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残響のプレリュード  作者: erg
番外編

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76/82

番外編1

 拓海と結月は、机を挟んで顔を見合わせていた。


「先輩……どうしましょう」


 机の上には、少しだけ膨らんだ茶封筒。


「活動は校内に限られてるんだから、特に使うことも無いけどな」


 封筒からは、最高紙幣の肖像画が目を光らせている。

 二十人分。


 軽音同好会が承認されてから一週間。正式な部活に比べればささやかだが、生徒会から活動費が支給されたのだ。

 たった二人の同好会。

 結月は封筒をそっと押さえながら言う。


「でも、形を整えるのに、最低でもギターやアンプ、あってもいいんじゃ?」


 沈黙。  

 そして——


「会の結束のために、会T作りましょう!」

「アー写撮って会員募集のポスター!」

「オリジナルピック配って会のアピール!」

「ゆるキャラ!」


 結月が一気にまくし立てる。

 二十人が、急に軽く見える勢いだった。


「待て待て待て」


 拓海が両手を上げる。


「ゆるキャラってなんだ」


 驚きつつも口元が緩んでいる。


「ドラムの形したマスコットとか?」

「いや、ギターの擬人化でしょ」

「ベースは影薄いから却下」


「却下するな」


 笑い声。

 だが、封筒の重みだけは変わらない。


 結局。

 無難な着地点として、ギターとベース、それぞれのアンプを SOUND DOCK からレンタル。

 弦、シールド、スティックなどの消耗品を一年分購入。

 残りは、プール。


「堅実だな。音が無いと始まらないからな」


 拓海は封筒を閉じた。

 結月は小さく笑う。


「じゃあ、会Tは来年ですかね」


「ゆるキャラもな」


 来年の今頃、拓海はここにいない。

 使い道は結月が決めればよい。

 教室の窓から、夕方の光が差し込む。

 まだ何者でもない同好会。

 けれど、アンプが届けば、きっと音が鳴る。

 その音が、形になる。

 封筒の中身は減った。

 けれど、なぜか少しだけ、増えた気がした。

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