋階段を降りて行くのだった。
「相変わらず陰湿な場所だな・・・・・地下ではなく地上で行えないものなのか?」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ カスケード将軍!そうは申しましても事が事ですので、万が一を考えるのであればこそですな♪」
「フム・・・・・」
アズールを蔑むかのように視線を向けると渋々頷くのであった。
「では、皆さん♪ 驚くと思いますので・・・・・お気を確かにお持ちくださいよ♪」
そう言うと頑丈そうな鋼鉄の扉に掛かっている頑丈そうな金属で出来たカギにアズールが魔力を込めるとガチャンっと横にスライドし開錠したのだった。
「ようこそ皆さま♪ 我が研究施設へ! 人間で見るのは貴方方が初めてですので、光栄に思って下さいね♪」
眼前には、空中に佇むように浮かんでいる異形の姿であった。
ゴクリっと固唾を飲む。
ここには、大臣を始めとした部隊長クラス以上の選ばられた者30名のみが、いたのだが眼前の只事ならない物体に息を飲むばかりであった。
「こ・・・・・これが、伝説の・・・・・・アークデーモンか!」
「なんと・・・・禍々しい姿・・・・・さすが、上位魔将と呼ばれるだけの存在・・・・・だ。」
「デカいな・・・・・身の丈4m以上は、ありそうだな。」
「ヒィィィ~! 目が開いたぞ! アズール殿! 本当に大丈夫なのであろうな!」
「某は初めて悪魔を見ましたが・・・薄っすらですが、奥が透けている様に見えるのだが? 気のせいなのか?」
「内在する魔力の底がしれんな・・・・・。」
「見ているだけで、これだけの存在感とは・・・・・こんな恐ろしい生き物が存在するとは・・・・」
始めてみた伝説のアークデーモンを見た軍部の中枢を担う彼らは、暫くの間思い思いの事を口遊むのであった。
「ヒャッヒャッヒャッ♪ 皆さま・・・・・少しは落ち着きなされ♪ そんなに一遍に話されては応える事も出来まいて・・・・・まず、分かる範囲で、ご紹介すると致しますよ♪ こちらは、上位魔将アークデーモン様で、身の丈422㎝ このお姿が、真の姿であり当然人型へと変身が出来ます。 その強さは、人族で言うところのG+ランク以上の上級悪魔にして魔界の貴族と言われる存在ですな♪ 分かり易く申しますれば・・・・・一体で、人間の国など亡ぼせる存在という事ですな♪」
ゴクリ・・・・・目を見開いて全員が驚愕の表情を浮かべていた中
「アズールよ! お主は本当にこの悪魔を飼いならす事が出来ると申すのか! これは、我々人間が呼び出して良い存在で話ないぞ! 王を止まらせておいて良かった。 いかに優れた魔道具であっても不可能だ! 王には悪いが、この計画を認める訳にはイカンな!」
声を荒げて反対したのはカスケード将軍であった。
「ヒャッヒャッヒャッ♪ そうなのですか? それは、残念ですな。 それにしても・・・・・言葉にはお気を付けくだされ・・・・・飼いならすなど出来るわけありませんな! だそうですよ? 申し訳ありませんね~♪」
すると空中に浮かんでいるアークデーモンの目が怪しく輝いた。
「ヒィィィ~! さっきも言ったが、この悪魔、目を開いていて大丈夫なのであろうな? 意識はあるのか?」
「あぁ・・・・そうでしたね♪ 先程のご質問にまだいくつかお答えしておりませんでしたな♪ 当然、意識はありますし我々の会話の全てが聞こえておりますよ♪ それと、身体が透けて見えるのは、別次元の存在である魔族は、膨大な質量によって人間にも見る事が出来ますが、本来は、見る事が出来ません。 レッサーデーモンのような下級魔族であれば、これ程ハッキリと存在を意識できませんな♪」
「話が聞こえているのか・・・・・大丈夫なのであろうな! 本当にコントロール下にあるのであろうな!」
「はて? 大丈夫とは? これは異な事を仰いますな♪ 先程カスケード将軍がご自分で、言っていた事ではなかったのですか?」
「そう言う意味だ・・・・・何が言いたい? それに・・・・・奥にある魔法陣にも・・・・・。」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ その前にご質問が、まだ残っておりますので、説明を先にさせて頂きますぞ。 所謂、精神生命体である魔族がこの世界に顕現し続ける為には、依り代となる肉体を用意せねばなりません。
