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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』=若きMage達の誓い= リゲル歴4045年

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守られる者、守る者 =点けたら消すまで1セット=


 ノアは、改めて考えていた。

 地球で引き篭もってゲームをしていた頃は、考えようともしなかったこと。


 国を守るって、なんなんだろう?


 日本は、たまたま自由と平等と民主という理想を掲げていたアメリカに負けた。

 アメリカの民主主義を受け入れ、軍事放棄をする代わりに自由と平和を得た。

 その後に生まれた俺は、戦争も知らない。

 軍隊を持たないのが、当たり前で、正しいことだと思っていた。


 しかし、今、自分が意図せず闘うこととなりそうで、守りたいと思える人たちが増えた。

 この国の平和と生活を守りたいと思った時、自分は何をすべきなのだろうか?


 日本で、ぼ~っと暮らしてきた時のように人任せではいられない。

 攻撃して来る者がいる以上、大切な人を守るためには闘わなければならない。


 人を傷つけずに闘うには、どうすれば良いのだろう?

 まずは、自分に出来る事を増やさなければ、選択肢すら無い。


 恐らく、大切な人々が危機にさらされていても、今の自分では何も出来ずにただ涙をのむだけだ。

 今はとにかく、自分に出来ることを増やそう。


 そう思って、帝国神聖力術士養成大学White (ホワイト)Mage( マギ )クラスに登校した。


 今日は、ノアが初めて体験する剣術と馬術、騎馬戦術の授業だった。

 ノアは馬術は習ったことは無かったが、宿の仕事で市街地の農家まで仕入れに行く為に乗馬は身に付けた。

 馬の世話もしていたので馬の扱いには慣れていた。

 宿の賄の手伝いで重い酒樽や野菜を運んでいたので腕の筋力もついていた。

 また、小学生までは剣道も習っていた。

 剣の授業にはなんとか付いて行けそうだった。

 問題は騎馬戦だが、初日からそこまでは無理ということで馬術と剣術の練習だけとなった。

 馬術の練習は、White (ホワイト)Mage( マギ )White (ホワイト)Mage( マギ )クラス共にレベル別の授業となっていた。


 アイラとリリアーナは日頃の自主練の成果もあり、馬に乗っての障害馬術も上手くこなせるようになっていた。

 但し、剣術はもう一歩だった。


 休憩時間になりアイラとリリアーナが馬術場の隅で汗を拭きながら話していた。

「ノア君、馬術と剣術の初めての授業、どうだうね?」

「馬には乗れていたから大丈夫なんじゃないかな?」

「問題は、私達と同じく剣術かしら?」

 と、話しているとアンナが馬に騎乗したままふたりに近寄って来た。


「ふたりとも、ごきげんよう」

「アンナ先輩!」

「あ、ポリーちゃん!」

「あなた達が気にしていたら、ポリアンナ嬢を連れて来たわよ」


 アンナとポリアンナは同じHoly Mageクラスの上級レベル。

 リリアーナとアイラより上のレベルである。


「ポリーちゃんに、なかなか会えなくて言えなかったんだけど、ノア君がWhite Mageクラスに編入して来たの」

 と、アイラが言うと

「ええ、知っているわ。祖父さまから伺っていたので」

 と、あっけらかんと答えたので、アイラとリリアーナはずっこけた。


「なんだぁ~、早く伝えなきゃって焦っちゃったわ」

 とアイラが言うと

「え?なんで?」

 と、すっとぼけるポリアンナ。


 馬上で、そんな三人の様子を見ながら、クスクスと笑うアンナ。


 一方、ノアは初めて持つ本物の剣の重さに驚いていた。

 剣道の竹刀なんておもちゃである。

 これでも練習用の剣だとのことで、真剣はもっと重いのだそうだ。

 まずは、この練習用の剣を自由に使えなければならない。

 重い剣を振り、巻藁(まきわら)を試し切りして練習しなければなのたが、ノアはまだ素振りの段階だった。


 その様子を近くで見ていたクリスが近寄って来て声をかけた。

「ノア君」

「あ、クリス先輩。昨日はどうも」

「ノア君、剣を持つのは初めて?」

 地球で、剣道をやっていたと言うわけにも行かず

「棒のようなもので真似事はしたことあるんですが…」

 と、答えた。


「そうか。剣の重さに負けているから、そのままだと腕を痛めるよ?」

「確かに、もう腕がブルブルです」

 ノアは、剣を持っていた手から手を離し、震える手を見せて言った。


