6 ORが招いた悲劇
今日は良いことがあった。宝くじに当選したのだ。
普段はもやしばかりの紐爺食生活を送っている私だが、今日くらいは豪華にいこうと、帰りに酔ったスーパーで刺し身を買った。パッケージに『業火特盛』の煽りシールが付いている、とても豪華なやつだ。
家に着き、高速で手を洗い、食卓に急ぐ。
さぁ、お刺身様とのご対面だ!
「馬草だ」
私はさっそく蓋を開け、サーモンを橋で摘まんだ。あぁ、見ているだけで涎が止まらない。
小さな宝石を眺めつづけるのは早々にやめて、ワサビ醤油煮付けて口元に運んだ。
サーモンが私の口の中に収まった。
塗炭、旨味が舌の上で踊り出す。
「う」
美味さ、暴れる。私も釣られて、心がアガる。
「うまいぞー!」
思わず両手を上げ、万歳をしてしまった。
そしてそれがいけなかった。
万歳仕立手は、刺し身が盛られたトレイにぶつかった。トレイは体操選手のように、鮮やかに宙を舞った。
先ほどまで宝石だ何だと形容していたネタの数々が宙を舞う様を、私は何故かスローモーションで眺めていた。眺めていることしかできなかった。
そして、決定的な瞬間が訪れた。
ベちゃ。
「う、うわぁー! 食の宝石箱がぁー!」
その後、三日は引き摺るであろう悲しみを抱えながら、私は散らばった刺し身を片付けた。オーバーリアクションなんかとるんじゃなかったと、躁思った。




