「オセロ作戦」第四局 = ゴザガント部族村=
ゴザガントへ向う途中、彼らはエイディオス卿からゴザガント族についての話を聞いた。
また、オスカーとキースもエイディオス卿に、パドラル内の部族の状況を伝え、また、自分たちの他に若いHoly Mageが解呪の手助けに来る予定であることを伝えた。
いつも、異国の地にひとりで潜入捜査をしていたエイディオス卿は、同じ帝国軍の騎士と共に闘えることを嬉しく思っていた。
「エイディオス卿は、帝国に戻りたいとは思わないのですか?」
と、キースは禁断の質問をした。
諜報部員として派遣された者は、帰還命令が出ない限り戻ることは許されず、また帰還命令が出たら即座に帰還しなければならない、という絶対的制約がある。
もちろん、他国へ潜入する諜報部員になるには、厳しい訓練を受けなければならず、基本的には自ら志願した者のみが派遣される。
キースは、それを知った上で質問していた。
なぜなら、今なら帰還することも可能な状況だと思ったからだ。
ジャンバラン砦には、彼らを派遣し帰還命令を出す事が出来るシオン参謀がいる。
キースは、まだ若いエイディオス卿の苦労を見ていると、ついつい同情せずにはいられなかったのだ。
「いや、そんなことは思ったことは一度も無いです。確かにゴザガントを追われてシストーラへ避難しなくてはならなくなった時には、帰還命令が出るのでは無いかと思っていました。でも、私はゴザガントの皆を見捨てることは出来ないと思っていたので、ゴザガントに戻れて嬉しいのです」
と、エイディオス卿は言った。
その横顔には帝国軍騎士としての誇りが見て取れた。
キースは、その横顔に自分の父の横顔が重なって見えてハッとした。
これがWhite Mageの誇りなのかもしれないと思った。
そして、自分が卿に対しても、父にも、失礼な事をしてしまったような気になっていた。
「失礼しました、エイディオス卿。まだ騎士になりたての半人前ゆえ、ぶしつけな質問をしたことをお許しください。でも、卿の素晴らしい覚悟と誇り高き帝国軍騎士の決意を聞き感動いたしました」
何が有ろうと、戦場では上官の命令は絶対、軍から与えられた任務は、何が有ろうと最後まで果たすのが帝国軍騎士の任務なのである。
キースは、改めてそのことを心に刻んだ。
エイディオス卿は、騎士になりたてのHoly Mageのキースに優しく言った。
「キース卿、あなたはこれからの人です。きっとお父上よりも素晴らしい騎士になられることでしょう。でも、帝国への忠誠心なら私も負けませんよ?」
そう言って笑ったエイディオス卿の目は、まっすぐゴザガントの方向を見つめていた。
エイディオス卿の前に乗っているオスカーには、彼の顔は見えなかったが、彼の思いが伝わって来た。
近衛騎士団長として、大勢の部下をまとめているオスカーも自分の命令が部下の人生を左右することもあるのだと知っていた。
そして、今またその責任の重さを再認識していた。
そんな三人がゴザガント上空に到着したのは、日が暮れかかった夕方だった。
金鱗竜は、闇夜でも迷わず飛ぶことが出来る。
Holy Mageの彼らも、夜でも位置を確認する力があるので、ゴザガンドの者に悟られない為にも夜の闇を利用することにした。
エイディオス卿の案内で、まずは海岸に近い使用されていない漁師小屋に降りた。
その小屋は防風林に囲まれており、竜を隠しておくことができた。
彼らは、その漁師小屋とその周辺に結界を張り、小屋の中で作戦会議をした。
まずは、彼らの「オセロ作戦」遂行の一手は、ゴザガントの族長とその家族の洗脳を解く事である。
それには、ゴザガント族長ミードスの家の様子が知りたかった。
エイディオス卿は現地に馴染んでいたが、顔が割れているので、『大黒主神教』に洗脳されている人たちに警戒される可能性が高い。
オスカーとキースは、明らかに異国人とわかってしまう。
そこで、キースの使徒のルーシーに探らせることにした。
ルーシーは、鳩だが人間の女の子に化身することも可能だった。
