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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『光と影の闘い』=聖なる白と闇の黒= リゲル歴4046年

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「オセロ作戦」第四局中盤 = 若きHoly Mageたちのゴザガント=

 

 オスカーとキースは、ゴザガント部族長の屋敷に戻って、エイディオス卿に自分たち確認して来たことを伝えた。


「そうですか。ササン以外は無事でしたか。いくら黒魔術の呪いの魔法によって懐柔されていてもやはりミードス族長ですね。意識の底で抵抗されていたのでしょう。元々、ゴザガント部族は勇敢で情に厚い部族なのです。だから、他の部族を守る為にも自分たちの体を張ってハバドやジラクスのように領土拡大を狙っている部族からの侵略を防いでいたのです」

 と、エイディオス卿は誇らしげに語った。


 その横には、あのミードス部族長の長女のササラが立っていた。

 こちらも、エイディオス卿の言葉を聞いて誇らしそうに見えた。

 オスカーとキースは、そんな誇り高きゴザガントの部族をパドリアヌスの手から奪取出来て、つくづく良かったと思っていた。


 そして、一時も早く他の部落の者の解呪を急がねばと思っているオスカーが言った。

「ハバドに近い部落に関しては、空からの接近はパドリアヌス達に見つかる可能性も考えてやめておきました。後の部落については、先程お話した通りです。これから、エイディオス卿とササラさんと共に回って解呪しようかと思っています」


 そこに一羽の鳩が窓から入って来た。


 そして、キースの肩に止まると、キースはその鳩を見て頷き

「クリスとアンナが到着したようです」

 と、ふたりの到着を伝えた。


 四人は、クリストファーとアンナを迎えるべく屋敷の外に出て空を見上げた。

 よく晴れたゴザガントの空、南東の方角に二つの黒い点のようなものを確認することができた。

 その黒い点のようなものが、こちらに向かってぐんぐん近づいて来て、それが二匹の竜の姿とわかる大きさになった。

 そして、屋敷の竜たちは真上に来ると旋回しながら徐々に降下して来た。

 オスカーが手を上げて、ここに降りて良いと合図をすると、クリストファーとアンナを乗せた二匹の竜は、オスカー達の居る族長の屋敷の庭に降りて来た。


「やあ、よく来たね、おふたりさん」

 と、キースがふたりに声をかけた。


 ふたりは、竜の背から降りると周囲を見回して、そこに居るメンバーを確認して言った。

「お役に立つべく参りました。未熟なふたりですが、よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げるふたりをオスカーが、エイディオス卿とササラに紹介した。

「まだ若いふたりですが、黒魔術の呪いの解呪の手伝いに来て貰いました」


 続いて帝国神聖魔術士養成大学の寮長だったキースが

「こぢらが、クリストファー・アキュラ・オレンジリバー、そしてこちらがアンナ・ニーナ・ロゼ・ローズマリーです」

 と、ふたりの名前を紹介すると、ふたりは順番に

「はじめまして、クリスと呼んで下さい」

「はじめまして、アンナと呼んで下さい」

 と、言って再びお辞儀をした。


 エイディオスは、現地に派遣された帝国のWhite Mageの諜報部員なので、族長の娘のササラの前では帝国の騎士であることを明らかすることは出来なかった。

 そんな事情をクリストファーとアンナは知っているのでエイディオス卿に対しても現地の人として接した。


「突然、空からお邪魔して申し訳ありません。えっと…」

 と、クリストファーがエイディオス卿に手を差し伸べると、エイディオス卿は

「エイディオスと申します。こちらはゴザガントの族長の娘さんでササラさんです。僕は、こちらの族長のお屋敷でお世話になってる流れ者です」

 と、自己紹介しながらクリストファーの手を取って、しっかり握った。


 クリストファーはエイディオス卿の手を握りながら、精神感応術(テレパシー)で話しかけてみた。

 Holy(ホーリー) Mage( マギ )同士ならば精神感応術(テレパシー)で頭の中で会話が出来るが、神聖力(ホーリーパワー)次第でHoly Mageでも使える者がいる。

