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『決戦! クリスマス!!』

クリスマスは今年もやってくるのだ

全ての人類に、平等に……ゴゴゴゴゴゴ!!(何

「”主よ貴方はどこへ行かれるのか”……」


 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は、遠くの山へ向かう軽トラックの荷台に揺られながら、心細さからか、どこかで聞いた事のある一節を口にするのだ。


 さもあらん。


 ご当地を離れた”ご当地ヒーロー”など、目的地を見失った渡り鳥に等しいのである。

 おぼろげに覚えていたこの一節が、そういう心情にピッタリ当て嵌まったのだ。


 この言葉のすぐあとに目指すべき信仰を見失ったペトロは、キリストに何を思ってこの言葉を投げかけたのであろうか……。


 ヒーロー”ハチカヅキン”は依りどころである駅前商店街を離れどこへ向かうのか、その手に持った軍手とノコギリと斧は何も答えてはくれない……。



『決戦! クリスマス!!』


「はい着きましたー! ここ生駒山が、クリスマスツリーの原産地になってます。え? ああ、杉なんかは原価が安くなりすぎて……なので、知り合いの山に土地持ってる方がクリスマスツリーを、ええと、「モミの木を植えてクリスマスシーズンに出荷しよう!!」という計画を立てまして、各地に出荷されてたんです。そこで今年のクリスマスに使うモミの木もお願いしたんですが「取りに来るんなら只にするで^^」というお誘いがあったので、生駒山なんて近いものですから、こうして取りに来たわけですよ!」


 満面の笑みを浮かべる駅前商店街『ほうき不動産』の坂東さん(60歳)である。


 クリスマス特別企画ということで、何も知らされず軽トラックの荷台に乗せられ、生駒山までドナドナされてきたヒーロー”ハチカヅキン”の脳裏には、


『ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”! 「を」 生駒山に不法投棄か!? 駅前商店街には早くも新たなマスコットが誕生!?!?』


という三面記事が踊っていたのは、良い子の皆とヒーロー”ハチカヅキン”だけの秘密だ!


「う、うう、着いたのか? 怪人スーツが有ってもこの振動はお尻に悪いぞヒーロー”ハチカヅキン”。クックック、ではさっそく私とお前が飾り付けを競う2本のモミの木を、森林破壊して手に入れようではないか!」


 怪人スーツの手のグローブを外し、ノコギリや斧を持ちやすい軍手にはめ替えた怪人”犬王モノー”は、言うが早いが長い時間揺られてきた軽トラックの荷台から、軽々とドッコイショーとゆっくり飛び降りると、『ほうき不動産』の坂東さんの指示に従い、モミの木がまばらに残る一角へ歩を進めるのだ!


「……」


 怪人”犬王モノー”が「モミの木の伐採ツアー」、を知っていたのに衝撃を受けたヒーロー”ハチカヅキン”は、そっとカメラクルーにも聞いたところ「あ、”犬王モノー”さんから連絡がいってる筈だったんですが、その様子だと忘れてたみたいですね」とのことである。


 軽トラの荷台で、売られていく子牛の気持ちを味わっていたのは、ヒーロー”ハチカヅキン”だけだったのだ!!


 ……。


 悪の怪人に対する敵意を1段階シフトアップさせたヒーロー”ハチカヅキン”は、気を取り直してノコギリと斧を持って、生駒山へ向かうのだ!


 途中で怪人”犬王モノー”に出会った場合、復讐に燃えるヒーロー”ハチカヅキン”の怒りは、荷台に積んであった休憩用のスポーツドリンク(5本)を怪人”犬王モノー”に渡さない可能性があるほどだ!


オノトノコギリデモミノキヲバッサィイイ!


 斧とノコギリで素人が中ぐらいのモミの木を伐ろうとしているような音が軽トラのラジオから夜の山中に響き渡る。


「フワッハハハハハ! 見事なモミの木だ。きっとイオンやコーナンで購入すれば、1万を軽く超えるに違いない! 私のみごとな選定眼に(木の伐採だから剪定と掛けているのだ、フハハハハ!)恐れ入るが良い、ヒーロー”ハチカヅキン”!!」

 

 ノコギられたモミの木を引っ張るものの、重くて持ち上げられない怪人”犬王モノー”を尻目にし、もう伐採とちょっとした形を整える剪定も済ませていたご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は、モミの木を「フントコショー!」と担ぎ上げると、下の方においてある軽トラックまで、注意深く運んでいくのであった!!


「あ。いや、待ってくれないかな? ……私はちょっと欲張りすぎたかもしれない。いや、そりゃあ怪人”犬王モノー”ともなれば、ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”に負けない、立派なモミの木を持って帰らなければならないではないか! ともすれば、狙った獲物が大きくなるのは当然で……つまりだ、その理由はヒーロー”ハチカヅキン”にあるのだから、”ちょっと持って帰るのを手伝ってくれても良いんじゃないかなあー”っと私は思うのだが……」


 怪人”犬王モノー”が見事な泣き言をしゃべり終える頃には、ヒーロー”ハチカヅキン”は軽トラの荷台に担いでいたモミの木を転がしており、あまつさえ、怪人”犬王モノー”に配られていないスポーツドリンク(500ml)を一気飲みしているのである!


 戦いは…終わったのだ。


「クリスマスセール開催中! 年末大売り出し! 駅前商店街では、クリスマスには立派なモミの木でお客さまをお出迎えするぞ! もしかしたら入口と出口に2本あるはずのモミの木が1本になってしまうかもしれないけど、それは良い子の皆が悲しむかもしれないから、仕方なく怪人”犬王モノー”を手伝ってくるぞ! 良い子の皆は、連絡網に連絡が回ってきたら、必ず次の人に伝えよう! ヒーロー”ハチカヅキン”とのお約束だっ!!」

ブックマークや感想をすごくお待ちしております! パワーが欲しいのだ!!

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