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王の部屋で王と王女が2人きりで話していると、黒い外套をまとった2人組が突然音もなく入って来た。取次もなしにそのような者たちが急に王の居室に現れるのは異常事態だ。2人して顔色も異常に悪い。
「何だお前たちは」
王が大きな声で侵入者に問いただすと、2人組のうち1人が答えた。
「私はアルキトゥーティスだ」
「何だと!」
アルキトゥーティスといえば、知らぬ者はない正体不明の魔王だ。魔族の手下とともにしばしば人間たちに悪さをしているが、強大な魔力ゆえに誰も太刀打ちできず、なすがままにされていた。
「本当にお前が、世間でぶいぶい言わせている噂の魔王、アルキトゥーティスなのか」
「いかにも私がぶいぶい言わせているアルキトゥーティスだ」
それから侵入者の残り1人も王たちに自己紹介をした。
「そして俺は魔王のしもべ、ペロエモンだ」
「ぺロエモンだと。ふざけた名前だ」
「黙れ!俺の両親が1週間かけて考えてくれた名前を侮辱するのか」
「2人で1週間かけてそんな名前しか思いつかんかったんか……」
魔族は頭が悪いのかもしれない。
それはともかく、王は魔王にたずねた。
「ここに来るまでに人がいただろ。どうやってここまで呼び止められずに入って来た」
「黙って忍び込むことくらいわけはない」
「まあいい。それで一体私たちに何の用だ」
魔王は直接答える代わりにたずね返した。
「そこにいるのはセピア王女か」
「そうだが」
「私は美貌で頭もいいというセピア王女の評判をきいて嫁にもらいにやって来たのだ」
「魔王が人間の娘を嫁にするというのか」
「いかんのか。私にはうなるほどの富がある。私と暮らせば毎日贅沢できるし、退屈したときはフレンドリーな奴隷たちが飽きるまで遊びにつき合ってくれる」
「むむ」
王は少し考えてから娘に言った。
「ああ言ってるけどどうする?嫁に行くか」
「行きません」
それから王女は自分で魔王に答えた。
「私はこの屋敷で父と2人末長く仲良く暮らすことになっております。ですから、申し訳ありませんが、誰も私たち2人の間を裂くことはできないのです」
「2人で仲良く……?」
魔王は父子に奇異の目を向けた。
「うちの娘はときどきおかしなことを言うんだ。気にしないでくれ」
王は魔王に説明した。
「ふうん……」
魔王はまだ何かの疑いを抱いているようだったが、それはさておいて王と娘に言った。
「それでは嫁には来られないというのだな」
「本人が嫌と言っているからダメだ」
「ならばしかたがない。力ずくで王女をいただいてゆくとしよう」
これを聞いた王は、常に身に帯びている剣を鞘から抜きつつ大声で叫んだ。
「誰か来てくれ!曲者だ!」
すると王宮で働いている数人の家来たちがすぐに部屋へ駆けつけ、王とともに2人の侵入者をとり囲んだ。