護衛にはオスカーの使徒のクレイヴが着く。
クレイヴは、人間に化身することは出来なかったが、体を縮小することが可能だった。
「鳩と竜か!なかなか良いコンビかもしれないな」
と、オスカーは笑った。
「頼むぞ!ふたりとも」
キースはルーシーだけを行かせるのは心配だったが、クレイヴがルーシーのボディーガードに付いてくれるので少し安心していた。
使徒は、神聖力で、主人と同期されているので、感情も考えも全て伝わり主人の手足であり耳であり目となる。
「かしこまりました」
ルーシーとクレイヴは、闇に紛れてエイディオス卿に教わった族長が居るという部落に向かって飛び立って行った。
遠くから波の音が聞こえる。
「地図で見ると、ゴザガンドは、ここらの部族の中で一番領地が広いようだった。好戦的な部族ということだったが、そうなのか?エイディオス卿」
と、オスカーが尋ねるとエイディオス卿は頭を左右に振って答えた。
「それは、ちょっと違います。確かにゴザガンド部族は勇敢ですし、戦いにも慣れていて強いが、自ら侵略したり、闘いを挑んだりはしません」
と、エイディオス卿は、ゴザガンドが好戦的な部族と思われていることを否定した。
自分が参謀室に報告した内容から、そう伝わっているのかと思い複雑な気持ちになっていた。
「ゴザガンド部族は、タナンバ、ササン、ジャーナカン、ハバド、ニンダラの5部族と領地を接しています。その中のハバドとニンダラが南下して来て領土を広げようとするので、仕方なく防衛の為に闘っているだけなんです。ゴザガンドのおかげでタナンバ、ササン、ジャーナカン、その隣のヤクトルも間接的に守られているのです」
と、エイディオス卿はゴザガントの立場と、部族側の正義を語った。
オスカーとキースにも、エイディオス卿のゴザガンドへの気持ちが伝わって来た。
そして、必ずゴザガンドをBlack Mageと『大黒主神教』の魔の手から解放することを心に誓った。
あたりが真っ暗になる前に、三人は海へ行って魔法をかけた網で魚を捕まえ、火を起こして食事を済ませた。
使徒では無い竜にも餌を与えた。
そうしているうちに、ルーシーとクレイヴが戻って来た。
ふたりの報告によると、族長の家が『大黒主神教』の教会として使われており、部落の者のほとんどが黒魔術で洗脳されているとのことだった。
また、『大黒主神教』の指導者として、パドリアヌスの手下のような者がひとり居るが、黒魔術師では無いようだとのことだった。
「どうする?これから作戦を決行するか?」
と、オスカーが、エイディオス卿に尋ねた。
「もう少し待って、みなが寝静まってからの方が良いかもしれません。族長の家の間取りはわかっています。まずは族長から助けましょう」
「わかった。俺はクレイヴとパドリアヌスの手下を捕える」
ルーシーの報告によると、『大黒主神教』教会として使われている族長の家には、30人ほどの者が居るとのことだった。
エイディオス卿の知る限り、族長の家族と使用人を合わせても15人程度だったとのことなので、半分は族長の家の者では無いということだ。
パドリアヌスの手下は、一人だけらしいので、残りの者は洗脳された部落の者ということになる。
恐らく、洗脳の度合いに差があるだろう。
パドリアヌスは、族長に強い呪いをかけているはずなので、族長の家、『大黒主神教』教会に居る者以外の部落民の呪いは、されほど強く無いと思われる。
「まずは、族長を助け出し、パドリアヌスの手下を捕える。まずは、族長の家の者の解呪を優先しよう。残りの者たちは、アンナとクリストファーを呼んできて一緒に解呪した方が良さそうだ」
と、オスカーが言ったのを受けてキースが言った。
「では、ルーシーをジャンバラン村に飛ばしましょう」
「まずは、族長救出からですね。でも、残念ながら私にはBlack Mageの魔法の解呪は出来ません」
と、エイディオス卿は悲しそうに言った。
「大丈夫です、僕がやります。でも、僕もまだ半人前Holy Mage騎士で現場に出るのは初めてです。ふたりでバディを組んでやりましょう」