「君は、腕の筋肉はそれなりについてそうだけれど、力任せでは厳しいから、剣の重さを利用するようにしすると良いよ」

「ああ、だから重く出来ているんですね」

「そうそう。それと、物体操作の魔法を利用して出来るだけ自分腕に負担をかけないようにすると、長期戦にも耐えられるようになるから意識して練習して」

「物体操作の魔法ですか?」

「君は、物体操作の魔法は使える?」


 ノアは、魔導士クラスで何度か練習していたがまだ上手く使えなかった。

「はい。少しだけ」

「上手く組み合わせて練習してみて!じゃあ、次は騎馬戦術の練習なので」

 と、言ってクリスは、隣の騎馬練習場へ馬に乗って移動して行った。


 ノアは、剣術をしながらチラチラと騎馬練習場の方を見ていた。

 すると、クリスが真剣を片手に馬で障害物を超えて疾走する姿が見えた。


「クリス先輩、かっこいい~なぁ」

 と、ノアが、クリスの騎乗練習に見とれていると、馬に乗ったポリアンナが前を通過して行った。


「の~あ君!」

「あ!」

 ノアは、まだポリアンナの名前を呼んだことが無い。

 どうにも照れくさくて女の子の名前が呼べないのである。


「ごめん、手紙貰ったのに返信できなくて」

「いいのよ。こんなに早くWhite (ホワイト)Mage( マギ )クラスに編入できるなんて誰も思ってなかったものね?お祖父様から伺った時には驚いたわ」

「ああ、ブルーフォレスト先生から聞いたんだね」

「私はお祖父様と帝都のブルーフォレスト辺境伯邸から通っているので、寮のみんなと一緒に交流できないのよ」

 と、ポリアンナはちょっとシュンとしながら言った。


「俺、White Mageの他にHoly Mageがあることも知らなかったから、君が居なくて不思議だったんだ」

「私たちお互いの事をほとんど知らないものね?でも不思議なんだ。初めて会った気がしないのよね」

「俺も同じだ」

 と、ふたりで笑い合った。

 ただ、それだけなのにふたりの心は、温かくなっていた。


「これから、私も騎馬練習なの」

「辺境伯家の娘だから子供の頃から練習させられて来たので、これだけは得意なんだ」

「見ててね」

 と、言ってポリアンナは手を振り、馬に乗って騎馬練習場へ向った。


 クリスが練習を終えた後の障害コース。

 そのスタート位置でポリアンナの馬が停止すると、ポリアンナは腰の剣を抜き、片手で振り上げた。

 ポリアンナが両足で馬の腹を軽くて蹴って合図をすると、馬は勢いよく走り出した。

 ポリアンナを乗せた馬は、木のバーや土塁(どるい)生籬(どいけがき)竹柵(どちくさく)を飛び越えて大きく回り込みむ。

 続く、小さな池や木の茂み等の自然の障害もかわして疾走し、再び生籬(どいけがき)竹柵(どちくさく)障害。

 それらの障害を全て難なくこなし、一周回って戻って来た。


「す、すごい」

 馬と一体となって跳ぶポリアンナの美しさにみとれていた。

 ポリアンナは片手で馬を操作し、重い剣を一度も下に降ろすことなく最後まで駆け抜けていた。

「俺には、まだまだ無理だなぁ。これでは俺が守られそうだ」

 と、苦笑いしていた。


 午前の授業を終え、食堂で昼食をとり午後からは自習学習時間となる。

 ノアは、魔導士クラスに居た時は、図書館で、魔術書や魔導書、リゲル・ラナとスチュアートリア帝国の歴史書読むなど座学中心の勉強していた。

 だが、ここでは座学よりも実践学習が必要のように思えた。

 まだ、編入して二日目。

 何をどう勉強すれば良いか試案のしどころであった。


 そこへ、三人娘が揃ってやって来た。

「ノア君!午後の自習学習時間は、一緒に勉強しよう!」

 と、アイラが言った。


 一緒に勉強と言っても、まだノアは何を勉強すべきか悩んでいるところだった。

 何しろ、まだ授業らしい授業を2日しか受けていない。

 今日は、剣の重さに腕が負け、今もフォークを持つ手がプルプルしているくらいだ。


 するとポリアンナが言った。

「ノア君、私の騎馬障害どうだった?」

「ああ、凄かった!馬と一体になってて綺麗だった」


 ノアは、騎馬姿が絵のように美しかったと素直に感動して言ったのだが、女の子たちはちょっと勘違いして

「きゃ~」と、言った。

 ポリアンナは、恥ずかしそうに赤くなった顔を両手で隠していた。


 ノアは、「なんか俺、おかしな事を言ったかな?」と、あたふたしながら言った。

「いや、片手で馬を操りながら、重い剣を片手で振り上げたまま障害物を超えていくなんて、女の子には大変そうなのに全くブレずに最後まで綺麗にこなしてたから、本当に感動したんだよ」

