62.chapter
「どうしたの泉。何か滅茶苦茶元気ないけど」
「えーあのー……まぁいろいろ……ちょっと放っといて……」
激しく悩み落ち込む私を見かねたのか、侑香が話し掛けてくるけど……ちょっとほんとに、しばらく立ち直れそうにない。
前日イベントはあの後、割と速やかに終わった。大したバグも、あの後は起こらなかった。
でも一番の問題はあれだよね。
突然攻略対象にふられたところだよね。
まあ普通なら「あ、プレイヤーが選択間違えたんだねやったノーマルエンド私超ハッピー♪」なんだけど。
めっちゃくちゃに胸がチリチリするので。バグなのは明らか、と。
……え、何で突然ふられたわけ?
いや確かにね? 確かに色々不審なことやらかしましたよ? ええ認めますとも私は不審でした!
でも他のキャラならともかくあの櫟だよ? 櫟。あの電波!!
不審とか不審じゃないとか考えないと思うんだけど。
勿論。別にふられたから悲しいというわけじゃない。本心をいえば「やったあああああ」である。
でも当たり前だけど、それは「ただの私」の気持ち。
「ヒロインの私」の立場としては、ありえない状況だ。
攻略対象に「忘れて」と本気で言われる。つまり、近づくなと。
……あの。
……私、どうすれば良いんでしょうかね。
「……ほんとに大丈夫? めっちゃ顔色悪いけど」
「うん……ちょっと外の空気吸ってくるわ……」
私はベッドから立ち上がり、ふらふらと寮を出た。
「……明日どんな顔していろと? あれだよね。拷問だよね。ヒロインに何たる仕打ち。信じられない……苛めだ……」
ぼそぼそとそんなことを呟きつつ外を歩き回る。
あ、もしかしてこれも不審な行動かしら。
まぁいいや……もうふられてるし。関係ないよね。
「……はぁ」
ぶらぶらとその辺を適当に歩き回った挙句、私は適当に見つけたベンチに腰掛けてうなだれた。
あ、もしかしてこれ、前に櫟が寝てた奴か?
何となく気分が更に落ち込む。
「……む。月華院 泉! 発見!!」
……。
…………。
………………は?
嫌な予感にさいなまれつつ振り返ると案の定、ふらふらとその辺をぶらついていた私なんか眼じゃない、不審すぎる人物がこちらを真っ直ぐに見つめてにんまりと笑っていた。
……最悪だ。
「あ、ベンチをご所望ですか。私もう帰るのでどうぞ」
「つれないな!! これが噂のツンデレという奴か!! 初めて見たぞ!! なかなか悪くない! いや、なかなか良い!」
死ね。
っていうか何でこんな時によりによって不審者に会うんだ! 神様は残酷すぎる!!
「とりあえず、私、寮に帰りますので」
「まぁまぁそう言うな! 夜は短い。熱く愛を語り合おうではないか!」
「貴方に愛情を抱いたことは今まで一度もございませんが」
「照れるな! 聞いたぞ。私に一目惚れをしたのだろう?」
…………。
…………うわぁああああああああああああああああああああ!!
「な、なんでそれを……」
「ふふふ、私を誰だと思っている? 引きこもりなうだぞ! この学校の情報など容易く手に入る!」
意味がわからん!!
「あの何がしたいんですか? 人のことを馬鹿にしてるんですか? なんなんですか?」
「いや、私は真剣だぞ! いつでも真剣だ! どうだ凄いだろう!」
もう帰ってもいいかな。
「月華院 泉。何をそう、落ち込む必要がある?」
「……は?」
「ぶち壊したのは、お前だろう。なら、信じて真っ直ぐに突き進めば良い。違うのか?」
……え?
どういうこと?
というか、この不審者……前もなんか意味不明な言葉残して去って行った記憶があるんだけど……
まさかこいつ………………厨二病か?