「貴様! この悪魔に生きた人間を与えると申しているのか?気は確かか! この状態であっても、これ程迄の圧倒的な力なのだぞ! そんな事をすれば、どうなるか分からんとは言わせんぞ!」
「ふ~む・・・・・カスケード将軍は、アークデーモン様を顕現させる事には反対の様ですな・・・・・」
「当然だ!・・・・・様? ハッ! きさま・・・さっきもこの悪魔に様を付けていたな・・・・・・それに、ここに来た時、最初に何と言っていた?」
「ヒャッヒャッヒャッ♪人間で見るのは貴方方が初めてですので、光栄に思って下さいね♪ と申しただけですが?それが何かおかしいのですかな?」
「だったら・・・・貴様は何だというのだ! 人間で見たのは、貴様が初めてだったはず!だとしたら貴様は何だと言うのだ! 貴様・・・・・何者だ!」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ いやですね~♪ 何者とは、どう言う意味ですか?」
「貴様!話し方が・・・・・・何者だ! 正体を現せ!」
カスケードが抜刀しアズールに切りかかった。
「おっと危ない! いきなり切りかかって来るとは、本当に礼儀知らずな生き物ですね♪」
カスケードの剣先をヒラッと飛んで躱すと切り裂かれたマントの下から道化師の服装を纏った何者かの姿が現れたのだった。
「貴様!アズールでは、ないな!」
「はて?何の事ですかな?」
「馬鹿にしおって! これで、ハッキリしたな! お前の話は全て嘘だったっという事だな!」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ 嘘とは失敬な♪ 私は嘘などついていませんよ♪」
「会議室やここで言った事を忘れたとは言わせんぞ!」
「ほぉ~♪ では、思い出しますから少々お待ちくださいね♪ 会議室では、中級悪魔迄完全に掌握したと伝えて、アークデーモン様の召喚を試みていると伝え~悪魔を制御する魔道具の開発に成功したと言いたいだけとハッキリ伝えましたしし~♪皆さんが勝手にアークデーモン様を制御すると言い出しましたが、私は一言も言ってませんよ?
コントロールに成功したとは言いましたが、アークデーモン様の事ではなくて貴方達人間の事ですからね♪」
「なっ!」
「ねぇ~♪ 私は嘘などついていませんでしたでしょう?」
「戯言をお前達何をしておる! こ奴は敵だ! 殺して構わん! 決して逃がすな!」
「「「「「ハッ!」」」」」
研究施設の中が殺気に満ち溢れた時、アークデーモンの下に描いてあった魔法陣から紫色の光が放たれた。
「なんだ! この光は・・・・・・グッ! 纏わりついて離れん!」
「お前達、急いで、この事を王に伝えに行くのだ! 急げ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
統一された騎士の服装に身を纏った軍団長達が扉を開けようとした時
「ヒャッヒャッヒャッ♪ ・・・・・私が、魔力で施錠したのを貴方達も見ていたでしょうに、本当に人間とは愚かな下等種族なのですね♪ でも・・・・・嫉妬、憎悪、嫌悪、怠惰、慢心、欺瞞、裏切・・・・・愚かだからこそ御しがたい・・・・ヒャッヒャッヒャッ♪ 本当に我々悪魔の媒介となれる事に感謝して貰いたいですよ♪」
「アズール! 貴様!」
剣を振りかざすと彼等にも紫色の光が襲い始めたのだった。
「グッ! 何なのだ! この光は・・・・・これは、魔力か?」
「えぇ~い お前達! 大臣である私を逃がすのだ!何としても奴らを殺せ!」
「ワシを守るのじゃ! 何をしておる!早くせんか!」
最初は、エキセンブルグの王への報告するために使命で逃げ出そうとしていた者も恐怖から我先に逃げ出さんと醜い言い争いが起こったのだった。
やがて、その感情を飲みこむように紫色の魔力が全員を覆うとダラ~ンっと力なく項垂れ始めたのだった。
「ヒャッヒャッヒャッ♪ 相変わらず醜いですね♪ 如何です♪ 上位魔将デスピア様 久しぶりの人間共の絶望と恐怖の味は?」