 と、ノアは素直な感想を述べた。


「そうでしょう?ポリーちゃんは、ブルーフォレスト先生のお孫さんだからね。帝国神聖大学に入学した当初から、剣術と騎馬の腕前は騎士並だったのよ」

 と、リリアーナが言うとポリアンナは顔を隠していた手を下げて言った

「ありがとうアイラちゃん。でもお兄様には、いつも、まだまだだなって言われてるわ」

 と、悔しそうに言うポリアンナに対して

「えっ?オスカー様が?オスカー様は優秀なHoly Mage騎士ですもんね。身内―の評価には厳しいのかもしれないわね?」

 と、アイラもちょっとだけ赤い顔で言った。


「ん?アイラちゃん?」

 と、聞くポリアンナに対して、アイラは慌てて

「いやいや、ポリーちゃんの騎馬は美しいことには間違いないからね。今日も私達にも教えてちょうだい」

 と、言った。


 横で、鈍感なリリアーナとノアは、ぽかんとしていた。


 四人は、昼食を終えて学食から出た。

 ちょうどそこへ、使徒(しと)のマエルとノエルを連れたクリストファーとアンナが歩いて来た。

「アンナ先輩!クリス先輩!」

「マエルちゃん、ノエルちゃんも」

 と、三人娘が駆け寄ると

「こんにちわー」

 と、黒猫のノエルと茶白猫のマエルが、可愛らしくお辞儀をした。


 その様子を三人の後ろで見ていたノアが

「えっ?猫がしゃべった?」

 と、驚きながら見ていた。

 ノアの身長はリゲル・ラナ星転移当初よりかなり伸び、高身長になっていた。


 クリスがノアに気づいて声をかけた。

「ノア君にもに紹介するよ、俺の使徒(しと)のマエルだ」

 マエルは、ノアの足元に駆け寄ると、ちょこんと座ってペコリとお辞儀をした。


「さっき、君、人間の言葉を話した?」

 と、ノアがマエルに尋ねた。


 マエルは、後ろから来た主人のクリスを振り返って見た。

「ノアには、マエルの声が聞こえたんだね?」

 と、クリスがノアに聞いた。


「ええ、さっき、猫が人間の言葉を話したように聞こえました」

「それは、君も動物の言葉がわかるってことだよ」

「えっ?」

 と、ノアが驚いて居るとノアの足元に座っているマエルが

「はじめまして、ボク、クリストファー様の使徒(しと)のマエルです。よろしくお願いします」

 と、言って、もう一度びょこんと頭を下げた。


「ああ、よろしくマエルくん」

 と、ノアが戸惑いながら応じると、アンナとノエルもやって来て

「ボク。アンナ様の使徒のノエルです。宜しくお願いします」

 と、ノエルも頭を下げた。


「ノエルくんも、よろしくね」

ノアは、しゃがんでノエルとマエルの頭を撫でながら言った。


「マエルもノエルも、頭の中に直接話しかけることで人間に自分たちの意思を伝えることも出来るんだが、君は動物の言葉がわかるみたいだから、その必要は無いね」

 と、クリスが説明した。


「僕に動物の言葉が?」

と、戸惑うノアだったが、

「そうじゃなければ、ノエルたちの言葉はにゃ~としか聞こえないはずよ?」

 と、アンナが言った。


「使徒とは、魔導士でいう使い魔のことですよね?」

 と、ノアが尋ねるとポリアンナが