キースは、エイディオス卿を励ますように言った。
現場経験豊富なオスカーは、そんなふたりのやり取りを微笑ましく見ていた。
そして、作戦決行を前にふたりに怪我をさせてはならないと気を引き締めていた。
ルーシーは、ジャンバラン砦に連絡に向かい、夜が更けた頃に三人は作戦を決行した。
オスカーとエイディオス卿はクレイヴに乗り、キースは金鱗竜に乗って、ミードス族長の家のある部落上空まで行くと、竜達が地面すれすれまで降下したところで、三人は竜の背から音も無く飛び降りた。
竜達は、三人を降ろすと再び闇夜の空に舞い上がった。
リゲル・ラナには月が二つあるが、ひとつの月は隠れており、もうひとつは繊月という暗い夜だった。
ゴザガントの部族長の家は村の中心の部落に有り、ちょっとした城のように広かった。
ゴザガンド内には、戦争になった時に砦となる部落がいくつもあり、その中にもミードス部族長用の屋敷があったが、今は中央部落の屋敷に居た。
Black Mageパドリアヌスに洗脳されてからは、その屋敷の一部が『大黒主神教』施設として利用されており、ミードス自身もその屋敷内に居た。
エイディオス卿はその屋敷内に潜入すると、迷わず部族長の家族の居る建物、本宅めがけて走った。
その後をキースが追う。
オスカーは、ルーシーから聞いたパドリアヌスの手下が居るという別棟に向かった。
すると、そこは『大黒主神教』の信者たちの寝泊まりする場所でもあったので、洗脳された部落の人がわらわらと現れた。
暗闇であまり良く見えないらしく、手に武器を持ちなから、右往左往している様子だった。
ゴザガントの者は、勇敢で有能な兵士だと聞いていたが、確かにみな筋肉質で鍛えられた体型をしている。
だが、黒魔術で洗脳されてるせいで、せっかくの戦闘能力も発揮しきれず、ぎこちない動きになっていた。
オスカーは、Holy Mageだったので暗闇でも視力を維持する能力がある。
ぎこちない動きで襲って来る者たちの剣を交わし、Holy Powerを注入した自分の聖剣で順番に気絶させながら建物の奥へと進んだ。
すると、今までの男たちとは違う動きをする男が現れて言った。
「何者だ?この村のものじゃないな?」
オスカーは、その男に向かって聖剣を振り下ろし、彼のオーブカラーである青い光でその男を縛りながら言った。
「何者でも良いだろう。名乗ったところで忘れることになるからな」
と、オスカーが言い終わらないうちに男は気を失った。
オスカーは、その男を縄で縛ると、外に出て空を見上げた。
するとクレイヴが、もう一匹の竜を連れて降りて来た。
「キース達はまだみたいだ。この男だけ乗せて待っててくれ」
縄でグルグル巻きになった男の額に手を当てて、男をさらに深い眠りに落とし、クレイヴに男を預けた。
クレイヴは、男を背に乗せると、もう一頭の竜を伴って再び闇夜の空に戻って行った。
オスカーは、二匹の竜が空に戻るのを確認し、キース達の向かった本宅へ向った。
「さきほど、別棟で倒したのは15人だったから、残りは族長の家の者だけだな」
オスカーが駆けつけると、キースが族長と、エイディオス卿が若い女と揉み合っていた。
オスカーは、キースが自分の腰の聖剣を抜かずに族長と揉み合っていることに気づき
「キース!一旦、族長を気絶させてしまえ!」
と、頭の中でキースに言った。
キースは、オスカーの指示に従って腰の聖剣を抜こうとしたが、ミードスに両手を掴まれていて身動きがとれなかった。
黒魔術をかけられていても、ミードス族長は筋骨隆々の屈強な戦士なのである。
オスカーは、キースが身動き取れずに居る状況を見て、自分の聖剣を抜いてミードスに振りかざすと、青いオーブの光がミードスの頭上で彼を切り裂くように輝いた。
すると、ミードスはその場にパタンと絶れた。
「安心しろ、気絶しただけだ」
と、言ったオスカーは、次にエイディオス卿が揉み合っている若い女性にも同じように聖剣の光で切った。
「ササラ!」
