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淡雪は聞いているだけで安らぐような声で言った。
「私はあなたに協力します。あなたは、盟主に相応しいお方です」
藍晶はかつてなかった感情が胸に湧いてくるのを覚えた。
気恥かしいような、それでいて武者震いがするような。
「あなたの母君は、もともとは花散里の人間ではない。それを聞いて、この考えを実行に移すことを決めました」
淡雪に目で促されて、藍晶は続ける。
「雪満里の血を引く娘が、花散里の正当な巫女姫になれるのは、もしかしたら、もともと五つの里が一つだったからではないかと、私は思うのです。あなたの聖紋が、我が里の『青の勾玉』と反応し合ったのも」
「まあ」
淡雪は手で口を覆って、目を見開いた。
――そんな考え方があったとは。
「だから、もしかしたら――守護神も、同じ神がそれぞれ姿を変えて宿っているのではないかと思います。それなら全ての里が協力し合うことも不可能ではない。二つの異民族だって、最初はどこかの里から離れ、集落を築いた人々の集まりでしょうし」
一朝一夕で考えつく案ではない。
淡雪は藍晶の凪のように落ち着いた表情から、多くのものを読み取った。
試行錯誤し、思い悩み、考え果てた先に見出した活路か。
「星雲が巫女姫と結婚することでその土地を領有するつもりなら、俺は巫女姫の力を借りてそれを阻止してみせる。あいつの思い通りにはさせない」
素の自分と大義名分が交じり合って、藍晶の口調はたびたび変わった。
千早の武力は圧倒的なものだと聞く。
攻め込まれれば、花散里も星降里のように、否それ以上に早く滅びの道を辿りゆくしかないだろう。
千早の蹂躙がもたらす衰亡を、藍晶はその身を持って知っている。
偽の巫女姫は即位し、神殿は掌握されたも同然。
本物の巫女姫は命を狙われ、神殿どころか聖都に戻ることも叶わない。
それでも、彼は諦めていない。
姉の仇を討つことが目的だった瞳に、今は違う意志を秘めた輝きを宿して。
――もしもこの世界に希望と呼ばれる人がいるのなら、それは彼のことだ。
淡雪は藍晶の存在に、このめぐり合わせに深く感謝した。
「藍晶さん。お姉様のこと……差し支えなければうかがいたいのですが」
藍晶はわずかに首を持ち上げ、黒く広がった空を見上げた。
清冽な空気は冴えた音色を立てて二人の間を吹きぬける風になる。




