表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの聖婚  作者: 凪子
四、応戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/77

44

春先とはいえ、樹海の夜は一段と冷え込む。


温かい衣服もなく、三人は火を囲むことでどうにか暖を取った。


火の熾し方は、藍晶と狭霧がよく知っていた。


「淡雪殿」


狭霧が仮眠をとってしばらくして、藍晶がぽつりと口を開いた。


横になっていたが、淡雪は眠るつもりもなく、森閑とした空気を感じたまま目を開いていた。


「どうされました?」


「私の言った方法は、間違っているのでしょうか」


淡雪は仰向けになって中空を見上げる。


ビロードの絨毯に砕いた硝子を一面にばら撒いたように、星屑が散らばってきらめいていた。


「狭霧のことですか」


「私は甘いのかもしれない。殺すことを決意したところで、狭霧のように非情になりきることができない」


「あの子は幼い頃から訓練を受けたのでしょう。とても一朝一夕にできる身のこなしではありませんわ」


「そうですが、そうだとしても」


「藍晶さん。あなたは主君なのです」


淡雪は身を起こし、決然と言った。藍晶が振り向く。


「馬は乗り手が迷えば暴れます。しっかりと手綱を引いて、どうすればいいのか決めてやらねば、最大限力を発揮できないのです」


「狭霧は馬ではない」


藍晶は強い口調で反駁した。


淡雪は一瞬あっけにとられた後、くすくすと笑った。


「物のたとえです。人にはそれぞれの役割があり、つとめがある。それを果たすために、私たちは生まれてきたのですから。神から与えられたご自分の責務をお忘れにならないよう」


からかわれた気がして、藍晶は苦い顔をした。


「私の責務は何だというのです」


「先ほど自らおっしゃったではありませんか。盟主になるのでしょう。五つの里と、二つの異民族。それらを統べる、巫女姫たちよりもさらに貴い存在に」


藍晶は仰天した。


「そ、そのような大それた地位に就こうなどと……私はただ、他の里や異民族を繋ぐ、架け橋になれたらと思うだけです」


「名目はどうあれ、あなたがおっしゃっている事は天下を統一し、その上に君臨するということだと思いますが?」


そんなつもりはなかった。


ただ、自分はたくさんのものを守れなかった分、他のものを守ることでその償いをしようとしていただけだ。


何を言っても言い訳がましくなりそうで、藍晶は唇を引き結んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