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第70話 第三章【戦争編】5



スッカリ様変わりした獣王国の体制が大きく変わり始めた事で、ここ数日メロは世話しなく動いていた。

シンにも今後の戦について様々な予想を告げられていた事も相まっててんてこ舞いの状態であった。

そんなある日、鬼人族の動向を調べている偵察部隊から緊急連絡が入ったのであった。



「場外に出ているシン君に急いで、報告しなさい! 民衆への指示は全幹部が集合してからにしなさい!」

メロが慌てて司令部の獣人達へ指示を飛ばした。

「シン様! 各部隊から報告が入りましたので、中央区にお戻りください。繰り返します・・・・・・」



そのアナウンスを建造物の責任者を任せているコングと共に聞いたシンは・・・・・

「やれやれ・・・思っていた以上に遅かったな・・・・・。俺は城に戻る! 非戦闘員たちに避難指示を出せ! 急がせる必要は無いから落ち着いてシェルターへ移動させろ!」



コングは、戦闘力だけで言えば、ランクA+なのだが、戦闘員としても素晴らしいが、物を作らせる事に長けていたので、俺の命令で一線を退いていたのだった。

「ハッ! シン様!ご武運を!」

「ハッハッハ♪ 今の俺達ならば鬼人族だけなら敵じゃないな・・・・・鬼人族だけならな・・・・。」



「それは?どう言う事なのですか?」

「まぁ~良い避難誘導を頼むぞ!」

そして、メロ、マロン、ティーグルの待つ作戦会議室に向かったのだった。



俺が到着すると既に全員が集まっていた。

「こちら北北東偵察のカーネより報告! 現在、ヘンティル高原を鬼人族が南下を開始しました!」

偵察部隊には第3軍h団の中隊長を中心に各3名で当たらせていた。

それぞれのチームには敵から10㎞以上は離れて監視するように指示を出していた。



鬼人族の居城ガンダーラは、俺達のいる獣王国テンペストから北にある100㎞程離れた所にあるヘンティル高原の先だ。

ヘンティル高原は40000平方キロもある大高原だが、鬼人族の国はさらに300㎞程、北上した場所にあった。

なので、テンペストから見て右の北北東にカーネ、同じく北東にガット、北北西にボルペ、北西にルポを配置させていた。



「朝一には動きがあると思ったんだけど・・・・・・思ったよりも遅かったな・・・・・。」

「えっ? 何て言ったの? ごめんね周りが五月蠅いから聞こえなかった。」

「う~ん・・・・・どうしようかな~って思ってね・・・・。」

「何が?」



「鬼人族の奴らへの奇襲攻撃をどの部隊に当たらせようかな~って思ってただけだよ♪」

「ふ~ん・・・それで、どうするつもりなの?」

その時、別の偵察部隊から報告が入った。



「北東偵察のガットから報告! 鬼人族の中にリザードマンの姿を複数確認! さらに魔物の存在を確認!」

「こちら、北北西偵察のボルペ! 敵の総数が、予想より増大している模様! その数・・・・・凡そ10万!」



「10万だと・・・・?」

「リザードマンの姿があるだと?」

「それに、魔物もいるのか?」

「どう言う事なんでしょうか?」



「旋回の鬼人族との戦争の5倍の戦力・・・だと?」

「エーニス殿!ご心配なさるな! 我々は以前よりはるかに強くなった! 鬼人族の奴らなど蹴散らしてやりましょうぞ!」

「そうだな・・・・が、流石に10万の大軍は骨が折れるな・・・。」



騒然とする軍団長の言葉を無視して俺は指示を出した。

「よし!ここは、迎撃に当たらないと次の展開に進まないな! だったら!第2部隊から第5部隊より1000名ずつ今すぐ集めろ!」

「「「「ハッ!畏まりました!」」」」



そして、テンペストの軍事施設前に5人の精鋭と後続となる1万人が1分後には集まったのだった。

「諸君らが集められたという事は、鬼人族の奴らが攻め込んで来たという事だ!」

俺の言葉を聞いている戦士の表情には、一切の驚きもなく、むしろ待っていたとばかりに意志の籠った目に力が宿っていた。



「フム。 この話を聞いても微動だにしないか・・・・フッフッフ♪ 流石は、今日まで訓練を続けてきただけの事はあるな! これより! お前達5000人の部隊で、鬼人族10万の混成軍との戦争に向かってもらう!」

