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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』=Holy Mageの闘い方= リゲル歴4045年

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帝国軍総司令官アランの事情聴取

 レイマーシャロル地区の『大黒主神教』でピートと共に逮捕されたスティービーという男も魔術師としての力を低かった。

 やはり、彼もアモー・ロンド大陸出身で、最初は海賊の下っ端として働いていたがダボシムに助けられたのをきっかけに彼の手下になったとのことだった。

 アランは、ダボシム黒魔術師からバドネリアスというBlack Mageについて聞き出すことにした。


 ダボシムは黒魔術師なのでピートとは異なり、厳重に結界が張られた独房に入れられていた。

 アランは看守の騎士に案内され、ダボシムの独房の前まで行くと、独房の中のその男に話しかけた。

 独房には小さな机と椅子があり、その机の上には、水の入った水差しとコップが置いてあった。

 部屋の片側には吊られた木のベッドがあり毛布が置かれていた。

 独房の中の男は、椅子には座っておらず部屋の隅で足を抱え込んで座り、頭を膝に付けるようにして寝ていた。


「ベッドの寝心地は悪いのか?」

 と、アランが男に声をかけた。


 すると、男は顔を上げて言った。

「別に眠く無いからな」

「することも無いし、この態勢が楽なんだ」

 と、答えた。


「そうか、暇なら少し俺の話し相手になってくれないか?」

 と、アランが言うと、男は怪訝そうな顔をして言った。

「お前だれだ?暇人か?」


「う~ん、暇人では無いな。でも、君と話してみたいんだよ」

 と、アランは言いながら、指さし一本で独房の鍵を開けた。


 ダボシムが驚いている間にアランが房の中に入ると、ひとりでに彼の後ろの扉が閉まり施錠された。

 そして、アランは何食わぬ顔で机の前の椅子に座って言った。

「椅子お借りしますね。良かったら君はあちらにどうぞ?」

 と、ベッドを指し示した。


「あん?」

 ダボシムは、勝手に自分の部屋に入って来た男を不愉快そうに見た。


「まずは、自己紹介」

「私は、アラン・クレオ・ハイデルベルト・レッドリオン」

「名前くらい聞いたことはあるだろうか?」


 ダボシムは、その名前を聞いて一気に血の気が引く思いがした。

 なぜなら、レッドリオン大公といえば、何度もBlack Mageを倒しているGrate(グレート) Mage( マギ )でありBlack Mageの天敵である。

 そして、その息子も強力なGrate Mageでありこの帝国軍の総司令官でもあると聞いている。

 そんな男が、自分の目の前に居るとは…


 ダボシムの表情を見たアランが

「どうやら、ご存じのようだね?」

 と、言うと

「はい」

 と、ダボシムは小さな声で答えた。


「私は、君にいくつか教えて欲しいことがあって来たんだ」

「素直に答えて貰えるかな?」

 と、アランが言うとダボシムは黙ってその場に座ったままアランを見た。


「君は黒魔術師だよね?」

「素直に答えて貰えない場合は、申し訳ないけれど君の脳に直接聞くことになる」

「好きな方を選択してくれ」

 アラン達Holy Mageは、神聖力(Holy Power)を使って相手の脳に直接アクセスする事ができる。

 Holy Mage同士はこの力をテレパシーとして活用できるが、そうした能力の無い者は、ただ自分の思考していることを読みとられることとなる。


 ダボシムは、アランの言葉に焦りながら

「ここは、魔法は遮断されているんじゃないか?」

 と、言った。


 アランは、片手で机に頬杖を突き、反対の手でコップに水注ぎながら笑んで言った。

「試してみるかい?」

 水が注がれたコップを片手に持ち、その中の水をゆらゆらと揺らすと、みるみる湯気が立ち出した。

 魔道具も使わず、詠唱も唱えず、微笑みながら魔法を使って見せるアランをタボシムは口を開けて見ていた。


「おっと、これ以上やると、お茶にちょうど良い温度を超えちゃうな」

 と、言いながらそのお湯を一口飲んでみせてから

「一気に飲むには、ちょっと熱かったな」

 と、言ってコップを机の上に戻した。


「この独房の中でも魔法が使えるのか?」

 と、ダボシムが言うとアランはニヤリと笑いながら

「君も試してみてるかい?」

 と、アランは余裕のある様子で言った。


 タボシムは、Black Mageほどの力の魔術師ではない。

 魔道具も詠唱も無しで使える魔法はほとんど無い。

「いや、やめとく」


 力なく、答えたダボシムに余裕のアランは続けて言った。

「それでは、私の質問に答えて貰えるのかな?」


「答えなかったら、直接脳に乗り込むのだろう?」

「噂では抵抗すると脳にダメージを受けることもあると聞く」

 ダボシムも黒魔術師、敵であるWhite (ホワイト)Mage( マギ )Grate(グレート) Mage( マギ )が使う魔法についての多少の知識は持ち合わせていた。


