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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』 =Mageと呼ばれる者たちの苦悩= リゲル歴4045年

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「魔の森」と「時の扉」


 天候が回復し、ブルーフォレス城で休養させて貰っていた、アラン達と共に派遣された帝都軍帝都第5騎士団所属小隊一行の体力も回復していた。

 アランは、騎士団を連れてブルーフォレスト辺境伯と共に「魔の森」へ偵察に行くことにした。


 ブルーフォレスト辺境伯領の西には広大な森林地帯がある。

 かつては、恐ろしい竜の住む森として恐れられていたが、今はその竜たちはブルーフォレスト家の守り神とも呼ばれる存在となっている。

 竜は通常でも長寿な生き物であるが、ブルーフォレスト辺境伯家の者の使徒となったドラゴンは、その寿命がさらに延び、何代もの辺境伯に仕えているものも存在する。

 その森は、火山の活動により創り出された深い森で、その奥には幾つもの底知れぬ沼や洞窟が存在し、その中には地下に続くものもあるという。

 また、貴重な資源の宝庫でもあり、隣国と接する辺境領として重要な地域であるだけなく帝国にとっても大切な場所であった。

 そんな大切な地域を託されているプルーフォレスト辺境伯家は、皇帝からの信任がどれほど厚い一族であるかが理解できる。


 そんな資源と(ドラゴン)の森を抜け、南西に向ったエド・ロア王国とブロッサン国の国境に近い場所に「魔の森」と呼ばれている場所がある。

 そこは、周りの森林よりもさらに深い森で、昼なお暗い森となっていた。

 魔力の強い地なので、弱い魔力を持つ魔物も存在するが、人畜無害なものばかりなので心配は無い。

 が、しかし、深い森に生息する魔物については、あまりよく知られていないものも多い。

 この森には、国境を接するエド・ロアやブロッサン側から入ることも出来る。

 しかし、一度その地に踏み入れると、方向感覚を失い、森から出られなくなる魔界とも呼ばれており、自ら進んで足を踏み入れる者はいなかった。

 今、そんな恐怖の森へ足を踏み入れようとしているアラン達であった。


「ここからは、馬を置いて我々だけで行こう」

 アランは、馬を降りて言った。

 木々が生い茂り、光を遮っている昼なお暗いその森へは、訓練されているHoly(ホーリー) Mage( マギ )たちの馬たちですら、怯えていたからである。


 そして、一行はどんどん森の奥へ踏み入って行った。

 通り過ぎる風は生ぬるく、視界はどんどん暗くなっていく。

 アラン達Holy(ホーリー) Mage( マギ )は、自ら指先に光を灯して周囲を明るく照らしていたが、その光で見える範囲は限られており、遥か遠くにあるものは見えなかった。

 その時、一行は何か異様な気配を感じとっていた。


「気をつけろ!!何かいる!」

 アランがいち早く、その気配を感じ取り部下たちに警告した。

「魔物か?」


 ブルーフォレスト伯とオスカーは、それぞれ懐の使徒の(ドラゴン)を手に乗せた。

 コルトンとクレイヴの二匹のドラゴンは、手のひらサイズのままそのレーザーのような目で遥か先を照らし出した。


 そこには、深く暗い黒い水を湛えた沼があった。

 ボコボコと沼の底から湧き上がる泡が、まるで煮えたぎった湯のようにも見えた。

「異様な気配は、この沼からなのか?」

 と、一同が驚いていると突然後ろから何かが襲いかかってくる気配がした。


 暗闇に金色に光るふたつの光が、生温かく異様な悪臭を放つ息と共にアランを襲った。

 アランは暗闇の中、聖剣を抜いた。

 それと同時に自らの神聖力(ホーリーパワー)を注ぎ込み、襲い掛かった来た陰に切りつけた。

 アランの聖剣がまとう光に照らし出されたその影の正体は、大きな狼のような魔物であった。

 普通の魔物であれば、人間を襲って来ることはまずない。

 しかし、アランの剣をギリギリですり抜けた魔物は、周囲に異様な魔力を放ち再び襲いかかろうとしていた。

「こいつらは、普通の魔のではない。皆ぬかるな!!」

「はい!!」

 アランが連れて来た小隊の騎士の中には、White (ホワイト)Mage( マギ )の者もおり、彼らも自らの魔術を使い、暗闇の中での闘いに戸惑いながら襲い掛かかる魔物と闘った。


