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91.chapter
「あ、そうだ」
ぽん、とおもむろに手を叩く玲を見上げると、彼が笑いかけてくる。何でしょうか。
「お前、服買ってやろうか?」
また突然だな。理由を聞いてもいいですかね。っていうか。
「別に服には困ってないけど」
「…………そこは好意を素直に受け取れよ」
「だって別に服とかそんなにいらないし」
そう言うと、玲は口の端を曲げる。
「んじゃ何が欲しいわけ」
「平穏」
「いやいやそれ俺には無理だから」
判ってるって。無理だと判ってて言ってるんだから。
「お嬢様、そんなにお辛いのですか? おいたわしい……」
刻、涙ぐまないで。泣きたくなるから。