 しかし、エイディオス卿には伝わらないようだった。


 エイディオス卿の隣に居たササラが挨拶をしながら言った。

「はじめまして、ササラです。我々ゴザガント族の為にありがとうございます。スチュアートリア帝国の人たちは、どうしてそこまで我々の為にしてくれるのですか?」


 すると、オスカーがササラに向き合って言った。

「我々スチュアートリア帝国は、二度とパドラルがBlack Mageに狙われない国にするために、パドラルが統一されたひとつの国になることを願っています。パドラルが統一され豊かで平和な国になることは、隣国である我々帝国の為でもあります。そして統一された暁には、帝国と和平を結び交易をすることで豊かな国になって欲しいのです」


 ゴザガントの族長の娘であるササラも父のミードスと同じく自分の部族に誇りを持っており、部族の平和を願って戦士としても闘っている。

 彼女は、オスカーの話を聞いているうちにみるみる目が輝き、そこに希望を見出していた。

 竜を乗りこなし、呪いを解いてくれる彼らなら、そんな夢のようなことを実現してくれるかもしれない。

 そして、ササラは思わず言った。

「まるでケチャの救世主メメャンバみたいですね」


 その言葉を聞いて、クリストファーが言った。

「メメチャンバを御存じなんですね?まもなく、そのメメチャンバがここに来ると思いますよ?」


 アンナとクリストファーも、パドラルのケチャ教と、メメチャンバ伝説にについて聞きいてから、すぐにジャンバラン砦にある資料を読み込んで勉強していた。

 そして、それが単なる伝説ではなく、昔パドラルに居た予知能力のあるHoly Mageの予知なのではないかという予測にも賛同していた。


「えっ?あの伝説のメメチャンバがですか?」

 ササラは、驚いて聞き返した。


「はい、あのメメチャンバがまもなく来られます。だから、彼らを信じて我々と共に平和で豊かなひとつのパドラル国を目指して頑張りましょう」

 と、アンナがササラの手をとって言った。


 アンナは、ここでは女性は自分しかいなかったので、ちょっとでしゃばった行為かと思いつつも、ついササラの手をとって力説してしまっていた。

 それを見ていた、オスカー、キース、クリストファー、エイディオス卿の四人の男は、

「よくぞ、言った!」と、思っていた。


 ササラも、アンナの熱い思いに触れて思わず「はい!」と、答えてアンナの両手を握り締めていた。


 実際ササラは、日頃から戦の絶えないパドラルを憂いていた。

 また、戦に明け暮れているせいで、貧困に陥る村があることも知っていた。

 幸いゴザガンドは、領地も広く海に面しており、北はケアニスクス山脈、西にはディカヤクト山脈が聳えているおかげで、水にも肥えた大地にも恵まれていた。

 それゆえに、周囲の貧しい部族を気遣い、時には支援を行うこともあった。


「まずは、ゴザガント内の部落から解呪をして回りたいと思います。ササラさんと、エイディオスさんがいれば部落にすんなり入れますか?」

 と、オスカーがササラとエイディオスに尋ねた。


「あ、私ローディ・エイディオスと言いますので、ローディと呼んで下さい。今さらですみません」

 と、エイディオス卿が言った。


 オスカーは、エイディオス卿がそう照れながら言うのを聞いて、心の中で

「エイディオス卿の名前はローディだったか、なんだか急に可愛く思えるな」と、思い、笑いたくなるのを抑えながら言った。

「では、ローディとササラさんに案内して貰えば部落には入れますか?」


 オスカーの質問にササラも自分の疑問を問い返して言った。

「はい。でも、せっかく五人も解呪できる方がいるのに二手に分かれるだけでは時間がかかってしまいますね。ひとりひとり、私達の時のように呪いを解く魔法をかけて行くのでしょう?」


「あまりにも大きい部落でなければ、部落の真ん中で魔草薬(ハーブ)を焚き、それを我々の魔法で部落全体に広げる方法なら時間はかかりません」


 と、オスカーが答えるのを聞いて内心焦ったのはクリストファーとアンナだった。

 ふたりは、大学でそんな方法は習ったことが無かったので戸惑っていた。

 すると、オスカーから精神感応術(テレパシー)

