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ゆがプリ! 〜目指すしかない、ノーマルエンド!〜  作者: みちはずれ
3.白雪 白詰 編
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10.貴族と下民の集まりみたいですね



「なんで灰司くん、ここ分かったの?」

「お前変な登場の仕方すんなよ!!」

「灰司くん、弁当派か? どんな弁当なんだ?」


「……ちょっと一気に話すのはやめてほしいな」


 三人ランチに一人加わっただけでこの賑わいよう。それくらい灰司の登場はひかり達にとってイレギュラーで、良い予感のするものではなかった。

 百合原の隣にある適当な椅子に座り、三人の会話に答える事なく、灰司はマイペースに弁当を机に広げた。


「たまには変わったところで昼食をとろうと思ってたら、三人を見つけてさ」

「胡散臭え……」

「橙也がちょうど扉側に身体が向いてたから、少し驚かそうとしたんだ」

「ち、ちゃんと質問に答えてる……」

「あ、これが今日のお弁当です。煮物に鮭に味噌汁付きですね」


 弁当箱を胡桃の方に傾け、灰司は着々と三人の質問を消化する。ほうほうと頷く胡桃に、灰司は弁当を戻し手のひらを合わせた後、その愛情たっぷり弁当に箸をつけた。


「お前、昼飯食う友達くらいごまんといるだろ?」


 まずは百合原が探りのジャブをいれる。灰司がステンレスの容器をぱかりと開けると、味噌汁の匂いが室内に充満した。


「別にごまんとはいないよ。それに最近は橙也と食べてたのに、橙也ったら突然"今日は食えない"って素っ気ないメッセージだけくれても困るよ」

「それは……ごめん」

「いいよ、驚いた顔面白かったし」


 最近は、という事は灰司なりに百合原のクラスでの状況を気にしていたのだろうか。たまに垣間見える友情のあり方に、その都度ひかりは意外な気持ちを抱く。それくらい灰司が人と密に接する所を見た事がないからだ。


「百合原くんは俺が誘ったんだ、灰司くんの事も知ってたら誘ったのに」


 胡桃がおにぎりを頬張り、二人の会話にすんなりと入り込む。パンを食べて、次はおにぎり。机に置かれたコンビニ袋には、炭水化物しか入っていない事をひかりは知っていた。この人は買い物が下手なのだ。


「胡桃先輩が気遣う事じゃないですよ。むしろ三人の間に無理矢理入ってしまってすみません」

「いいや、俺も灰司くんと一度ゆっくり話してみたかったんだ」


 ばちり、と目に見えぬ電気が走る。ひかりは灰司と胡桃が笑みを浮かべている様子を、冷や冷やと眺めた。嫌な空気を感じる。この二人もしかして相性が悪い? とひかりの知らぬ関係性に百合原に視線を送れば、彼もまたこちらを向いて首を横に振っていた。

 どうにか空気を入れ替えたくて、ひかりは恐る恐ると手を上げ、灰司に声をかけた。


「あ、あのう、灰司くん」

「なあに、相良さん」


 ぱちりと視線がひかりへと動く。以前図書館で話した時と同じ優しい眼差しだ。


「シロちゃん忙しそうだけど、学級委員はそうでもないの?」

「……うーん、そうだね。風紀委員は僕らより仕事は確かに多いけど、白雪さんの場合は別の用事もあるんじゃないかな?」

「別の用事?」

「比嘉先輩の代わり」


 カシャンッ、と百合原の手から箸が落ちた。タブーに触れたような空気の中、灰司だけが仕方ないなというような顔をしてその箸を拾い、除菌シートで拭いた。青ざめた顔の百合原に箸を渡し、灰司は話を続ける。


「今のところ上手にこなしてるよ。乱暴な上級生はいじめに精を出さず、静かに暮らしてる。元よりいじめでストレスを発散しようとするのが変な話なんだけどね」

「……灰司くんってなんでも知ってるんだな」

「そうですか? 知らない事もありますよ」

「俺が刺された時、灰司くんのお母さんが通報してくれたんだろ? あの時は助かったよ」


 胡桃の笑顔は硬い。イレギュラーな存在に皆が不信感を持ってしまっている状態に、ひかりは食事が辛くなった。

 イケメン三人とヒロイン一人。絵面だけでいえば立派な乙女ゲームなのに、その会話内容と空気は物騒極まりない。さすがのひかりもヒロインを取り合うとかしろよ! と夢を見たくなった。


「……その調子でひかりちゃんを何とかできたりしないか? みんなに王子様って呼ばれてるんだろ?」

「た、宝先輩!」


 なんだこのムーブ。灰司に向いた胡桃の敵意にひかりは異変を察する。ひかりの心配もあるだろうが、自分の怒りをぶつけているような胡桃。しかし灰司は話を聞きながらも、黙々と味噌汁をすすっている。あいも変わらず図太い。


「王子様がなんでも出来るんですか? 僕は正義のヒーローも王子様も騙ってないですよ」

「……」

「でも、いい加減相良さんへの嫌がらせなんとかしたいよね。相良さんが触れてほしくなさそうだったから、静かなうちは放っておいたけど」

「まあ、知ってるよね」


 黙って聞いている胡桃にけろりと事実を言いのける灰司。会話の温度差に風邪をひきそうだ。彼はやはり上履きの件から、ひかりの意を汲んで見て見ぬフリをしてくれていたらしい。


「だからさ、いい解決案を持ってきたんだけど」

「うん?」


 この温度差を貫き通し、灰司は突然立ち上がってひかりの隣に座った。

 ……この胡散臭い笑顔は、見たことがあるぞ。ひかりはお茶を口に含みながら、近寄ってくる灰司に警戒した。


「相良さん、僕と付き合わない?」


 そして、そのお茶を全部吹き出した。



 

 

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