今度は、20倍の規模に多少の驚きがあったようだが、俺はそのまま言葉を続けた。



「と、言っても流石に20倍は、厳しいだろう! よって、今からお前達全員に魔法による強化を施す!」

この言葉には全員が驚いたようだった。

「シン様! それは、身体強化の様な物でしょうか?」

プロフェットが目を見開きながら俺に質問してきた。



「フム! 皆が驚くのも無理はないが、今から2倍の身体強化を付与する! これは魔法なので、通常の体力のまま攻撃力、防御力、速度など全ての身体強化を行える。 なので、この状態からの身体強化の発動はいつも通り可能だ!」

「「「「「おぉぉぉ~!!」」」」」



「シン様!という事は、いつも通り2倍の身体強化を使うと既に4倍になっているという事で宜しいのでしょうか?」

「そうだ! なので、自分の能力を超えた力に振り回される恐れがある! よって、思考加速5倍も付与する! 戦争でのプレッシャーは、通常の力を発揮出来ない。 常時の半分程度の能力だと思え!

なので、この魔法は、通常の思考力を5倍にする事で、判断力、動体視力など、瞬間的な思考力に余裕が出来る! 従来のパフォーマンスを最大限に発揮できるはずだ!」



「シン様! それは、例えば時速100㎞を20㎞にしか見えなくなると・・・・・通常の5倍の速度で情報を処理できるという事なのでしょうか?」

「そうだ!」

「「「「「おぉぉぉ~!! 流石は、シン様~!!!」」」」」

これには、軍部の幹部たちも呆れ顔だった。



「そして、広範囲に渡って戦闘を繰り広げると指示が伝わらなくなるから各中隊長には念話も付与する!」

「シン様!念話・・・とは?」

“念話とは今、お前達に話しかけている能力だ!”

「分かったか?」

全員が頭をコクコクと頷いている。



「シリウス!頼むぞ!」

≪畏まりました♪ 範囲固定! エリア内対象者確認! 全対象者魔力回路接続! 対象者能力確認! 身体強化及び思考加速発動可能です!≫

相変わらず有能秘書だな・・・・・。



「時間もないから!早速魔法を使うぞ! オールアップ!(全員身体強化+思考加速)」

軍事施設の演習場内に巨大な魔法陣が浮かび上がると青白い光が全員を包み始めた。

各々が今まで味わった事のない身体の状態を確認しているようだった。



ヘンティル高原に向かえ!30分以内に鬼人族の足を止めろ! それと!暫くは広範囲に広がってド派手に暴れるように! 最後にあくまでも足止めである事を忘れるな! 引きながら戦い演習場まで後退する事!良いな!」