「ああ、そうだ」

「激しく抵抗すると、君の脳の中でバトルすることになる」

 と、アランは笑顔で答えた。

 それが尚更、ダボシムに恐怖を感じさせていた。


「じゃあ、素直に話した方が賢い選択というわけだろ?」

 と、ダボシムは追い詰められたネズミのように怯えた顔で言った。


「そうして貰えると私も助かる。人を傷つけるのは、敵味方関係なく私の好みでは無いのでね」

 と、アランが言うと、ダボシムも覚悟を決めたように言った。

「何が知りたいんだ?」


 ここからアランのダボシムへの一問一答が始まる。


「まず、私の言う質問に、イエス、ノーで答えてくれ」

「わかった」


「君は、アモー・ロンド大陸から来た?」

「イエス」


「黒魔術は、アモー・ロンドで身に付けた?」

「ノー」


「君はBlack Mageバドネリアスの指示で動いていた?」

「半分イエス、半分ノー」


「君自身の目的は、スチュアートリア帝国を破壊すること?」

「う…ん。難しいなぁ」

 と、ダボシムは困ったような言った。


 そこでアランは

「よし、では、ここからは質問形式にするので応えてくれ」

 と、言って質問の仕方を変えることにした。

「君に指示を出しているのは、バドネリアスだけでは無いということか?」


「ああ、俺はガニバランという黒魔術師の弟子なんだ」

「彼に着いて、このスチュア・トロア大陸に来た」


「では、君の目的はなんだ?」

 と、アランは少しだけ以前より厳しい口調で聞いた。

「俺には、目的なんて無い」

「ただ、ガニバランさんみたいに強い黒魔術師になりたかったのと、理想の俺たちの国を作りたかっただけだ」


「君たちの国?」

「君たちの国は、アモー・ロンド大陸のどこかの国では無いのか?」

 アランにとっても海を挟んだアモー・ロンド大陸は未知の世界だった。

 そして、アモー・ロンド大陸のBlack Mage達は、歴史上過去に何度もがスチュア・トロア大陸への侵略を試みている。


「俺の生まれた国は、ずーっと戦争ばっかりで、せっかく耕した畑も戦地になれば、めちゃくちゃだ」

「貧しいやつらは、自分の子供を売ったり、海賊になったり、落ち着いて暮らせるとこはなかった」

 と、ダボシムは暗い過去を思い出すように言った。


「君の祖国は、そんな国だったのか…それは気の毒だったな」

 アランは、本気で彼の生い立ちに同情した。


「俺は、この帝国に来て戦争なんて無くて平和で羨ましかった」

「だから、バドネリアス様がこの大陸に俺たちの国を作ってくれるってガニバランさんが言うから、その手助けがしたかっただけだ」

「まずは、帝国に邪魔されないように、帝国中を混乱させるのが俺たちの役目だったんだ」


 確かに、過去数回のBlack Mageの侵略は全て、スチュアートリア帝国により阻止されている。

 まずは帝国内部に目を向けさせて、その隙にスチュア・トロアの帝国以外の国の侵略を企てる作戦は現実的ではある。


「なるほど」

「で、そのガニバランって人はどこに居るんだ?」

 アランは、質問を続けた。


「ガニバランさんは、バドネリアス様の手足になって色々なところへ移動している」


 ガニバランという男は、皇帝にとっての自分のような存在なのかもしれないとアランは思いながら、次の質問をした。

「指示を受けたり報告したりする方法はどうしていたのだ?」


「魔鳥の使い魔を使っていた」


 アランもBlack Mageが使う使い魔としての『魔鳥』の存在は知っていたが、実際に見たことはなかった。

「魔術で創り出されるという魔鳥か!」

「この星の取り巻く、並行世界の狭間にある異次元空間を使って移動するという使い魔」


 アラン達Holy Mageは、「使い魔」として「使徒(しと)」を使うが、「黒魔術の使い魔」と「使徒」とでは大きな違いがある。

「使徒」は、主人(マスター)であるHoly Mageと神聖力(Holy Power)で同期され一心同体のような存在だが、個々の生物としての意思と魂を持つ存在である。

 それに対し、「黒魔術の使い魔」は黒魔術のダークエナジーの魔力で生物を魔物化した存在で、命令主の手足のように働くが、個々の生物としての意思を持たず魔力に魂も支配されている存在である。