 オスカーは、自分の使徒のクレイヴを放った。

 若いながらもHoly(ホーリー) Mage( マギ )のオスカーは、自らの聖剣に神聖力(ホーリーパワー)を注ぎ、青いオーブカラーをまとった剣で魔物と闘った。


 放たれたドラゴン達は、本来の大きさに戻り魔物たちに向かって口から火を噴いた。

 その火に焼かれて地面に落ちた魔物たちは、枯草の上でのたうち回りその火が燃え移って行った。

 炎はあっというまに辺りの木々にも燃え広がり、次第にあたりがその炎の光で明るくなっていた。

 炎の中で見えて来たのは、数十匹の魔物たちであった。


 若いオスカーは、

「こんな生き物は初めて見る」と驚き、

 オスカーの父であるブルーフォレスト辺境伯も

「まさか自領地にこんな化け物が生息していたとは!」

 と、驚いていた。


 アランは、炎の中で見えて来た魔物の姿を目にして、ハッと思った。

「辺境伯!父上たちが闘った『赤い荒野の魔物』を思い出しませんか?


 次々と襲い掛かって来る魔物たちを相手にしながら辺境伯も答えた。

「はい!私も思いました」

「このものたちには、Black(ブラック) Mage( マギ )の呪いがかかっているのかもしれません」


 アランは、自分が倒した足元に倒れている魔物に対して解呪術を試みた。

 すると、魔物を覆っていた黒い霧が消え狼の姿に戻っていた。

「やはりな」

 と、アランとプルーフォレスト辺境伯は顔を見合せた。


 そして、アランは、飛び掛かって来る魔物を払いながら

「俺たちが奴らを倒すから、解呪術を使える者は倒れた魔物に解呪を施してみてくれ!」

 と、言った。

 どれだけの数の魔物を倒しただろうか?

 周囲の高くそびえ茂っていた木々も燃え尽き、空が見えるようになって、森にも光が差し込む状態になっていた。

 アラン達が倒し、White (ホワイト)Mage( マギ )や魔導士たちが解呪した魔物たち全てが、狼の姿に戻っていた。

 その周りでは、引火した周りの木々の炎を竜たちが水を吐いて消し止めていた。

 また、それより先では、さらに炎が燃え広がりそうな木々を別の魔導士たちが魔法で切り倒していた。


 ある程度落ち着いたところで辺りを見回すと、手傷を負った騎士が数名いたが深手を負った者はいなかた。

 一方、解呪され魔物から狼に戻ったものの多くは、傷ついて瀕死で倒れていた。


 アランの部隊にはヒーリング能力に長けている者もいたが、とても手が足りなかった。

「ポリアンナを連れて来ましょう」

 と、プルーフォレスト辺境伯は娘を迎えにクレイヴを城へ向かわせた。


「我々は人間の手当てをしましょう。その間にポリアンナが来るでしょうから、狼たちの手当ては娘にさせます」

 アランとオスカー、辺境と部下のWhite (ホワイト)Mage( マギ )で仲間の手当てをした。


 部下の手当てをしながら、辺境伯がアランに尋ねた。

「アラン様、これはやはりBlack(ブラック) Mage( マギ )の仕業で間違いないでしょうな?」

「ああ、こんな事をするのは、Black Mageしかいないだろう」

「しかし、目的がわからん」

「『赤い荒野の闘い』の時と同じで、魔物を操っていずれは、国をのっとる気なのでしょうか?」

「『赤い荒野の闘い』から450年以上。当時のBlack Mageは誰も生きてはいないはず。新たな者の策略だろうが、悪い人間の考えることは同じだからな」

「全く、性懲りも無くブロッサンがまたエド・ロアを狙って企てたのでしょうか?」「マニ・トバールか…パドラルって可能性もあるが、場所的にはブロッサンが関わっていると考えるのが妥当だろう」