と、言いながらエイディオス卿が倒れる彼女を受け止めた。
どうやら、彼女がミードス族長の娘のようである。
「あとの家の者は?起きては来なかったのか?」
と、オスカーがキースに尋ねた。
「いえ、他の者は僕が眠らせました」
と、キースが答えた。
「やるじゃないか!キース。でも、族長と娘さんには効かなかったのか?」
「ええ、部族長には効きませんでした。娘さんはその場に居なくて後から現れたもので、エイディオス卿が驚いてしまって…知り合いだけに動揺してしまったようです」
エイディオス卿は、娘を腕に抱いたまま恥ずかしそうに頭を下げた。
「とりあえず、このふたりの解呪をしよう」
オスカーとキースは、ふたりで黒魔術を解こうと聖剣にHoly Powerを注ぎ込んでそれぞれの頭上に掲げた。
娘の方はすぐに解呪されたようだったが、族長の方はかなり強力な魔法をかけられていたらしく、二人がかりで解呪した。
それから、オスカーとキースは、キースが眠らせたミードス族長の家の者たちの呪いを解呪しに族長の部屋を出た。
「キース、君は肉体強化の魔法は学んで無いのか?」
オスカーは、族長家の長い廊下を歩きながらキースに尋ねた。
「いえ、学びました」
「それなら、族長の力くらいねじ伏せられただろう?」
と、オスカーに言われてキースは、ハッとしていた。
「そうでした。ふつうの人間相手に、魔法を使う必要が無いと思い込んでいて、使うのを忘れていました」
「そうか、確かに一般の人間相手に軽々に魔法や神聖力を使うべきではないが、今のパドラルは戦場と同じだ。必要に応じて上手く活用するように」
と、オスカーは、新米のHoly Mage騎士であるキースにアドバイスを与えた。
「はい!」
キースは、初めての任務に舞い上がっている自分に気づいて気を引き締め直した。
そして、初めての任務を頼りになる先輩と共に行動できる事を有難く感じていた。
オスカーは、そんな新人騎士の緊張感を感じとって、彼の肩を軽くたたいて言った。
「何事も経験だ。でも怪我をしないようにだけ気をつけろよ」
ふたりは、族長の家族の解呪を終えると、隣の別棟で気絶している15人の呪いも解いた。
そして、再びクレイヴを呼んで、グルグル巻きの男を降ろさせた。
辺りが明るく白みだした頃、ミードス族長は気を取り戻して目の前のエイディオス卿を見て驚いていた。
エイディオス卿は、族長や家の者、部落の者たちがBlack Mageの黒魔術で洗脳されていた事をミードスに説明した。
ミードス族長は、自分が洗脳されていた時の記憶もうっすら残っていたのでエイディオス卿の説明に納得していた。
そして、助けてくれた礼を言った。
「いえ、呪いの解呪をしたのは、私では無いです。こちらの方たちです」
と、オスカーとキースを紹介した。
オスカーとキースは、自分たちがスチュアートリア帝国から派遣された者で、帝国はパドラルをBlack Mageの魔の手から救出し、ひとつの独立した国家として統一しようとしている事を告げた。
「帝国としては、パドラルが常に部族間の争いが絶えない国では、またBlack Mageに狙われ兼ねませんし、貧しい国のままでは隣国として安心できないと考えています。パドラルが統一された暁には、帝国と和平を結んで、交易をすることで豊かな国になって欲しいと思っています」
「是非、我々と一緒にBlack Mageと闘って下さい。そして、パドラル統一のために協力して下さい」
オスカーとキースは、ミードス族長に自分たちの来た目的を語った。
だが、ミードスはまだ呪いが解かれたばかりで、今一つ状況を把握できずにいた。
その様子を察したオスカーは、言った。
「まずは、明日、我々の仲間が来て一緒に部落の人たちの洗脳を解きますので、我々の滞在をお許し下さい。それと、この者を閉じ込める牢をお借りしたい」
ミードス族長は、まだ気絶したままの縄で縛られた男の顔を見て言った。
「この者は許せん!牢に入れるのは当然だが、こいつは我々に引き渡してくれないか?」
