48 村人、呼吸する。
「【デビルスパイダー】!?
チョコマカと壁や天井を走る上に、動きが速い魔物よ、攻撃を当てるのは至難の技で───」
「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール・・」
「ぜ、全弾命中!?」
『北連山の鍛冶堂』。
その中は、蜘蛛タイプの魔物の支配下らしく……至る所に巣が張られていた。 キュアとダイが暫く進むと通路の先に、体高1mの人食い蜘蛛【デビルスパイダー】が出現。
弱いくとも数の多いタイプで、5匹が一斉にワラワラと撹乱させられる動きをするが……キュアは遠距離から確実に隠密攻撃を繰り出す。
「一匹抜けたぞ!」
「あ……アタシだって!」
不意打ちスキル、『隠れた状態で攻撃すると追加ダメージ』により初撃で【デビルスパイダー】のうち4匹を倒したキュアだが、1匹だけ生き残ってしまった。
【ドラゴンハーツ】は同じ魔物でも、ステータスに一割強程の誤差がある。 この【デビルスパイダー】はHPが高かったらしい。
ダイが、愛剣を【デビルスパイダー】に振るう。 キュアの不意打ちスキルにより弱っていたので、苦手意識を持っていたダイでも愛剣を当てる……が。
「ヤバッ!?
牙に引っかかって───」
「メイクハンマー!」
ダイのピンチに、キュアは悲鳴を聞く前から跳びだしてフォローに入る。 【デビルスパイダー】の顔面を瞬時にカチ割った。
「あ、ありがと……って言うか、アンタ強すぎ! ナニが『他人を守るのは得意じゃ無い』よ!?
結局アンタが全部倒したじゃない!?」
ダイは鍛冶だけではなく、剣にもかなり自信が有った。 村では同年代のマッチョ男子たちに負けた事が無かったからだ。
その自信が打ち砕かれる程キュアは強かった。
「現じ───昔は魔法が使えなかったからな……剣での戦闘経験がある」
「せ、戦闘経験は納得したけど……魔法が使えないって、そんな事あるの?」
「ああ、ココじゃ無い故郷では……な」
「ソレでどうやって、息を吸うの?」
「い……息?」
「呼吸は、最も原始的な魔法名よ」
「呼吸が魔法名……」
「じゃなきゃ、魔力を取り込めないでしょ?」
キュアの住む現実では魔法を使う際にのみ魔力を『皮膚から』取り込み、取り込んだ魔力も精霊に捧げる。
しかし【ドラゴンハーツ】では常に、最大MPまで魔力が回復してゆく。 息とともに魔力を吸い、息とともに魔力を吐きだし『敵からのダメージ2%カット』のようなパッシブスキルに使われる……という設定である。
直接MPが減るのは、具象化したファイヤーボールといった魔法にのみだ。
「俺が現実で魔ナシなのは……魔力を取り込むための、魔力操作が苦手だからなのかな」
「よく分かんないけど……ソレだけヤレるんなら大したモンよ。
───さあ、『山』の中腹に出るわ」