「しかし、異次元空間の移動は、命のダメージが大きいのでは無いか?」


 宇宙にはそれぞれの世界の狭間に亜空間が存在する。

 しかし、それは物理的な世界と宇宙の外の世界とのバランスを保つための空間なので、魂を持つものや、肉体を持つものは存在出来ない世界である。


「ああ、だから人間には無理だ」

「完全に消滅してしまう。だから黒魔術で生み出した魔鳥を使うのだ」

「だが、ダメージが大きいから一年もすれば消滅してしまう消耗品だ」


 同じく鳥類である(イーグル)使徒(しと)を使うアランには、考えられないことだ。

「かわいそうに、鳥にも命はあるだろうに」

 と、アランは目を伏せ額に手を当てながら、考えられないというように首を振った。


「鳥より人間の方が大切だ」

 と、自分たちを軽蔑したかのようなアランの態度に、ムッとしたダボシムは言った。


 そのダボシムの言葉に、アランは毅然とした態度で言った。

「どちらも同じ命だ。優劣はつけられぬ。どんな命も粗末にして良い理はない」


「だが、人は獣を食すではないか」

 と、ダボシムも納得はしていない。


「それは命の連鎖の中ひとつだ」

「それぞれの魂には、その世界での役割があり、相互に命を支え合っている」

「死しても再び新たな命として生き返るという、魂の巡り合いを繰り返している」

「だが、魂が消滅してしまっては、生き返ることは出来ない」


 アランの言葉を聞いても納得できなかったダボシムだったが

「そういう考えもあるのか」

 と、ぽつりとつぶやいた。


「もう、ひとつ聞く。お前たちがノア・シラミネを狙うのはなぜだ?」

 と、アランがノアの事を切り出した。

 アランは、この男がノアのことを異星から来た者だと知っていたなら、ノアと「時の扉」の関係と、そこにBlack Mageが関わっているかを確認できると思っていた。


「ノア?」

「ああ、パドラルに居たヤツか!」

「あいつは、おそらく異世界から来た者だからだ。バドネアリス様がノアに会いたがっていたからさ」

 と、ダボシムが答えた。


 アランは、やはりそうかと思いながら核心の質問をした。

「ノアをこちらの世界に呼び出したのは、お前たちの仲間の誰かなのか?」


 タボシムは、しばらく考えてから言った。

「そうかもしれないし、違うのかもしれない」


「それは、どういう意味だ?」

 と、アランはじれったそうに言った。


「おそらくヤツラふたりが現れたのは、全く別の場所だったから呼び出されたわけじゃないと思う」

「呼び出そうとしたのは、Black Mageの間で『魔王』と呼ばれている者らしいからな」

「しかも、その儀式をした場所は全く違う場所らしい」

 と、ダボシムが言った。


 アランは、彼が言ったことは本当なのだろうと思った。

「最後に、もうひとつだけ応えて欲しい。その儀式をした場所とはどこだ?」

 ダボシムは、下っ端の黒魔術師のようなので正確な場所を知らないかもしれないなと思いつつ尋ねた。


「この国では『魔の森』と言われているところの近くだ」


 ダボシムの口から『魔の森』という言葉が出て来たことに少々驚いたアランだったが、再びに冷静になって聞き返した。

「その儀式はいつ行われたんだ?」


「俺は立ち会っていないからわからんが、ノア達が現れた時期あたりじゃないか?」

 と、言うタボシムの答えに、アランは「なるほど、ノア達がこの星に転移した要因のひとつに、その『魔王』を呼び出す儀式というのが関係あるらしいな」と、考えていた。

 しかし、他の大陸の者がなぜ『魔の森』を知っており、わざわざその場所を儀式の場所に選んだのだろうか?という疑問も浮かんで来る。


「儀式をする場所はどこでも良いのか?それとも相応しい場所があるのか?」

 と、アラン聞くと

「俺たちアモー・ロンド大陸には、大々的な大きな黒魔術を行うのに適しているダークエナジーが集まる『エナジースポット』と言うのがあるんだ」

「このスチュア・トロア大陸にも存在する。そのひとつが『魔の森』付近なんだ」

「まあ、黒魔術やダークエナジーを使わないお前らにはわからないだろうがな」

「俺たち黒魔術には、魔術を使うだけですぐわかるのさ」

 と、ダボシムは自慢げに言った。


「そうか!それは盲点だった。ありがとう、ダボシム君!」

 と、アランは椅子から立ち上がりダボシムに握手を求めた。

 ダボシムは目が点になっていたが、思わずアランの差し出した手を握ってしまった。


「全てが解決したら、君の今後の生き方も相談しよう」

「悪いがそれまで、ここで耐えてくれ。また、協力してくれたら嬉しい」

 そう言ってスチュアートリア帝国軍総司令官レッドリオン公爵は、ダボシムの独房から去って行った。


 ダボシムは、あっけにとられながらアランの後姿を独房の鉄格子越しに見送っていた。

 普通なら、捕えられた敵の捕虜を尋問するのに総司令官自ら独房内に乗り込むなどあり得ないだろう。

 しかも、拷問されるどころか厳しい詰問された感じも無く、自然としゃべらされてしまった。

 これが、噂に聞くGrate(グレート) Mage( マギ )の力というものかと思ったタボシムは、

「こんなGrate Mageが沢山いる帝国相手に闘っても勝てるわけないな」

 と、独り言をつぶやいていた。


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