魔草薬(ハーブ)を使うのはカムフラージュだ。まずは、部落全体に結界を張って、外からのダークエナジーが入り込むのを遮断し、我々の神聖力(Holy Power)を合わせて部落全体に送ってダークエナジーを断ち切る。強力な呪いでなければ、それで解呪できる」

 と、言う声がふたりの頭の中で聞こえて来た。


 それを聞いて安心したふたりは、

「はい。わかりました」 と、テレパシーで答えた。


 そこで、ササラ、アンナ、オスカー組と、キース、クリス、エイディオス卿もといローディ組のふた組に分かれることにした。

 そして、各組とも、それぞれの部落の者に警戒されないように、竜は使わず馬で回ることにした。

 竜達は、オスカーの使徒のクレイヴが、人目につかない場所へ連れて行って待機させていた。


 六人は、半日かけて全ての部落を回って部落の人の解呪をした。

 ほとんどの者の呪いは、それほど強いものではなくオスカーの言ったやり方で、ほとんどの者の呪いは解けた。

 だが、部落長のような役職がある者の中には、強い呪いをかけられている者がおり、そうした者には直接解呪の魔法を使った。


 彼らが、各部落を回って解呪をしていた頃、アランとトゥルリーを乗せた竜がゴザガント上空に近づいていた。

 アランは、ゴザガント部落長に面会する前に状況を把握するため、一足早く使徒(しと)のルークをオスカーの元へ飛ばした。

 ルークは鷲なので、通常の竜より早く飛ぶことが出来るが、アランの神聖力(Holy Power)と同期された使徒なので、加速の能力が有り、さらに早く飛ぶことが可能だった。


 オスカー達の組が最後の部落に到着し、全員が馬から降り立ったタイミングで、大きな鷲がオスカーの元に飛んで来た。


「アラン様の使徒のルーク?」


 ルークは、鷲の姿のままオスカーの肩に止まって言った。

「はい、ルークでございます。アラン様、トゥルリー様がゴザガント族長の部落前に到着されました」


「ついに来られましたか」

 と、言ってオスカーはササラの方を見て言った。


「メメチャンバ様たちが、族長の元に参られたようです。我々が戻るまでお待ち頂きますか?それとも直接族長にお会いになられても大丈夫そうですか?」


 そう、オスカーに問われてササラは言った。

「父もケチャのメメチャンバの伝説は知っておりますが、信じているかはわかりません。私が戻るまで待ってい頂いた方が良いかもしれません」


 すると、ルークは人間の青年の姿になり、ササラの足元に跪いて言った。

「かしこまりました。そのように主人にお伝えいたします」

 ルークは、それだけを言うと再び鷲の姿に戻って飛び去って行った。


 驚くササラにオスカーは、

「メメチャンバの使いの者です」

 と、言った。


 ササラは「メメャンバの使いは鷲なのね」と、なぜか納得していた。

 メメチャンバの伝説では、メメチヤンバが火を吹く竜に乗って飛来するとあるが、既に何度も竜を見ているので、それに驚きはしなかった。

 だが、メメチヤンバの使いが人間の若者に化身できる鷲だということは、伝説には無かったので驚いたのである。

 だが、逆に「神の使い」らしいなとササラの中では納得出来たのである。


 ササラ、アンナ、オスカー組は、最後の部落で解呪を終えると急いで族長の部落に戻った。

 アンナは「学生の身分でキースに着いて来てしまったけれど、大学内だけでは学べない良い経験が出来た」と、思っていた。

 黒魔術の呪いの解呪ひとつにしても、状況によってやり方を工夫しなければならない。

 Holy Mageと神聖力(Holy Power)は、帝国の最高機密なので、一般の人には絶対に知られてはならない。

 それだけに普通の白魔術師として振舞わなければならないので工夫が必要なのだ。

 それを、さらりとやってのけるオスカーにも感心していた。


「そういえば…、レイマーシャロル地区のマルシェで瀕死の怪我人を助ける時も、妹のポリアンナ嬢がヒーリング魔法で治療している時も、それを周囲にけどられないようにと、私も協力したっけ」

