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90.chapter
「あ、この椅子いいかも」
「それ高くない?」
「俺、一回はこういう椅子に座ってみたいんだよね」
そう言いながら玲が叩くのは、ものすごく値の張るフカフカした椅子。まぁ座ってみたいかもだけど、自分で買う気はしないな。
「お嬢様は何か欲しいものなどございませんか?」
刻の言葉に、
「んー、今はとりあえず平穏が欲しい」
そう返すと、刻は眉根を寄せて困惑を見せる。
「……それは」
まぁ反応に困るよね。
「泉、刻を困らせんなって」
「刻、冗談だから。あんま重く受け取らないで」
笑ってそう言うと、刻は「いえ」と首を振る。
「お嬢様が壊れるくらいなら、私は何でも致します」
……………………。
うん、重い。
刻は真面目だからな。
「刻、泉のは冗談だから。冗談。判ってるかー……?」
玲が訊ねると、刻は小さく頬笑んで「はい」と頷いた。
……本当かなー。