「「「「ハッ!」」」」

「では、出撃!」



それから30分が過ぎた時、テンペスト軍4000が戦闘に入ったと偵察部隊から報告が入った。

俺が指示した通り中隊長、小隊長が最前線に立ち必殺技による先制攻撃を開始したようだ。

逐一、偵察部隊から報告が入ると25倍の人数の差をモノともしない戦いになっていた。

これなら!そろそろ動きがありそうだな・・・・・。



「しかし、何故シン様は、ワザワザ5000の部隊しか向かわせなかったのだ?」

「ガッハッハッハッハ~♪ 俺達には分からんが、シン様には何かが見えているんだろうよ♪」

「フッ! そうですね♪ 我々は、シン様に着いて行くと決めたんですから信じて動くだけですよ♪」

「違いない♪ その答えも後で分かるんだろうな。」

各軍団長が何やら話し合っているが、気持ちはわかる。



「北西偵察部隊のルポより緊急報告! さらに西より別の軍隊の進軍を確認!」



「別の軍隊だと!」

唸り声を上げたのは、第四軍団長のエヴィー・エーニスだ

「どこの軍隊だ!」

「現在魔導スコープの最大倍率で確認していますが、砂塵が上がっているだけで、確認取れません!」



「グヌヌヌヌ! 距離は如何ほどだ!」

「私の位置からだと凡そ300㎞と思われます!」

「クフフフフ♪ という事は、テンペスト迄350㎞ってところかですかね~♪」



「はぁ~ もしかして・・・・・・シン君の予想通りって事?」

「もしかしなくても予想通りって事なんだろうね~♪」

「はて? 何を言っておられるのですかな?」

首をかしげているのは、プロフェットだ。



「クフッ♪クフフフフ♪ 余計な心配をさせたくないとシンが我々だけに話していた事があります♪」

「それは・・・・・一体・・・・。」

「クフフフフ♪ シン! この状況下であれば教えても宜しいので?」

「あぁ・・・・悪い予感は、良く当たるもんだな。」



「シン様!一体どこの軍だと申されるのですか!?」

「それは・・・・・」

「「「エキセンブルグ」」」

メロとマロン、そしてティーグルの言葉が見事にハモッた。



「はぁ~? エキセンブルグと言えば我が、テンペストから1000㎞以上西にある人族の強国ではありませぬか! その強国が何故我がテンペストを攻める必要があるのですか?」

意外そうに眉をひそめて口を開いたのは巨狼のジーニアスだった。

「しかも、合わせ示したように何故、このタイミングで、人族が攻め入ってくるのですか!」

「それは、流石に勘違いなのでは?」



「クフッ♪クフフフフ♪ 貴方方は、まだ、シンの凄さを理解していないようですね~♪」

「どう言う事なのだティーグル殿?」

「ウフフ♪ 貴方達ももっと頭を使いなさいな♪ シン君が、鬼人族との戦いの為だけに、ここまで、テンペストを変えたと思っていたの?」



「そ・それは、確かに我々は、信じられない程、強くして頂いたので、前回の戦争を知っている者としては、過剰戦力だとは思っていましたが・・・・・」

「クスクスクス♪ でも、仕方がないよ! 僕達だってシンがやる事に未だに驚くんだからね♪ 第三軍団長のジーニアスなら違和感位あったんじゃないのか?」



「確かに・・・・・偵察部隊に4チームも出動させる必要を感じていませんでした。 特に西側など何の意味があるのかと思慮しておりましたが・・・・・なるほど、そう言う思惑があったのですね! 相変わらず、凄まじい洞察力に感銘しました。」

ジーニアスが目を伏せてシンに首を垂れた。



「どう言う事だ?」

「フフフ♪ おバカさん♪ 自分でもさっき言ったでしょうに♪ ワザワザ鬼人族だけなら過剰戦力だって! それを知っているシン君が、4方向に偵察部隊を出動させる訳ないでしょう?

メロの言葉を聞いたギラン、プロフェットが目を見開いた。



「「ま・まさか・・・・・最初から予想されておられたのですか?」」

「う~ん・・・・・最初からって訳じゃないんだけどね♪ ちょっと気になる事があったから調べていただけだね♪」

「ガ~ハッハッハッハ~♪恐ろしいお方が王になった者よ! なぁ~ジーニアスよ!」

「フフフ♪ 本当ですね・・・・。」



「という事は、残った1万の部隊で、エキセンブルグの兵と交戦に向かうと? その為に残したという事なのですか?」

「ん~ それも、ちょっと違うかな~・・・・・・捉える為かな?」

「へっ?」



「この戦には裏がある・・・・・だから、我が兵を全員出動させてしまうと、さっきもお前が入っていただろう?過剰戦力だって♪ 手を抜いても鬼人族の奴らを殺し過ぎる恐れがあるからな!・・・・・5000の部隊を先行させたのは、ある場所まで誘導して一網打尽にしてから捉えやすくするためだな♪」



「で、どうされるおつもりなのですか?」

ギランが俺の顔を見ながら笑みを浮かべている。

「どうするも何も、間違いなく俺達の国を狙っているんだから・・・・・・叩き潰すだけだ!」

「プロフェット!エーニス!お前達の部隊の訓練でやらせていた内容は、全部終わっているよな♪」



2人共ハッっとした顔をしながら互いを見つめると

「「こりゃ~参った♪ まさか・・・この為に?」」

「フッ♪ まさか・・・」

「ハッハッハ♪流石にそれはなかったようですな!」



「ウフフフフ♪ おバカさん♪」

「何がですかな?」

「君たちは、まだ、シンの事が分かってないね♪」

「クフッ♪クフフフフ♪ そうですね~♪」



「シン君の話は最後まで聴くものよ♪ ね~♪ そうでしょうシン君♪」

「ん? 何がだ? 俺は、まさか、その為だけにやらせた訳がないだろう?って言おうと思ってたんだけど?」

「「「「へっ?」」」」

「クフッ♪クフフフフ♪」

「シン!まだ、少し時間があるんだから皆に教えて上げなよ♪」



「ん? あぁ~別に構わないけど・・・・・その前に、油断大敵だぞ!決して油断するなよ!」

「「「「「「「 了解!」」」」」」」



「フム! 以前も話した通り俺は、記憶が少し戻った事で、以前の能力を使える時と使えない時があるんだが、この2ヶ月の間に魔法を使って色々調べていたところ西方の大国エキセンブルグにも魔族らしき存在が関与している事が分かった。」

