暗黒の法具と異世界からの迷い子
一翻市の片隅に佇む魂天神社。そこでは、自称・最強雀士の一姫が、通販で買った怪しげな法具を使い、役満パワーを手に入れようと禁断の儀式を行っていました。しかし、紫煙と光の中から現れたのは、神様ではなく記憶を失った制服姿の少女。一姫のデタラメな魔術が、世界の境界線を越えて一人の魂を召喚してしまったのです。
どんよりとした雲が立ち込め、怪しげな紫色の煙が境内に充満しています。普段は「肉まん!」と騒いでいる一姫が、今日は何やら真剣(?)な面持ちで、通販で買ったという「一発自摸確定!怪しげな暗黒の法具セット」を並べていました。
一姫:「……エテモン・ポテモン・ロン・ツモ・ニャ! 一翻市の闇の力よ、今こそ我に最強の運を授けるニャ! この呪文を唱えれば、明日から国士無双が3回に1回は上がるようになるって説明書に書いてあったニャ!」
ワン次郎:「……一姫、お主、また騙されているのではないかワン? その怪しげな壺から、さっきから不吉な音しか聞こえてこないワン。麻雀の道は日々の鍛錬にあると、あれほど教えたはずだワン」
そこへ、騒ぎを聞きつけたかぐや姫が、扇子で煙を払いながら優雅に現れます。
かぐや姫:「おやおや、またこのちんちくりんが分不相応なことに手を出しておるのか。妾の月宮の力に頼れば良いものを、わざわざそんな安っぽい呪いグッズに頼るとは、救いようのないアホにゃんだな」
一姫:「にゃにをー! かぐや姫こそ、いつも引きが弱いくせに偉そうにするニャ! ほら、この法具が光りだしたニャ……! くるニャ、くるニャ! 最強の役満パワーが降臨するニャーーー!!」
一姫がデタラメな印を結んだ瞬間、法具の壺が激しくガタガタと揺れ、まばゆい光が爆発しました。
二階堂美樹:「ちょっと一姫、神社の掃除はどうしたの……って、何これ!? 何か出てくるわよ!」
光の中からゆっくりと浮かび上がってきたのは、一姫が期待した「役満の神様」ではなく……制服を着た、どこか心細げな一人の少女でした。
一姫:「……ニャ? 役満の神様にしては、なんだか普通の人間に見えるニャ。というか、制服着てるニャ? 新種の精霊かニャ!?」
かぐや姫:「ふん、役満どころかただの迷い子ではないか。しかも……おかしな気配を感じる。魂がどこか別の世界から引きずり出されたような、ひどく不安定な状態じゃな」
ワン次郎:「おい、大丈夫かワン? 気分は悪くないかワン? 名前は言えるかワン?」
二階堂美樹:「待って、みんな。この子、目が泳いでるわ。……ねぇ、あなた、自分が誰だか分かる?」
一姫が放ったデタラメな呪文と、通販で買った怪しげな法具が引き起こした爆発。その光が収まった中心で、あなたはフラフラと立ち上がります。
「ここは……どこ? 私は……誰……? それに、えっ、犬が喋った!? あと、その猫耳は……本物……?」
震える声が響くと、現場の空気は一瞬で「一姫への追及モード」へと切り替わりました。
一姫:
「にゃにゃっ!? 猫耳は地毛に決まってるニャ! 失礼な奴だニャ! ……って、それより記憶喪失ニャ!? まさか、最強の運を呼び出すはずの呪文が、異世界の迷い子を召喚しちゃったニャ……? これは返品不可って書いてあったし、マズいニャ、責任取らされるニャ!」
(必死に証拠の法具セットを足で隠そうとする)
ワン次郎:
「おい一姫、隠しても無駄だワン。お主、とんでもないことをしでかしたワン! この娘さんは魂の座が不安定だワン……。お嬢さん、安心するワン。拙者はワン次郎、ただの修行中の犬だワン。喋るのは、まあ、一翻市ではよくあることだワン」
(冷静にあなたの脈を測ろうとするが、前足なので上手くいかない)
かぐや姫:
「くすくす……。あきれたものじゃな。ちんちくりんが闇の魔術に手を出すから、役満どころか厄災を招いたのじゃ。しかし……『私は誰』、か。妾の月宮の知識でも、お主の出所は分からぬな。これは面白い見世物になりそうじゃ」
二階堂美樹:
「ちょっと、かぐや姫も面白がらないで! 一姫、あんたは後で説教よ。……大丈夫、怖くないわ。私は二階堂美樹。ここは一翻市にある魂天神社。あなたが何者か、私たちが一緒に調べてあげるから。……とりあえず、その『犬が喋る』ことに驚けるなら、常識は残ってるみたいね」
一姫は「記憶を戻すには、もう一回呪文を唱えればいいニャ!」と、さらに怪しげな『記憶回復・全自動逆転魔方陣(中古)』を取り出そうとしています。ワン次郎はそれを必死に噛んで止めています。
混乱する頭を抱えつつも、一姫が持っているスマホの画面に「麻雀アプリ」のアイコンが光っているのが目に入りました。
一姫:「そうだニャ! 記憶がないなら、まずは麻雀を打つニャ! 麻雀は魂の対話、一局打てばあんたが何者か分かるはずニャ!」
二階堂美樹:「……強引だけど、この街じゃあながち間違いじゃないのが癪ね。どうする? このまま一姫のデタラメな治療(?)を受けるか、一度落ち着いてお茶でも飲む?」
一姫の強欲が生んだ前代未聞の召喚事故。記憶を失い、常識すら通用しない世界に放り出された真白は、自らを守る術を知りません。しかし、彼女を見つめる一姫たちの瞳は、どこか楽しげでもあります。少女の失われた記憶の断片は、果たして卓上に並ぶ牌の中に隠されているのでしょうか。




