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残響のプレリュード  作者: erg
第2部

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72/82

第2部 第15項 その3

 その時、STAR DROPは

 アイコンタクトに込められた「三人の独白」

 言葉にすれば野暮になるすべてが、視線の交差だけで共有される瞬間。

 ルナの視線:

「アウフタクト、一拍前。奪うよ!」

 挑発的で、それでいて拓海と結月に全幅の信頼を置いた、鋭く燃える瞳。

 拓海の視線:

「いけっ!」

 リーダーとしての覚悟と、ドラマーとしての野性が混ざり合った、静かに据わった瞳。

 結月の視線:

「支える!」

 すべてを包み込み、決して揺るがない、深く穏やかな、しかし決然とした瞳。


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 世界を知るハルカの戦慄

 ハルトゲシュタインを率い、世界を股にかけるハルカにとって、拓海は「ドラムの師」であり、自分たちのルーツそのもの。

 誰よりも拓海のドラムを知り、その背中を追って世界へ飛び出した彼女。しかし、今の拓海が叩き出す最後の曲のフィルインを聞いた瞬間、彼女は悟ったはずだ。「師匠は、まだこんな高みにいたのか」と。

 世界を熱狂させる自分たちの音が、この小さなSTAR DROPの地下で鳴り響く「三角形の音」に飲み込まれていく。

 ハルカにとって、それは絶望ではなく、この上ない誇りだった。


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 奥のテーブルからの視線の正体

 エミにとって、デルタの「伝説」はどこか遠い時代の、尾ひれがついた昔話に過ぎなかった。

 拓海と決別し、別の道を歩んできた彼女だからこそ、ルナの休養で止まったデルタを「終わった存在」として処理していた。

  「三人、揃ったよ」ルナがその一言を放った瞬間、会場の空気が物理的に変わった。

 眉唾だと思っていた「主役を食った伝説」が、目の前で再現されるどころか、さらに進化して襲いかかってくる。

 エミが感じた戦慄は、かつて自分が手放した(あるいは手に入らなかった)圧倒的な「純度」への畏怖だったのかもしれない。


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 STAR DROPの「生き証人」たちの溜息

 常連客や、ハルカに憧れる若きバンドマンたち。

  彼らは、世界的なスターであるハルカが、背筋を伸ばしてステージを見つめる姿を目撃する。

「あのハルカが、あんな顔をして聴いている……」

 その事実だけで、デルタの凄みが会場に伝播していく。


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 10年目の「星座」

 ルナの休養から10年。

 その間、ハルカは世界へ羽ばたき、エミは自分の人生を歩み、拓海と結月は静かに音を守り続けてきた。

 未発表だった二曲が解禁されたとき、STAR DROPにいた全員が理解した。

 拓海、結月、ルナの三人は、ただ再会したのではない。

 10年という「空白」すらも、この夜に鳴らすべき一音一音を熟成させるための、長い長い「アウフタクト」だったのだと。

 ハルカが師と仰ぐ拓海のドラムが、エミがかつて見ていた拓海を遥かに超えて、星座のように不動の輝きを放つ。

 世界的なリーダーであるハルカさえもが、一人の"弟子"に戻って震えるほどのステージ。

「師匠はいつまでも遥か高みにいろっ!」

 ハルカの咆哮。

 それが、デルタという物語の真実の姿。


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 そして、そこには、3人をただ見つめる、ツムギがいた。

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