 と、レイマーシャロル地区での出来事を思い出していた。

 なぜか、もう大昔のことのようにすら思える。

 あの頃に比べると自分も、ちょっとは成長したなと思っていた。

 そして、「騎竜訓練も、諦めず食らいついておいて良かった」と、思っていた。


 そんな負けず嫌いのアンナは、女戦士として部族をまとめているササラに共感を持っていた。

 ササラは、どの部落を訪れてもテキパキと指示を出し、呪いをかけられている者ですら、彼女の指示には従っていた。

 それだけ日頃から彼女が尊敬され、信頼されているからなのだろう。

 そして、呪われていた村人が呪いから解放された時の彼女の喜びようと、それに感謝する村人との間にしっかりとした絆が見えた。

 こんな関係がパドラル全体に行き渡れば、きっとパドラルという国も良い国になるのだろうなと感じていた。


 族長の部落前に戻ると、再び鷲の姿のルークが現れて言った。

「おかえりなさいませ。私も同行させて下さい。良きタイミングで主人たちを迎えに参ります」


「わかりました。一緒に参りましょう」

 と、オスカーが答えると、ルークは青年の姿になってオスカーの馬の隣に立っていた。


「では、ササラさんから先に」

 と、オスカーに促されたササラを先頭に、一行は馬に乗ったまま部落の中に入って行った。


 ルークが徒歩なので一行は、部落の中ほどにあるミードス族長屋敷に向かってゆっくりと進んでいると、後ろからキース達が追い付いて来て言った。


「こちらも無事、全部部落の解除を完了して参りました」

 と、キースはオスカーに報告しながらその横のルークを見た。


 ルークは、その様子を察して

「キース様、アラン様の使徒のルークです」

 と、キースにだけ聞こえるように言った。


 キースは、それで全てを悟ったようにオスカー達の後ろに着いた。

 クリストファーとエイディオス卿もその後に続いた。


 ミードス族長の屋敷前に着くと、族長の屋鋪の者はみな呪いからすっかり解き放たれ、通常の日常を取り戻している様子だった。

 族長宅の前で皆が馬から降りると、主人の娘であるササラの帰宅に気づいた使用人たちが急いだ様子で出て来て、それぞれの馬の手綱を預かり厩舎へ引いて行った。


「みなさんどうぞ」

 と、言うササラの後について、一行は屋敷の中へ入って行った。


 昨夜は、暗闇の中、呪いにかけられた者を警戒しながら、勝手に上がり込んだオスカーとキースだったが、今は礼儀正しく通された部屋で待機していた。

 そこに、すっかり呪いも解け元の雄姿を取り戻したミードス族長が現れた。

 昨夜は、呪いをかけられていた上に深夜だったこともあるが、昨夜とは見違えるほど若々しくなったミードス族長の姿を見てオスカーとキースは驚いていた。


 ミードス族長はふたりに向かってまず礼を述べた。

「まずは、我々部族の呪いを解いてくれたことに感謝する。全ての部落を回ってくれたそうだが、全ての村人が呪いから解放されたと思って良いのか?」


「はい。多少呪いの後遺症が残る者もいるかもしれませんが、その時は例の魔草薬(ハーブ)を焚いた部屋にしばらいれば浄化されます。各部落にハーブを置いて来ました」