「この前、私の手紙を届けさせたのは、私の使徒の(ドラゴン)のクロエよ」

 と、言った。


「そうだったんだね。急に(ドラゴン)が来たので驚いたけど、寮に棘竜(スパインドラゴン)便ってのがあるのは聞いていたから、それかな?と思っていたよ」

 と、言うノアに対してアンナが使徒について説明した。


「やはり、使徒も神聖力(ホーリーパワー)に関連するんですね。凄いなぁ。僕には神聖力(ホーリーパワー)は、ほとんどなさそうだから使徒なんて使えなそうですね」

 と、ノアが悲しそうに言うとアイラとリリアーナがノアに近寄って言った。


「そんなことないよ?私たちもWhite (ホワイト)Mage( マギ )クラスだけれど、使徒を使えるように練習しているの」

「ちょっとは進歩して来た気がするんだよね?アイラちゃん!」

「うん!ふくろうなんだけどね。今度ノア君にも紹介するね」

 と、ふたりは自慢げに言った。


「あら、ライナスとロザリーも使徒訓練始めたのね?」

 と、アンナが言った。


「はい。まだ『使い魔』訓練ですけど、アグネス先生が私たち次第で、見込みあるっておっしゃってくれています」

「じゃあ、今度一緒に訓練練習しましょう」

「はい」

 女子たちがキャビキャビと話している横で、クリスがノアに言った。


「ノア、腕が笑っちゃっているな?」

「はい、今日の剣の練習だけで、もう筋肉痛です」

「初めは仕方が無いが、物体操作の練習を並行してした方がいい。これから練習してみるかい?」

「えっ、いいんですか先輩?」

「もちろん!」

「嬉しいです」

「じゃあ、先生に結界を張って貰って森で練習しよう。森へ行くのに馬を連れて来る」

 と、言ってクリスは厩舎に向かって行った。

 その後を使徒のマエルが弾むように走ってついて行く。

「俺も行きます」

 と、さらにその後からノアが付いて行った。


 その場に残された女子たちは、

「あら?」と、言う顔をしていた。

「まずは男同士仲良くするのが一番ね」

と、アンナが言うと、3人娘もアンナに同意し男子ふたりの背中を見送っていた。


「じゃあ、私達で使徒の訓練でもしましょうか?」

 と、アンナが言うと

「わーい、ロザリーとライナスを連れて来ますね」

 と、リリアーナとアイラが、寮に二匹を連れに戻った。


 残されたポリアンナにアンナがそっと言った。

「ポリアンナ嬢、身の危険が迫っていたりするの?」

「えっ?」


驚くポリアンナにアンナは、声をひそめて言った。

「この前のレイマーシャロル地区での事件は、辺境伯の娘を狙ったものでは?と言われているらしいし、先日もノア君に助けられたとか」

「実は、私達もルートドリアナ地区で、怪しい噂を耳にしたので護衛騎士の方に報告したの。なんだか、帝都で怪しい黒魔術師達の動きが迫っている気がして」

「何か不安なことがあったら。いつでも相談してね?」

と、言うアンナの言葉に、ポリアンナは、ちょっと驚きつつもその気遣いを嬉しく思った。


「ありがとうございます。辺境伯家は、先祖代々隣国の領地を治めてきてますから危険とは隣り合わせなんです。覚悟はできていますが、やはり家族以外で話を聞いて貰える人が居るのは心強いです」