後ろにいるアークデーモンに声を掛けると魔法陣に浮かんでいた悪魔が動き出したのだった。
「グフフフ♪ グバァバァバァバァ~♪ お前は、本当に悪戯好きだな!ピカロよ! が、良くやった! 中々美味なエネルギーだ!」
「ヒャッヒャッヒャッ♪有難うございます。 さて、こ奴らの洗脳は・・・・・どやら終了したようですね♪」
カスケードを始めとした30名ほどの上層部達が、アークデーモン【デスピア】と名乗る悪魔の前に片膝をついて次々と忠誠を示していたのだった。
「そうそう♪ カスケードさん? さっき、貴方に言われた質問に答えていませんでしたね♪ 何者かと言われれば私も悪魔って・・・・・もう意味がありませんね♪」
「グフフフ♪ 相変わらず口だけは達者な奴だ!」
「それにしても・・・・・相変わらずの鮮やかなお手前♪ 感服いたしました!」
「ふん!世辞はいらん! それにしても・・・・・この程度のレベルで、この国の上層部だと言うのか? 私の依り代となる肉体としては、正直物足りんな・・・・。」
不満な顔を隠すことなくピカロと言われた悪魔にそう告げた。
「そうなんですよね~♪ でも、ご安心を♪ 鬼人族の肉体も用意しておりますので、ご安心くださいね♪」
「ふん! 幾分そっちの方がましな様だな。 で、この後はどうするのだ?」
「ここに鬼人族の肉体を用意しておりますので、デスピア様は、そちらを使って顕現化を行っていて頂けますか? 私は、こ奴らと一緒にエキセンブルグの王を連れて戻ってきますので♪」
「良かろう! それで、王も洗脳するのだな?」
「その通りでございます♪ その後は、王令にて軍の大半も洗脳して頂こうと考えておりました。」
「フム! それは、どれ位の数がいるのだ?」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ この国は10年以上前から戦争の準備の為に軍を拡大していましたので、25万近くの兵が揃っておりますね♪」
「25万だと?」
「さすがに、全員では、ありませんが、それでも数万名の洗脳が必要となりますね♪」
「クッ! 簡単に言いおって! 流石の私でも、それだけの数となると時間がかかるぞ。」
「ご安心ください。 デスピア様ともう一柱及びしておりますので♪」
デスピアが奥の魔法陣に目を向けると目を見開いた。
「まさか・・・・・四大魔将を復活させているのか?」
「流石は、デスピア様♪ それと、3体のグレーターデーモンを召喚しましたので、洗脳にかかる時間は2ヵ月と言ったところでしょうか?」
「グフフフ♪ それ程の相手がいるのか? このエリアの司令官は誰が担当しているのだ?」
「はい。ミラージュ様で、ございます。」
「ほぉ~! あのミラージュが、それ程認めた奴がいると・・・・・グフフフ♪ グバァバァバァバァ♪ ならば、我慢して洗脳してやる。」
目が細め不気味に口角を上げていた。
「ミラージュ様は、この国の人間共は100万程、存在するので、神々の遺産を手に入れ次第、各地で戦争を引き起こし全世界に恐怖を広めると申しておりました。」
「フム。なるほどな! それだけいれば、それなりの魔族も新たに生まれると言うものよ!」
「左様でございます。 そして、魔王様復活に向けこの惑星の人間に絶望と恐怖を!」
そして、ピカロは、配下となったカスケード将軍達を連れ王の間に戻ったのだった。
「どうだった? カスケードよ!」
「ハッ! アズール殿の申したように伝説のアークデーモン様は問題ありませんでした。」
「フム・・・・・其方・・・・・何故アークデーモンに様などつけておるのだ?」
「それは、これから我が国の為に尽力を尽くして頂くのですから悪魔であっても礼儀ではないのでしょうか?」
「ホッホッホ♪ 礼儀とな♪ なるほどのぉ~ 流石は、カスケードよ! 面白い事を言いよるわ! して、そのアークデーモンは、何と言う名前なのだ? それとも悪魔だから名前などないのか?」
「エキセンブルグ王よ! 彼のアークデーモン様にはデスピア様と言う素晴らしい名前がありますから今後は、お名前で呼ばれる方が宜しいかと思われますぞ」
