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一翻市雀魂異界録 〜記憶喪失の居候少女が、麻雀で神格化して春の女神と呼ばれるまで〜  作者: 莎倫
第三章:真白先生の特別授業と熱狂のデビュー配信
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スタジオの廊下の清風

朝の神社の静寂を後にし、真白は一翻市の中心部にある撮影スタジオへと足を踏み入れました。ベージュのブレザーに手入れの行き届いたローファー。その身なりに宿る「生徒会役員」としての規律正しさは、スタジオですれ違うプロの人々をも驚かせ、魅了していきます。配信開始を前に、彼女の存在はすでに一つの「物語」を紡ぎ始めていました。

朝の清々しい空気が境内を包み込んでいます。いつものように竹箒を手に、魂天神社の石畳を掃き清めました。


「ふぅ……よし、こんなところですね」


箒を定位置に戻し、額に浮かんだ薄い汗をハンカチで拭います。隣で熱心に(……と言いたいところですが、少し気もそぞろな)一姫さんが掃除をしている姿を横目に、真白はふっと笑みをこぼしました。


「一姫さん、あとはお願いしてもいいですか? 私、これからちょっと、……その、街のほうへ用事があって」

「えっ、真白がいない間に掃除を全部やるのニャ? 仕方ないニャ、今日のお昼は昨日より豪華にしてもらうからね!」


一姫さんの無邪気なリクエストを背中で聞きながら、あなたは一度、神社の片隅にある古びた鏡の前に立ちました。


生徒会役員「真白」の身支度


ポケットから鏡を取り出し、制服の身なりを最終チェックします。


ブレザー: 襟元は完璧です。ベージュの生地に埃一つついていないか、何度も確認しました。


リボン: キュッと結ばれた赤いリボンが、清楚さを際立たせています。


髪型: 鏡の中のあなたは、昨日カフェで佳奈さんに褒められたときよりも、少しだけキリッとした「役員」の表情をしていました。


(……大丈夫。これなら、きっと大丈夫)


心の中でそう呟き、一姫さんに軽く手を振って神社の石段を駆け降りました。一翻市の街並みは、今日もいつもと変わらない活気に満ちています。しかし、今日の彼女にとって、この道は「昨日までの日常」へと向かう道ではなく、「新しい物語」へと続く一本道でした。


一翻市の路地を抜け、佳奈さんが待つスタジオへと向かうあなたの足取りは、不思議と迷いがありません。


「さあ、行ってきます。……私の、新しい『放課後』を始めに」


ニーハイソックス越しに伝わる朝の涼しい空気を肌で感じながら、スタジオの入口の前で立ち止まりました。


昨日、一姫さんたちに隠れてこっそりと皮クリームで磨き上げたローファーは、スタジオのガラス扉に自分の姿を映し出すほど艶やかに輝いています。その足元から、ふくらはぎを包むニーハイソックス、そしてベージュのブレザーへと視線を移し、あなたは小さく息を吐き出しました。


「……よし。靴も、制服も、完璧」


鏡などなくとも、その質感と手入れの行き届いた清潔感が、今の彼女に「生徒会役員・真白」としての自信を与えてくれます。昨日までの「記憶を失った巫女見習い」という不安な足取りとは違う、少しだけ背筋が伸びた立ち姿。


スタジオの重厚なエントランスを見上げ、あなたは改めてその「本格的な環境」に圧倒されつつも、流石ですね……と感嘆の声を漏らしました。


受付カウンターへと歩み寄り、彼女は背筋を伸ばして一礼しました。


「お、おはようございます。あの、今日、佳奈さんの勉強配信のゲストとして招待していただきました、真白ですが」


その声は震えることなく、静かで凛とした響きを持っていました。


受付の女性店員の内心

(……あら? この子が、佳奈さんが昨日の夜からずっと「すごい逸材がいる!」って騒いでた子ね)


受付の女性は、彼女の姿を視界に捉えた瞬間、内心で感嘆の息を漏らしました。

——ベージュのブレザーにチェックのスカート。一見するとどこにでもいそうな制服姿ですが、靴の先からリボンの結び目まで、隙一つなく整えられた身なりからは、並外れた規律正しさが滲み出ています。


(それに、この言葉遣い……。ただの可愛い女子高生かと思っていたけれど、噂通りの『生徒会役員』っていう肩書きも、なるほど、これなら納得だわ。立ち居振る舞いに品があって、変に卑屈なところもない。撮影スタジオに慣れていないはずなのに、この落ち着きは一体何なのかしら?)


