番外編2
デルタ結成直後
玄関に足を踏み入れた瞬間、ルナはぱっと顔を明るくした。
「わーい。拓海先輩の家、初めてです」
一拍置いて、少しだけ声を落とす。
「……前から、一度来てみたかったんです!」
キッチンから顔を出した冴子が、にこやかに微笑む。
「あら、新しいお友達?」
(また女の子。拓海ってば案外……)
そんな感想が、声に出ることはない。
「ルナです!」
元気よく名乗るルナ。
その横で——
「……」
のぞみは、あからさまに険しい目を向けていた。
警戒、というよりは敵意に近い。
「……?」
ルナは一瞬きょとんとする。
そのとき。
ピンポーン。
「いらっしゃい」
ドアを開けた拓海の後ろから、聞き慣れた声。
「お邪魔しま~す」
「あら、結月ちゃん、いらっしゃい」
冴子の言葉に、ルナの動きが止まる。
(……なんで、結月先輩のこと知ってるの?)
説明が追いつく前に、のぞみが口を開いた。
「結月ちゃん、この人だれ?」
一拍の沈黙。
「……バンド仲間だよ?」
結月は、少しだけ言葉を選ぶように答えた。
「ほんとにお兄ちゃんの部屋にいれるの?」
遠慮も何もない直球だった。
「どういう意味だよ」
拓海がすぐに言い返す。
「ただの曲の打ち合わせだよ」
そのとき、リビングの奥から声がした。
「きてるよ~」
顔を出したのはモモだった。
「なんで?」
拓海が呆れたように言う。
「なんかさ」
モモは肩をすくめる。
「のぞみちゃんに、『いやな予感がして怖いから、一緒にいて』って言われてさ」
視線が交錯する。
ルナは状況を飲み込めず、
結月は苦笑し、
拓海は頭をかき、
のぞみは腕を組む。
——騒がしい。
でも、どこか賑やかで。
デルタは、こうして
音楽以外のものまで巻き込みながら、
少しずつ形になっていくのだった。