口を開いたのは、大臣のライゼンであった。
「ホッホッホ♪ 大臣であるライゼンまでもが、様付けとはな♪ アークデーモンとは、それ程の存在であるか! 面白い! 余もさらに興味が湧いて来たぞ! アズール! カスケードよ! 余をアークデーモン・・・・・否、デスピア殿の場所へと案内せよ!」
エキセンブルグ王は、喜色満面の笑みを浮かべて興奮を隠さなかった。
「でかしたぞ!アズールよ! これで、忌々しいクロフォード王国を打ち倒せるのだな?」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ 王様! 何を小さな話をしておられるのですかな? 上位魔将様がいれば、クロフォード王国だけではなく全世界の王となる事も可能ですぞ♪」
「なんと! 全世界の王になれると! 其方は、そう申すのか!それ程の存在であるか? どうだ?カスケードよ! お主はどう見ておるのだ?」
「アズール殿の言われた通りでございますな! デスピア様他、魔族の力があれば、この世界の覇者になる事も夢ではありますまい!」
「それ程か! ホッホッホ♪ 誠であればアズールよ! お主には国家功労賞及び武勲授与式にて最高のエキセンブルグ褒章を授与せねばならぬな♪ ホッホッホ♪」
「ありがたき幸せ! このアズール! 国家上級魔術師長として身命を賭してこのエキセンブルグの為に力を注ぎたく存じますぞ♪」
「ホッホッホ♪ ウム信頼しておるぞ!」
これが、エキセンブルグ王の最後の笑いとなったのであった。
王直属の近衛兵他、国の重鎮たちを連れ研究施設の中に入った数分後には、目から光を失った者達が出てきたのだった。
「ピカロよ!取り敢えずはこれで、ひと段落で良いのか?」
「左様ですね♪ デスピア様♪ それにしても・・・・・・さすが、下等種族ですね♪ ちょろいもんです♪」
「グフフフ♪ 当然だな! 所詮、不完全な生き物と言う事だな!」
「ですね♪ アッ!・・・・・・」
「なんだ? どうしたのだ?」
「あぁ~思い出しましたよ♪ 私一つだけ嘘を付いてしまいましたねぇ~♪ カスケード将軍に“ご安心ください♪ 軍の総大将である貴方にご迷惑はかけません”と伝えましたが、迷惑を掛けてしまいましたかね~♪ これは、これは、私とした事が、大変失礼いたしました。ヒャッヒャッヒャッ♪」
「ハッ♪そんな事か? どっちでもかまわんだろう? それに今は迷惑どころか喜んでいるぞ・・・・」
「ヒャッヒャッヒャッ♪ それも、そうですね♪」
「人間に嘘つき呼ばわりされたのが、そんなに気になるのか? 私には分からん心境だな・・・・。」
「アッ! もう一つ嘘がありました! 私の名前はアズールではないのでした!私の名はピカロと申します。 ヒャッヒャッヒャッ♪ これでは、カスケード将軍に嘘つき呼ばわりされても仕方がなかったですね~♪」
「ふっ! お前の性格の悪さは私も勝てんな・・・・・。」
こうして、巨大国家エキセンブルグは悪魔の手の中に落ちたのだった。
◆◆◆◆◆
そして、テンペストの民が全員修行を行っていた時の事・・・・・・
≪マスター! ここから北西450㎞程の場所より巨大な魔量の放出を確認しました。≫
「魔力の放出だと? どう言う事だ?」
≪実在する生き物では、なさそうですね・・・・・恐らくは、魔族だと思われます。≫
「ふぅ~ やっぱりミラージュが生きていそうだな?」
≪間違いなく生きておりますね。 しかもミラージュが飛んでいった方向でもありますので・・・・・≫
「あぁ~そうなんだ? それよりも! 調べた方が良さそうだな・・・・・何か良い方法はあるか?」
シンの脳内に映し出されたシリウスが目をキラキラさせて嬉しそうに頷いていた。
≪ございます! 使役魔法と感覚共有魔法を推奨いたします。≫
食い気味に話しかけたシリウスの勢いにシンが飲まれていた。
「おぉ・・・そうか・・・・だったら、お前に任せるよシリウス♪」
≪畏まりました♪ ウフフフ♪ これは、面白くなってきましたね~マスター♪≫
「あぁ、そうだな♪」
それからハッスルしたシリウスの魔法で、テンペストの住人が凄まじいレベルアップをした事は言うまでもない事だな・・・・・。