彼女はプロの笑顔で応対しながら、手元のリストを確認し、手際よくセキュリティ用のIDカードを準備します。


「おはようございます、真白様。藤田様の方から伺っております。こちら、本日の入館IDカードです。スタジオへの案内図も同封しておりますので、そのまま奥のAスタジオへお進みください」


「ありがとうございます。丁寧にご案内いただき、助かります」


手渡されたIDカードを両手で丁寧に受け取りました。その所作があまりにも自然で丁寧なため、受付の女性は(……ふふ、やっぱり只者じゃないわね。佳奈ちゃん、またとんでもない宝石を見つけてきたものだわ)と、今日の配信に密かな期待を抱かずにはいられませんでした。


IDカードを首から下げ、彼女はAスタジオへと続く廊下へ向かいます。一歩進むごとに、心臓の高鳴りが自信へと変わっていくのを感じます。


廊下を進むあなたの背筋は、まるで一本の弓弦のように張り詰めつつも、しなやかさを失っていません。すれ違う人々への対応一つひとつに、魂天神社で培った礼節と、彼女自身が内に秘める清廉さが表れています。


すれ違う男性スタッフたちへの挨拶:

「おはようございます。本日お世話になります、ゲストの真白です。よろしくお願いいたします」

彼らは最初、慌ただしく機材を運んでいた手を止め、驚いたように顔を見合わせました。

「おい、今の挨拶……!」

「新人のゲストか? いや、あの落ち着きっぷりはなんだ」と、廊下のあちこちでささやき声が漏れます。

普段、若いタレントからは挨拶を素通りされることも多い彼らにとって、彼女の丁寧なお辞儀と明瞭な挨拶は、新鮮な驚きと、どこか懐かしい清涼感を与えました。


「あ、おはよう……こちらこそよろしくね」と、強面の音響スタッフまでもが思わず敬語混じりに返礼し、彼女の去り際を「あの子、ただ者じゃないな」という視線で見送りました。


女性歌手との予期せぬ出会い:

廊下の角を曲がったところで、華やかなドレス姿の女性歌手とすれ違いました。彼女は立ち止まり、興味深げにあなたの全身をじろりと眺めました。


「あら、見ない顔ね。佳奈のところの新しい子?」


彼女は真白の制服に目を留めると、艶やかな笑みを浮かべてこう続けました。


「その制服、見たことないデザインだけど……ずいぶん凝ったアレンジね。清楚でとっても可愛いわ! 今日がデビューなの? 佳奈に負けないくらい、精一杯頑張ってね」


すぐさま立ち止まり、足の先を揃えて深くお辞儀をしました。

「お声がけいただき、本当にありがとうございます! まだまだ不慣れで緊張しておりますが、先輩方を見習って、精一杯努めさせていただきます」


真白の真摯な態度に、女性歌手は「ふふっ、なんて素直で可愛らしい子なの」と満足そうに微笑み、優雅に去っていきました。


控室への到着と最後の挨拶:

案内をしてくれた女性事務員が、重厚な扉を開けて「こちらが本日の控室です」と告げました。あなたは部屋に入る前、しっかりと彼女と向き合い、今日一番の丁寧さでお辞儀をしました。


「お忙しい中、受付から控室までご案内いただき、本当にありがとうございました。お陰様で落ち着いて準備を始めることができます」


事務員は一瞬、拍子抜けしたような表情を見せましたが、すぐに温かい笑みを浮かべました。


「いえ……こちらこそ、あんなに丁寧に挨拶していただいて、なんだか背筋が伸びる思いでした。頑張ってくださいね、真白さん」


扉が閉まり、静寂に包まれた控室。あなたは深く息を吐き出し、鏡の前に座ります。廊下ですれ違った人々の眼差しや言葉が、あなたの自信を少しずつ、確かなものへと変えていくのを感じていました。

「挨拶」という、最も基本的で最も大切な礼節。真白が魂天神社で、そして生徒会役員として積み重ねてきたであろうその所作は、殺伐としがちなスタジオの空気を一瞬で清涼なものへと変えました。彼女が通った後の廊下には、まるで朝の境内のようなくもりのない余韻が残っていました。

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