「とはいえ、何もしてあげられないんだけれどね。恋愛相談ならいつでも応じるわよ」

 と、アンナがウィンクした。

「えっ?」

と、ポリアンナがアンナの不意打ちにうろたせえていると

「まずは、名前で呼んでもらわないとね~。どうやら、純情少年みたいなので、女の子の名前を呼ぶのも恥ずかしいのかも?」

 と、アンナが真面目な顔で言った。


「そういえば、名前で呼んで貰ったこと無いかも?」

「でしょう?」

「アンナ先輩は、いつからクリス先輩と名前で呼び合っているんですか?」

「う~ん?いつからだろう?でも、わりと最初からかも?」

「私、クリス先輩とアンナ先輩の関係に憧れています」

「えっ?そう?私たちは男女に関係なく、親友で同士でいようって約束しているの」

「いいなぁ。そんな関係憧れます」

「あなたも頑張って!応援しているわ!」

「はい」

 ポリアンナはちょっと照れながらも笑顔でアンナに返事をした。


 まもなく、アイラとリリアーナがライナスとロザリーを連れて戻ったので、4人で、練習場へ移動した。


 一方、森へ移動したクリスとノアは、簡単な物体を動かす練習をしていた。

「白魔術は使える?ノア」

「えっと、炎の魔法は使えるんですが、これって黒魔術ですか?」


「えっ?どうして?」

と、クリスはノアの質問を不可思議に感じていた。


「実は、この魔法は大学に入る前に知り合いの魔術師に教わったんです。その時は、魔術に白と黒があるなんて知らなくって」

 クリスは、ノアの魔法に迷いがある気がしていたが「原因はこれか」と思った。


「ちょっと、そこの枯れ葉に火をつけてみて」

 ノアは、クリスに言われるまま、詠唱を唱えて火をつけた。


「次は、消してみて!」

「えっ?」

 と、ノアはクリスの言葉に焦った。

 そういえば、火をつける事はできても消すことは出来なかった。


 クリスは火を消しながら言った。

「本来魔法には、黒も白も無いんだよ。ダークエナジーを使うのが黒魔術でライトエナジーを使うのが白魔術と言われているけれど、それはダークエナジーを使う魔法は攻撃性が強いからで、それは使う者の使い方次第なんだ」


「僕が使った魔法は、どっちなんですか?」

「どっちだろうね?君が攻撃に使おうとしたら黒魔術になるし、人に役立つ事に使えば白魔術になる」

「そういうものなんですか?」

と、腑に落ちない顔をしているノアにクリスは言った。

「ただね。火を点けたら消すまでをセットで覚えないと駄目だよ?」


「例えばね…」

 と、言ってクリスは、少し離れた射的練習場に向けて人差し指を向けた。

 そこには、木の切り株を輪切りにした的が幾つも置いてあった。

 すると、クリスの指先からオレンジ色の光線が一直線に伸びて、ひとつの的のど真ん中を打ち抜いた。


「こういう攻撃の魔法は、敵打ち抜いて倒したら目標達成だ。でも、これだと黒魔術と同じだろ?」

「でもね…」

 と、言うと再度クリスが人差し指を的に向けた。

 今度は、その先からオレンジ色の光が輪を描いて先程の的に伸びて行った。

 そして、さっき貫かれた的を包んだと思ったら、元の打ち抜かれる前の的に戻っていた。

「我々の魔法は、元に戻す事とワンセットなんだよ」


 ノアは、呆気にとられていた。

 クリスの魔法には詠唱も魔法の杖も存在しない。

「僕たちHoly(ホーリー) Mage( マギ )の力は、魔法ではなく神聖力(ホーリーパワー)を使っているから詠唱は必要ない。でも、魔法と併せて使うことで最大の効果を得ることが出来る。だから両方の勉強をしているんだ」


