屈辱の教科書と衆人環視の半泣き登校
内衣姿を見られた恥じらいも冷めぬまま、真白は次なる「舞台」へと引きずり出された。重厚な制服に身を包み、背中には鈍い重みを放つ教科書満載のリュック。手には努力の跡を偽造された付箋だらけの単語帳。瑞鳳宮の静寂が参拝客の喧騒に変わる頃、神座に就くはずの少女は、一人の「劣等生」として衆目に晒される。
「うぅ……見られてしまいました。恥ずかしいです、本当に……」
私は離れの脱衣所で顔を真っ赤にしながら、急いで蒼天女学院の制服に袖を通しました。しかし、用意されていたのはただの制服ではありません。
「な……なんですか、このリュックの重さは! 教科書と参考書がぎっしりじゃないですか! しかもこの単語帳、いつの間にこんなに付箋を貼ったんですか!? 全く……皆様、芸が細かすぎます!」
時刻は、参拝客が集まり出す午前。私は深呼吸をし、重い足取りで拝殿の脇から参道へと姿を現しました。
「あ……み、皆様、おはようございます……。は、はい……これから、その、補習なんです。先生たちが、とっても厳しくて……(恥ずかしそうに顔を伏せ、教科書を見せながら半泣き状態で)」
付箋だらけの単語帳を握りしめ、今にも涙が零れそうな私の姿に、境内にいた人々は一斉に息を呑みました。
参拝客達の反応:
「見て、真白様だわ! ……あら、あんなに分厚い参考書を抱えて。今日も学校なのね」
「えっ、補習!? あの神聖な真白様でも、勉強で苦労されることがあるなんて……(親近感で胸を熱くする)」
「見てくださいあの付箋の量! 努力家でいらっしゃるのね。先生が厳しいなんて、さすが名門校だわ」
「半泣きじゃないか……。ああ、代わってあげたい。神様なのに学業を疎かにしないなんて、なんて健気なんだ!」
「やっぱりお嬢様学校は教育も一流なのね。あんなに必死に勉強されている姿、うちの息子に見せたいわ」
「(拝みながら)真白様、頑張ってください! 私も資格試験頑張ります!」
「あんなに美しい子が、教科書の重さで少し前屈みになって……。そのギャップがまた神々しいわ」
「先生も鬼ねぇ、こんなに可愛らしい子を泣かせるなんて。でも、それがエリートの証なのね」
「真白様が頑張っているんだ。一翻市の景気が良くなるのも、この『徳』のおかげに違いない」
「今日の参拝は当たりだ……。真白様の『努力する姿』を拝めるなんて、一生の宝物だよ」
知恵のソフィア(書記):
「『神様なのに成績が危うい』という情報のギャップが、民衆の保護欲を最大化しています。単語帳の付箋は、計算に基づいた『必死感』の黄金比ですわ」
調和の女神(養護・桃子):
「ふふ、あの半泣きの演技、最高に可愛いわ。参拝客がみんな『頑張れ!』って目で見てる。あの子、本当に愛され上手なんだから」
(勝負の女神・1年・緑):
「あのリュックの重さ……かなりの負荷訓練になりますね! 補習という名の精神修行、先輩なら完走できます!」
創造の女神(担任):
「あえて『先生が厳しい』という設定にしたことで、学院のブランド価値も高まりました。一石二鳥のプロデュースですわね」
美のヴィーナス(副会長):
「重い鞄を背負い、少し乱れた制服の裾。そして潤んだ瞳。……これぞ『苦悩する美学』。完璧なポートレートだわ」
豊穣のデメテル(会計):
「参拝客の滞留時間が伸びていますわ。真白さんの姿を拝むために、御守りの売れ行きも好調です。補習の甲斐がありますわね」
芸術の女神(2年):
「学問という世俗の重みに耐える神。このアイロニーが、瑞鳳宮の物語に深みを与える。真白、君の涙は宝石より価値がある」
慈愛の女神(3年):
「よしよし、可哀想に。あとでしっかり『小学生』に戻して、たくさん遊んであげるからね。今はその屈辱を耐え忍ぶのよ」
龍神の翠(役員):
「勉強はわしには分からんが、あのリュックを背負ったまま走れば良い足腰ができるぞ! さあ、演技を終えて早く着替えるのじゃ!」
参拝客たちの羨望と慈愛の眼差しを一身に浴びながら、真白は(演技で)肩を震わせて学院への道……のフリをして歩き出しました。「さすが名門校のお嬢様」という評価は、彼女の不本意な努力と女神たちの緻密な小道具によって、完全に市民の常識へと書き換えられました。背中の教科書は、重ければ重いほど「神の徳」として解釈される皮肉。この公開処刑とも言える補習演技が終われば、いよいよ待ちに待った「滝守陽葵」としての解放(?)が待っています。真白の目には、演技ではない本物の「早く終わらせたい」という涙が、うっすらと浮かんでいるのでした。




