インテリジェンス・ビキニアーマーと元女騎士マリーの受難
その日、マリーは人生で三度目の溜息をついていた。
一度目は騎士団を辞めた日。二度目は冒険者登録の際に「元女騎士? 珍しいね」と軽く言われた時。そして三度目が――今。
「……なんで、こうなるのよ」
遺跡ダンジョン最深部。崩れかけた古代魔法文明の祭壇の上で、彼女はそれを装備していた。
金属光沢を放つビキニアーマー。しかも意思疎通可能。いや、意思疎通どころか、やたらと饒舌。
『装着完了! いやぁ、千年ぶりの稼働だね、マリー!』
「名前呼ばないで! あと勝手に装着しないで!」
そう。マリーは強制的に装備させられていた。
元々、彼女は重装甲の正統派女騎士だった。だが上層部の腐敗に嫌気がさし、剣一本で生きる冒険者に転身。今日も遺跡調査の依頼を淡々とこなす予定だった――この祭壇に触れるまでは。
『安心してくれ。私はインテリジェンス・ビキニアーマー。古代魔法文明が生み出した最高傑作だ』
「最高傑作がどうしてこんな露出なのよ!」
『合理性だよ。魔力循環効率、可動域、防御力の最適解さ』
「その理屈、絶対後付けでしょ!」
見た目はともかく、性能は本物だった。
遺跡の奥から現れた石像ゴーレムの拳を、マリーは軽々と受け止めた。いや、正確には受け止めさせられた。
『防御結界展開。はい、反撃どうぞ』
「指示しないで!」
剣を振るえば、普段の三倍は軽い。魔力も勝手に補助され、踏み込みは風のよう。
――強い。悔しいが、圧倒的に。
戦闘後、マリーは壁にもたれ、顔を赤くして睨んだ。
「ねえ、解除方法は?」
『ない』
「即答!?」
『正確には、君が“私に認められる英雄”になるまで解除不可だ』
「そんな条件聞いてない!」
『今言った』
こうしてマリーは、脱げないインテリジェンスビキニアーマーと共に旅をする羽目になった。
街に戻れば視線が痛い。
酒場では冒険者たちが二度見、三度見。
「おい、あの装備……正気か?」
「いや、あれ動いて喋ってないか?」
『視線を気にするな、マリー。自信を持て。君の筋肉美は芸術だ』
「褒めるな!」
だが噂はすぐに広まった。
“喋るビキニアーマーを着た元女騎士”。
依頼は増え、厄介事も増えた。
ドラゴン討伐、魔王軍残党、封印遺跡の再起動――そのたびにアーマーは楽しそうに喋る。
『いいねいいね、困難なほど燃える!』
「燃えなくていい!」
だが、共に戦ううちに、マリーは気づき始めていた。
このアーマーはただの装備じゃない。彼女の戦い方、心の迷い、過去の誇りまで理解し、補っている。
『君はまだ、剣を置いたことを後悔している』
「……うるさい」
『だが、今の君は騎士だった頃より自由だ』
その言葉に、マリーは剣を強く握った。
「だったら最後まで付き合いなさいよ。このバカ装備」
『もちろんだ、相棒』
こうして、
元女騎士と知能あるビキニアーマーという前代未聞のコンビは、剣と魔法の世界を駆け巡る。
伝説の遺物に振り回されながら、
今日もマリーの冒険は――露出多めに、だが誇り高く続いていくのだった。