と、怒りをあらわにした。
「わかりました。この男はそちらに引き渡します」
すると、気絶していた族長の娘のササラが気を取り戻し、エイディオス卿の顔を見て驚いていた。
エイディオス卿が、ことの次第を説明すると、彼女の呪いは強くなかったらしく、すぐに状況を把握して卿に感謝の言葉を述べた。
エイディオス卿も嬉しそうだった。
オスカーは、部屋を見回した香炉を見つけると、解呪の為に持参した魔薬草に自身の神聖力を注いで、その香炉に入れて香を炊いた。
その香りには、黒魔術による呪いを解く効果があった。
強い呪いをかけられていた族長の呪いの残呪を完全に取り除くために、その部屋を香の香りでいっぱいにさせた。
夜が明け、あたりが明るくなった頃には、ミードス族長にその効果が現れた。
パドリアヌスと対面したあの日から、今日この瞬間までの記憶が繋がり、本来の族長らしさを取り戻していた。
その間に、エイディオス卿とキースは、族長の娘のササラと共に、まず族長の家族の解呪具合を確認して介抱をした。
族長の妻や、兄弟姉妹、子供たちはすぐに正気を取り戻したが、老齢の祖父母は脳だけでなく、身体的にも悪影響を受けていたようだった。
キースがヒーリングの魔法で体力の回復を試みたが、高齢なので自己治癒力にも限界があった。
以前のキースなら、ここで迷いが生じていたが、今はHoly Mageとしての心得をしっかりと身についている。
彼に許される範囲の治療を行い、後は家族の者に任せた。
別棟の者たちは、族長の家族では無く、パドリアヌス達に騙されて黒魔術で洗脳され『大黒主神教』教徒として、ここに住んでいる者たちだった。
彼らは、村の者を『大黒主神教』に入信させ、パドリアヌスから渡された洗脳する為の水たばこや香を使って洗脳するように指示されていた。
ここに居る者たちも、かなり強い魔法で洗脳されていたようで、完全に解呪されるまでには時間がかかりそうだった。
そこで、一旦、村の罪を犯した者が捉われるという牢獄に彼らを移し、完全に解呪するまで監禁することとなった。
それらの指示は、すっかり元に戻った族長の長女のササラが出していた。
「しっかりした娘だなぁ」
と、オスカーが感心してエイディオス卿に言った。
「ゴザガントは、一夫多妻なんですが、なぜか族長の子供は全員女子で…だから、長女である彼女は男に混ざって戦いにも参加して、指揮をとったりもしているそうです」
「なるほど。どうりで我家の妹を思い出したはずだ」
と、エイディオス卿の説明を聞いたオスカーは、妹のポリアンナを思い出して笑った。
まずは、ゴザガント族内の『大黒主神教』の浸透と、洗脳状況を把握せねばならない。
直接、パドリアヌスや黒魔術師に洗脳の魔法をかけられた者以外は、オスカーの神聖力を注いだ薬草を使用することで解呪が可能だった。
ゴザガントはミードスの優れた統率力でまとまっていた部族であり、族長が洗脳されている間でも、部族の者たちは彼に従っていたので、ミードスさえ正気に戻れば後は心配なさそうだった。
「この部落は、君と族長の娘に任せても大丈夫そうだな。俺とオスカーは隣のジャーナカンとササンの様子を見て来る」
と、オスカーがエイディオス卿に言った。
「あとは私にお任せ下さい。Black Mageの魔術による洗脳の解呪は私には厳しいですが、黒魔術師レベルの洗脳術くらいでしたら、私でも解呪できますので」
と、エイディオス卿は自信を取り戻して言った。
オスカーは、エイディオス卿の返答を聞いくと笑顔で
「やっと、君の本来の姿が見れたよ。今日中には戻って来るので後はたのむ」
と、言って空に向かって手を掲げた。
すると、朝霧の中から竜が現れて、部族長の屋敷の庭に降り立った。
「クレイヴ待たせたな」
と、言ってクレイヴの背に乗った。
キースもクレイヴと共に降り立った竜の頭を撫でながら
「また、頼むよ」
と、言ってから手綱を握って、その竜の背に乗った。
そして、二頭の竜は再び、朝もやの立ち込める中空へと舞い上がって行った。