魔族と言う言葉を聞いた瞬間、ゴクリと固唾を飲む音が聞こえた。



「そもそも、前回の鬼人国との戦争で不可解な事が多かった事を聞き、俺はヒョードル様に直接話を聞く事ができた。魔族の存在。そして、魔族に洗脳され利用されているリザードマンと鬼人族の存在。

魔族の力で獣人族に化けて侵入していた鬼人族の奴らと獣王への野望が捨てられなかったソンメルが結託して城に火を放った事。 その全てに悪魔が拘わっている事を教えて貰った俺は、常に奴らを監視する事にした」



「なるほど、そうだったのですね!それにしても魔族が本当に現れたとなると一層気を引き締めてかからねばなりませんな・・・・・。」

「その通りだギラン!魔族の強さは戦った俺が一番良く分かっているつもりだ。まぁ~あれから皆もパワーアップしたから単独の戦闘ならどうとでもなるだろうが、今回は国家間での戦争だからな・・・・・。」

俺の言葉に皆が固唾を飲んだ。



「それにしても、どの様な魔法で調べられておられたのですか?」

「気になるか?」

「それは、シン様の超越した力を嫌と言うほど見せつけられていますので、気にならない方がおかしいかと・・・」

「クスクスクス♪ プロフェットは、シンの事を崇拝しているもんね♪」

「ハッ!お恥ずかしい限りですが、シン様といると年甲斐もなくワクワクして仕方がありませんな!」



照れ笑いを隠そうとしているが隠せないでいるプロフェットとを見て皆が笑い出した。

「アハハ♪ そんなに気になるなら教えるよ♪ でも、大した事ないぞ? 

先ず、使用したのは、動物を使役するスレイブと言う魔法を使って鳥を20羽と敵の近くにいるネズミなどの小動物を20匹を使って潜入調査させたんだよ♪」

「「「「おぉぉぉ~!!そんな事まで出来るとは・・・・・。」」」」



「まぁな!月に何回かだけだがな・・・・それで、使役した動物たちにオートセンスと言う魔法を付与したんだよ♪この魔法は、動物たちの五感を俺とリンクさせる魔法だから鬼人国やエキセンブルグ王国内で起きている事を直接見て、聞く事が出来た。」

「「「「おぉぉぉ~!! 流石は!シン様!」」」」



「本当に話を聞きたいんだな♪ 分かったよ♪ まぁ~最初は鬼人族の国に使用したんだけどね♪ そこで、エキセンブルグの話が出てきた事が気になったから調べ始めたんだけど、何にしても動物たちを使って調べていくうちに民衆の中から妙なキーワードが出てきた。」

「民衆ですか・・・? 妙なキーワードとは?」



「俺達・・・・・獣王国テンペストの名前と獣霊山だ。」

「ふむ・・・・・エキセンブルグ程の大国の街中で・・・・・なるほど・・・・・」

「しかし、獣霊山の名前が出るとは・・・・・敵の狙いは何なのですかね?」

ギランは、思い当たる事があったのか納得していたが、ジーニアスが頭を傾げていた。



「フッ♪ それについては、追々話すとして、最初は城内を調べていたんだが、動物が侵入可能な場所での会話には、秘匿命令が出されていたようだな。 それに警備が厳重過ぎた。 話を聞くとだいたい同じような会話をしていた事で、違和感を感じた俺は、調査対象を民衆たちに変えて会話を調べる事にした。」

「それはまた、どうしてなんです?」



「お前達も覚えておくと良いよ♪ 昔から人の口には戸が立てられないっと言ってな、重要な事を誰にも漏らすなと言われたところで、何人かの人間は、身内であったり信用が置ける者に話をするもんなんだよ。

そして、その話を聞いた者が、また、口が堅いと勝手に信じている知り合いや友人などに話をしてしまう。」

「分からなくもないのですが、2ヵ月間程度であれば我慢できるのではないのでしょうか?」



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