番外編1
拓海と結月は、机を挟んで顔を見合わせていた。
「先輩……どうしましょう」
机の上には、少しだけ膨らんだ茶封筒。
「活動は校内に限られてるんだから、特に使うことも無いけどな」
封筒からは、最高紙幣の肖像画が目を光らせている。
二十人分。
軽音同好会が承認されてから一週間。正式な部活に比べればささやかだが、生徒会から活動費が支給されたのだ。
たった二人の同好会。
結月は封筒をそっと押さえながら言う。
「でも、形を整えるのに、最低でもギターやアンプ、あってもいいんじゃ?」
沈黙。
そして——
「会の結束のために、会T作りましょう!」
「アー写撮って会員募集のポスター!」
「オリジナルピック配って会のアピール!」
「ゆるキャラ!」
結月が一気にまくし立てる。
二十人が、急に軽く見える勢いだった。
「待て待て待て」
拓海が両手を上げる。
「ゆるキャラってなんだ」
驚きつつも口元が緩んでいる。
「ドラムの形したマスコットとか?」
「いや、ギターの擬人化でしょ」
「ベースは影薄いから却下」
「却下するな」
笑い声。
だが、封筒の重みだけは変わらない。
結局。
無難な着地点として、ギターとベース、それぞれのアンプを SOUND DOCK からレンタル。
弦、シールド、スティックなどの消耗品を一年分購入。
残りは、プール。
「堅実だな。音が無いと始まらないからな」
拓海は封筒を閉じた。
結月は小さく笑う。
「じゃあ、会Tは来年ですかね」
「ゆるキャラもな」
来年の今頃、拓海はここにいない。
使い道は結月が決めればよい。
教室の窓から、夕方の光が差し込む。
まだ何者でもない同好会。
けれど、アンプが届けば、きっと音が鳴る。
その音が、形になる。
封筒の中身は減った。
けれど、なぜか少しだけ、増えた気がした。




