第26話 南バリナンの王都へ
僕たちはアイスキャンディーを売り込みに、南バリナンの王都へ向かった。
「ボニファティウスと違って、賑わっているのう」
魔族との戦いで終始ピリピリしているボニファティウスと違って、バリナンは商業が盛んである。といっても魔族との戦いはあるが。
「冒険者を、あまり見かけない」
「船に乗っているからね」
レフィーメの疑問に、僕は瞬時に答える。
一見平和そうなバリナンも、海からの侵攻に備える必要はあった。特に、海賊問題に悩まされている。
「ディータさま、落ち着いておられますね」
ヘニーは、街の雰囲気に圧倒されていた。彼女はウッドエルフで、シティエルフではないからか。
「僕は身内が、バリナンの王族だからね」
姉が、この国の王妃だし。
「しんどいかい?」
「のどかな森に住んでいたらでしょうか。こんな賑わっている街に入ると、感受性が強くなりすぎます」
ヘニーが、身体を震わせる。
「どこかで休んでいくかい?」
「いえ。お供します。わたしは、ディータさまの秘書なのでっ」
頭を振って、ヘニーは前進した。
「ムチャせんでええぞ」
リユが、ヘニーと手をつなぐ。
「おう、あの串焼き、香ばしい匂いがするのう。買っていこう」
全員分の串焼きを頼みつつ、自分は三本頼んだ。
「買ったらすぐ食べてね。王様を待たせている」
「ほうじゃった。そっちが優先かのう」
三本の串焼きを、リユは一気に胃袋へ詰める。立て続けに、焼きたてをもう三本ほど、口の中へ。
「ああ、やっぱスパイシーじゃのう。アタシ好みじゃ」
「それはよかった。王城へ行こうか」
「うむ」
人混みをかき分け、やっとの思いで城までたどり着く。ボニファティウスやシンクレーグと違い、屋根が丸い。流れている音楽も、独特の調べだ。
王宮に入ると、すぐに王の間へ通された。
「やあやあ、よく来たね」
上半身裸に、貴金属をつけた細マッチョの男が、僕たちを出迎える。彼が歩くたびに、ジャラジャラと貴金属が鳴った。
この人物こそ、南バリナンの王である。
隣にいるこれまた上半身半裸の女性が、僕の姉だ。昔は白ギャルだったが、今は黒ギャルになっている。チャラい性格同士、うまくいっているようでなにより。
「バリナン王、ピドー壊滅、父に代わって感謝する」
レフィーメが、王に膝をつく。
「お礼なんていいよ。テッシム王から、鉱山資源をたんまりいただいたんでね。そういうごあいさつは、王様どうしてすませているから、キミは頭を上げなさい」
「寛大なお心遣い、重ねて感謝する」
バリナン王の許しを得て、レフィーメは立ち上がる。
「あなたはお初にお目にかかりますな。竜人族のお嬢さん」
「アタシの正体を、知っとるんですか?」
バリナン王に素性を知られていて、リユはあっけにとられた。
「もちろんさ。我がバリナンの情報網はすさまじいからね。我が国が誇るスパイスの効いた串焼き、気に入ってくれたかい?」
「――!?」
リユが、口を押さえる。