 と、族長の質問にオスカーが答えた。


「そうか、それは感謝する」


「ところで、族長はメメチャンバを御存じですか?」

 オスカーはいきなりメメチャンバ伝説について持ち出した。


 族長は、オスカーの唐突な質問に戸惑いつつも答えた。

「ああ、もちろん。ケチャの伝説だ。知っている」


「では、信じておられますか?」


「うーん。どうだろうか?それが、本当であれば良いとは思うが…もし、メメチヤンバが本当にいるなら、それほど有難いことは無いとは思う」


「そうですか。実はメメチヤンバが近くまで来ております。呼んでも良いでしょうか?」

 と、オスカーが言うと、オスカーの隣に座っていたルークが鷲の姿になって窓から飛び立って行った。


 驚く族長にオスカーは続けて言った。

「族長様、窓を全開にしてよろしいでしょうか?こちらのお庭にメメチヤンバが竜に乗って降りて参ります。伝説を思い出されてご覧ください」


 オスカーがそう言い終わるとまもなく、遠くから鳥の羽ばたくような音が聞こえて来た。

 その羽ばたく音が大きくなると、族長の屋敷の中庭に二頭の竜が舞い降りて来た。

 二頭の竜は地面に降り立つと、背に乗った者が降りやすいように前膝を折りゆっくりと地面に伏せるように腹を着けて座った。

 その竜の背から、音も無くふわりと降りて来たふたりの男たちの姿を見て、ミードス族長は目を見張った。

 メメチャンバが来ると聞いて、ある程度、予測していたササラもその姿に驚きを隠せなかった。


  ~~~~~~~

 火吹くドラゴンに乗り飛来しメメチャンバ。

 パドラルに救う悪しき者を退き、国をひとつと成す


 ひとりは、光る琥珀色の髪に深い海の色の瞳。

 他方は、亜麻色の髪に翡翠の瞳。


 彼らの力は、人を癒し、人をまとめ、人に幸をもたらす

 いずれの者、彼らを疑うことなかれ。

 さすれば、豊かさと安寧がこの国に満ちるであろう

  ~~~~~~~


 ミードス族長は、メメチャンバ伝説を復唱しながら、窓の外に向かって歩いて行った。


「空から、突然失敬いたします。ミードス族長」


「光る琥珀色の髪」と「深い海の色の瞳」のその若者は、背中の騎手が降りやすいように座った騎竜から降りると、ゴザガントの部族長に向かって片足を地に着いて騎士の礼をした。

 続いて「亜麻色の髪」「翡翠の瞳」の若者も同様に自分の騎竜の横で騎士の礼をした。


「ああ、まさにメメチャンバ伝説そのものだな」

 流石のミードス族長も目の前のふたりの男を前に、ケチャ教の伝説を信じないわけにはいかなかった。


「既に、私の配下の者たちからお聞きお呼びかと存じますが、我々はこのパドラルをBlack Mageの手から救い出し、平和で豊かなひとつの国とすべくやって参りました」

 と、アランは跪いたまま族長をまっすぐに見つめて言った。


 言葉を失ったままのミードス族長だったが、オスカーやキースに救われた事、村人全ての呪いを解いてくれたの事への感謝の気持ちが強かったので、その者たちを使わしてくれたアランとトゥルリーにも感謝の気持ちが沸いて来ていた。

