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偽りの聖婚  作者: 凪子
四、応戦

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淡雪は聞いているだけで安らぐような声で言った。


「私はあなたに協力します。あなたは、盟主に相応しいお方です」


藍晶はかつてなかった感情が胸に湧いてくるのを覚えた。


気恥かしいような、それでいて武者震いがするような。


「あなたの母君は、もともとは花散里の人間ではない。それを聞いて、この考えを実行に移すことを決めました」


淡雪に目で促されて、藍晶は続ける。


「雪満里の血を引く娘が、花散里の正当な巫女姫になれるのは、もしかしたら、もともと五つの里が一つだったからではないかと、私は思うのです。あなたの聖紋が、我が里の『青の勾玉』と反応し合ったのも」


「まあ」


淡雪は手で口を覆って、目を見開いた。


――そんな考え方があったとは。


「だから、もしかしたら――守護神も、同じ神がそれぞれ姿を変えて宿っているのではないかと思います。それなら全ての里が協力し合うことも不可能ではない。二つの異民族だって、最初はどこかの里から離れ、集落を築いた人々の集まりでしょうし」


一朝一夕で考えつく案ではない。


淡雪は藍晶の凪のように落ち着いた表情から、多くのものを読み取った。


試行錯誤し、思い悩み、考え果てた先に見出した活路か。


「星雲が巫女姫と結婚することでその土地を領有するつもりなら、俺は巫女姫の力を借りてそれを阻止してみせる。あいつの思い通りにはさせない」


素の自分と大義名分が交じり合って、藍晶の口調はたびたび変わった。


千早の武力は圧倒的なものだと聞く。


攻め込まれれば、花散里も星降里のように、否それ以上に早く滅びの道を辿りゆくしかないだろう。


千早の蹂躙がもたらす衰亡を、藍晶はその身を持って知っている。


偽の巫女姫は即位し、神殿は掌握されたも同然。


本物の巫女姫は命を狙われ、神殿どころか聖都に戻ることも叶わない。


それでも、彼は諦めていない。


姉の仇を討つことが目的だった瞳に、今は違う意志を秘めた輝きを宿して。


――もしもこの世界に希望と呼ばれる人がいるのなら、それは彼のことだ。


淡雪は藍晶の存在に、このめぐり合わせに深く感謝した。


「藍晶さん。お姉様のこと……差し支えなければうかがいたいのですが」


藍晶はわずかに首を持ち上げ、黒く広がった空を見上げた。


清冽な空気は冴えた音色を立てて二人の間を吹きぬける風になる。

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