 ノアは、驚いて言葉を失っていたが、気を取り直して言った。

「わかりました。僕も火を消す魔法も覚えれば白魔術をマスターしたと言えるんですね?」

「そう。攻撃性のある魔法は、その反対も必ずセットで覚えよう」

「はい。なんか、先輩のおかげで迷いが吹っ切れた気がします」

「そうか、それは良かった。迷いが消えると上達も早くなると思うよ」


 そんなふたりのやり取りを、遠くから見守っていた人がいた。

 トゥルリー先生だった。

 この森に結界を張ってくれいたのだ。


「クリス、お前もなかなか良い指導者だな。そのうち大学の講師にでもなるか?」

 と、言いながらふたりに近づいて来た。


 クリスは、トゥルリー先生の存在には気づいてたのだが、先生の言葉に照れて言った。

「いやですよ先生。見ておられたんですか?」

「僕は、まず立派なHoly Mageの帝国軍騎士になって帝国の為に働きます」

「まぁ、先生くらいのお歳になったら講師も良いですけれどね」

と、クリスは照れ隠しに軽口を添えて答えた


「クリス、良い心掛けだが、俺の歳の話は余計だぞ?」

 と、トゥルリー先生は笑った。


 一方、トゥルリー先生の存在に気づいてなかったノアは驚いていた。

「先生、なぜここに?」

「なぜって、お前の為に森に結界を張りに来たんだよ」

 と、トゥルリー先生が言うとノアはさらに驚いていた。


「僕の為にですか?」

「俺がトゥルリー先生に頼んだんだよ。結界が張ってあった方が、他の魔力の影響を受けにくいから練習しやすいしね?」

「それもあるが、お前の気配を黒魔術師やBlack(ブラック) Mage( マギ )達に気取られない為もある」

「ああ…」

 ノアの魔法が黒魔術であるなら、魔法を盛大に使った時点で気取られる可能性があるのだろう。

「すみません、トゥルリー先生ありがとうございます」

 と、ノアが言った。


 トゥルリー先生は、クリスと目を見合わせてから言った。

「ノア、良い機会だから話しておく。ここなら誰にも聞かれる心配は無いからな」

「お前が、黒魔術師の元から逃げて来たことも、異なる星から来たこともクリスとキースには伝えてある」

Holy(ホーリー) Mage( マギ )は、この国の中枢を担う人材だ

「キースは、間もなく卒業してHoly Mageとして帝国軍騎士となるだろう。クリスは、次の寮長候補だ」

「だから、ふたりには全てを伝えてあるので、安心しろ」


 ノアは、トゥルリー先生に相談したかったことの答えを先に貰えて、安堵すると同時に優しい先輩たちにも感謝した。


「だから、安心してなんでも相談してくれたまえ」

 と、クリスも笑顔で言った。


「アランからも君を守るように言われているが、やはり私だけでは限界があるだろうから、クリスやキースを頼りなさい」

というトゥルリー先生の言葉を聞きながら、ノアはトゥルリー先生とレッドリオン公爵にも感謝だなと思っていた。


 地球では、闇バイトに巻き込まれ誰に頼って良いかもわからず、ただ逃げまどっていた自分。

そんな自分を、異星人にも関わらず、みんながこうして守ろうとしてくれている。

 それが不思議でもあり、有難くもあり、嬉しくてならなかった。


 そして、「誰かに守られること、守るっということ」は、こういうことなのかとも思っていた。



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