「しかし、『赤い荒野』の魔物にかけられた術よりは稚拙ですな」

「そうだな。父とアイザックから聞いたところによると、『赤い魔物』にかけられた呪いは、かなり時間をかけた強力な術であったようだ。だが、今回の呪術は解呪も容易だったところからすると、それよりはかなり簡略化された術のようだ」


 目の前で黒い水を湛えていた不気味な沼は、森に陽が差し込むようになっても黒い水を湛えたまま淀んでいた。

「おかげで辺りが見やすくなったが、この沼の水の黒さは変わらないな」

 と、アランが言った。


「『時の扉』とは、まだこの奥にあるのでしょうか?」

 と、オスカーが尋ねた時に、偵察に行っていたアランの使徒のルークが戻って来た。


 ルークは、鷹から人間の姿になるとアランに片膝をついて報告をした。

「ここから先、しばらく行くと岩山になっており、その先はもうブロッサン国です。南に行くとエド・ロアですが、国境付近に川が流れておりますので、そこから先には進めません」


 ルークの報告を聞いたアランは

「そうか、『時の扉」がどんなものなのかは俺にもわからんが、ウィリアム殿下の予知は、ブロッサン国の付近での不穏な動きということだった。それは、この魔物たちのことだったのかもしれんな』

 と、言ってしばらく考えていたが

「今日は、ここで戻るとしよう。どう思う?ブルーフォレスト辺境伯」

 と、この地の領主であるブルーフォレスト辺境伯に尋ねた。

 辺境伯もアランの意見に同意した。


「『時の扉』は、伝説ですし、ウィリアム殿下の予知は、『不穏な動き』ということでしたから、今回は魔物を討伐できたので善しだと思います。私も領主として、引き続き警戒致しますので」

 と、話してるところにクレイヴの背に乗ったポリアンナが到着した。


「お父様!!」

 ポリアンナは、真っ暗だった森の一部がすっぽりと開けた空から、クレイヴと共に舞い降りるとその背から降りて焦げた大地に立った。

 足元に転がっている死んだような狼たちを見て、「まぁ!」というように両手を口に当てた。

「これは、どういうことですか?」

 と驚いたように父のブルーフォレスト辺境伯に尋ねた。


 娘の問いに父の辺境が答えた。

「このものたちは、Black(ブラック) Mage( マギ )の呪いによって魔物にされていたらしい。途中で気づいたが次々と襲い掛かって来るので倒した。まだ、みな息はある」

 辺境伯がそう娘に説明すると、アランが付け加えていた。

「このもの達に罪は無い。あなたの力で傷を癒して森に返してあげたい。お願いできるかな?ポリアンナ穣」


 ふたりの説明を聞いて状況を理解したポリアンナは、魔物から戻って倒れている狼たちをそのヒーリング能力で次々と癒して行った。


 傷が癒えた狼たちは、こそこそと森の中へと消えて行った。


 全ての狼が森の中へ去って行ったので、アラン達一行もこの森を後にすることになった。

『魔の森』と呼ばれているだけあって、あの森には魔力が満ちているように感じた。

 しかし、だからといってあの森が危険だというのもおかしい。

 やはり、Black(ブラック) Mage( マギ )が何らかの策略をしているのだろうか?

 アランは、不安要素を完全に払しょくする事が出来ないままブルーフォレスト城に戻った。


 一団は、数日、プルーフォレスト城で静養した後に帝都への帰路についた。


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