幼き日の憧れの噺
2013/06/29
診断結果
牙声さんは『泣く』と『羽』と『日常』と『黒』を使ってSSを書いてください!!頑張ってね(・ω・)ノ
ブログ【終わらないはなし。】(http://ameblo.jp/kisei728/entry-11563166404.html)にて公開。加筆修正済。
降り続く雨は止む事無く、世界をその涙で濡らしていく。窓から眺める景色はさして変わり映えせず、溜息が零れた。
つまらない。
退屈凌ぎに、と点けたテレビから流れるのは今流行のアイドルの歌。切ない恋愛感情を綴った曲で若者に人気らしいが、生憎私はそんなものに興味は無い。いくつかチャンネルを回しても興味を惹かれる物は無く、結局すぐに電源を落とした。どうせつまらないのなら外を眺めている方がよっぽど良いのかもしれない。なんとなく部屋を見回すと、コルクボードに貼られた十数年前に撮った家族写真が目に入る。
空が泣いているから雨が降る、なんて信じていたのは幼い頃のこと。空が泣くなんて在り得ないのに。ふとそんな事を考えて笑ってしまった。アニメの主人公の様に、他人とは違う何か特別な事が起こると信じて疑わなかったあの日が懐かしい。そんな事はある筈が無いと気が付いたのはいつだっけ。
不意に何かの気配を感じて窓の外を見た。漆黒の羽が舞う。鴉でも来たのかと思ったが、其処に居たのは――――。
つまらなかった日常が、あの日憧れた非日常に変わった瞬間。
誰でも一度は他の人と違う『特別』になりたいと思ったことってありますよね。