 彼らがメメチャンバであろうとなかろうと、彼らに対する感謝の気持ちは大きかった。


「この度は、我々ゴザガント族全ての者を救って頂きありがとうございました。あなた達の臣下の者は、素晴らしい能力の者たちです」


 ミードスのその言葉を聞いて、アランとトゥルリーは立ち上がり、族長の傍に向かった。

 ミードスも開け放たれた窓から、庭へ出る縁台から下に降りてアランとトゥルリーの元へ歩み寄り、彼らの前で地面にひれ伏した。


 そして、自然とこの一言が口に出てしまった。

「メメチャンバ様。よくぞパドラルへ来て下さいました。どうか、このパドラルを救ってください」


 アランは、平伏したミードスに向かって

「どうぞ頭を上げて下さい。我々の臣下の者を快く迎え入れて下さったからこそ、この村の解呪もスムーズに行きました」

 と、言いながらミードの両肩を持ち彼を立たせながら言った。


 アランも高身長だが、ミードスもアランと同じくらいの背丈であり、身体もしっかりと鍛えられた筋肉という鎧で固められていた。

 彼が、単に族長として部族の上に君臨する支配者ではなく、戦の際は自ら先頭に立って闘う戦士であることを物語っていた。


「ゴザガント村のみなさんの解呪は完了したようですが、周囲の他の部族の方はどうなのでしょうか?」

 と、アランがミードスに尋ねた。


 すると、今まで部屋の中からその様子を伺っていたオスカーが窓の外に出て来て言った。

「その事に着きましては、私とキースで確認して参りました」


 そして、駆け寄るようにしてアランとトゥルリーの前に跪いて言った。

「私から、ご報告してもよろしいでしょうか?」


「オスカーご苦労だった。報告を頼む」

 と、アランが言うとオスカーは午前中にキースと回って確認して来た、タナンバ、ジャーナカン、ヤクトル、ササンの状況についての報告をした。


 そして、最後にオスカーは言った。

「ササン以外は、ほとんど『大黒主神教』の影響も洗脳も感じられませんでした。ミードス族長は、日頃からハバトやジラクスの侵略からゴザガントだけでなく、他の部族への侵略も防いで来られたそうです。黒魔術で洗脳されながらも、パドリアヌス達の侵略から他の部族を守ろうとされた証だと思われます」


「人は、魔法で洗脳されたとしても意識の底での強い思いがあれば、それに反する指示には抗う力があるのだな。素晴らしいことだ」

 と、トゥルリーも感動しながら言った。


 ミードス族長は、恥ずかしそうにでも誇らしげに頭を下げた。


「あなたは、人の上に立つ者に相応しい資質をお持ちとお見受けしました。是非、我々と共にパドラル統一と、この国の平和と豊かさの為に協力して下さいませんか?」

 アランは、そう言いながらミードス族長に手を差し伸べながら言った。


 ミードス族長もアランとトゥルリーのその佇まいから滲み出るオーラに圧倒されつつ、その手を受け止めて言った。


「はい。それは私にとっても悲願です。お力をお貸しください」

 と、言いながらアランの手をしっかりと握り締めた。


 その手からは、なんとも言えぬ力強さと優しさが伝わって来た。

 ミードス族長は、この方には邪心が無く、純粋にこの国を思ってくれているのだと感じた。

 それは、彼の臣下たちを見ているだけでも伝わって来ていたが、今また決定的な確信を彼に与えていた。


 部屋の中でその様子をハラハラしながら見守っていた、族長の娘のササラ、エイディオス卿、キース、クリストファー、アンナ四人は、思わず拍手をしてしまっていた。

 それは、事実上、スチュアートリア帝国とゴザカント部族の友好条約締結の瞬間であった。

 四人の若者は、貴重な瞬間に立ち会うことが出来たという感動に包まれていた。


「では、ササン族の呪いの解呪に行って参りましょう。我々と臣下の者で行きます。族長は、我々の代わりにタナンバ、ジャーナカン、ヤクトルの族長にパドラル統一への協力をお願いして頂けますか?」

 と、アランはミードス族長に他の部族長にもパドラル統一への協力の打診を頼んだ。


「わかりました。タナンバ、ジャーナカン、ヤクトルの族長とは日頃から交流がありますので、話してみます」


「後ほど我々も、正式な条約誓約書を持って再訪いたしますので、その前に族長からの口添えをして頂ければと思います」


「わかりました。メメチャンバ様が来訪されると伝えれば間違いなく協力してくれることでしょう」

 アランとトゥルリー、ミードス族長の三人は、がっしりと手を握り合い協力を誓い合った。


 そして、スチュアートリア帝国の者たちは、それぞれ竜に乗ってゴザガントを後にした。


 そんな母国の者たちが去って行く姿を、少し寂し気に見つめるエイディオス卿。

「また、ひとりか」

 そっと呟きながら、彼らが見えなくなるまで空を見つめて見送っていた。


 すると、後ろから「ローディ」と、呼ぶ女性の声がした。


「あ、ササラ」

 エイディオス卿は彼女の声に振り向くと

「せっかく、お友達になれたのに残念ね。彼らはみんな素晴らしい能力があるのに良い人達だったものね」

 と、部族長の娘のササラが言った。


「そうだね。いい人たちだった。でも、ここの部落の人たちもみんな良い人達だよ」

 と、エイディオス卿は笑顔で答えた。

「それに、パドラル統一はこれからだ!俺も族長の助けになれるように頑張るよ」


 スチュアートリア帝国から派遣された諜報部員のエイディオス卿の仕事は、ただその土地の情報を母国に報告することだけではない。

 スチュアートリア帝国の為に働くことだ。

 今は、パドラル統一がその大義となる。

 エイディオス卿は、さらに気を引き締めて頑張ろうと思っていた。


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