1 いてぇなこのやろう!
とりあえず、やれば人並みに成果を出す。
しかし続かない。続けられない。
続かないので専門性は身につかない。
なので抜きんでる能力はない。
いわゆる器用貧乏である。
唯一、その才能が欠如しているのであろう。
それこそが「努力すること」である。
「だるいな。」が口癖だった。
何をするにも消極的で、やらなくて良いなら何もしたくない。ゲームや漫画、アニメを見て自宅でゴロゴロする1日。気が付いたら寝落ち。それが幸せだと思った事も無いが、他の何かをしようとは思わなかった。親に反抗するのもだるかったのでとりあえず学校は毎日行った。
逆に、やれば何でも人並みにできた。勉強もスポーツも努力せずとも人並み。ただ学校に行って授業を聞いていればテストは平均点。走ればタイムもほぼ平均。学校ではそれなりに話の合う友達もいるが授業が終わると即帰宅。つるんで遊ぶこともない。アニメやゲームの世界にどっぷり浸かる毎日。それで親も先生も友達も何も言わなかった。
これから始まる大学入試もだるかった。当然、就職なんてだるくて問題外。勉強もだるいが働く意欲はもっとない。とりあえず、自分の学力を知って受験する大学を決めるために学習塾へも行ってみた。試験勉強中にふと落ちた時のことがよぎる。かと言って、受かっても努力する未来が見えない。全く興味のない学問をするのも嫌だったので、アニメやゲームの世界で少しだけ興味のあったところを志望校とした。
三流理系大学のマテリアル工学科。
「君なら落ちることはないだろう」
「もっと努力してもう一つランク上げてみたらどうだ」
学校も塾でもこんな感じで気楽なものだった。
「マテリアル工学?」
理系志望でないとほとんど知らない。理系志望でも知らない者もいた。友人の中で人気は理系ならロボット工学。本気でガン〇ムやらバル〇リーを作りたがっているのはほんの一握りで、簡単に言うと就職に有利らしい。
「マテリアル工学ってどんなことすんの?」
「現代の錬金術だよ」
「なにそれ面白そうじゃん」
「錬金術師はよくアニメやラノベに出てくるね。安価な素材から黄金を作ったり、賢者の石で不老不死の薬を作る研究だよ」
「最近、鉛や水銀から本当に金が作れるらしいよ。作るのにお金かかりすぎて儲からないらしいけど」
「それ知ってる。将来、俺が本体作るからガン〇リウム合金みたいなの作ってくれ。ミノ〇スキー粒子でもいいや。」
友人達は基本オタである。
アニメやラノベで錬金術を初めて知ったときは自分も正直胡散臭いと思った。お話的には面白いと思うが。
「実際に魔法のような物の分解、再物質化ができたら苦労しないよなぁ。」
魔法だって実在しない。ラノベで題材にされる魔法も錬金術も空想上の物である。しかし、火のないところに煙は立たない。少し気になって何気に錬金術について調べてみたのがきっかけだった。
錬金術は古代から続く貴金属の生成を目的とした学問で、実は現代科学(化学)などの始まりという。錬金術の実験の過程で発見された薬品があったり、現代でも使われている実験器具もあったり。最近では現代の錬金術の成果とされるネオジム磁石なんて物もある。
面白そうだとは思う。しかしこればかりは人並みに成果は出せないだろうなと思った。見慣れた天井をぼんやりと見つめつぶやいた。
「大学受験か。だるいな。」
そのまま眠りに落ちた。
◆◆◆◆◆
突然、尻に痛みが走る。
「泣けっ!」
誰かが叫んでいる。
あまりの痛みに状況が掴めず固まっていると、ペシっという音がしてまた尻に痛み。
「泣いてっ!」
「連れて行っちゃダメ、神様お願い!」
目を開けるとすぐ下に知らない綺麗なお姉さんが寝ていた。
いや、お姉さんよりもっと年若い。
上気した肌がほんのり赤みを帯びていて、肝心なパーツが薄衣に隠れている分余計にエロい。
しかし、なぜか上下逆である。自分が逆さに吊られている?
そのお姉さんが叫ぶ。
「ああっ神様!」
ピシッという音とともにまた尻に痛み。
・・・誰かが尻を叩いてる?ちょっとむかついたので、
「いてぇなこのやろう!」
と叫んだ。・・・・つもりが聞こえたのは赤子の泣き声だった。
「おぎゃーっ」
「もう大丈夫ですよ。男の子です。」
ちょっとしわがれた婆さんの声のあと、お姉さんにそっと抱きかかえられた。
「はじめまして、私がママですよ」




