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評価を失った悪役令嬢は、すべてを見返すことにした ~誰かに決められる人生なんて、もう終わりです~  作者: ルナ・ローゼ


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第21話 決めさせる者の正体

 ――私は、“決めさせる側”だ。


 その一言で。


 空気が、完全に変わった。


 重い。


 ただ重いのではない。


 ――逃げ場がない。


 その存在は、何もしていない。


 ただ、そこに立っているだけ。


 それだけで。


 場のすべてが、支配されていた。


「……そう」


 わたくしは、小さく息を吐く。


 視線を逸らさない。


 逸らせば、終わる。


「では、あなたが」


 一歩、踏み出す。


「“基準”を作っているのかしら」


 黒は、わずかに首を傾げた。


「違う」


 短い否定。


 だが、その一言に迷いはない。


「基準は、すでにある」


「では」


 さらに踏み込む。


「あなたの役割は?」


 沈黙。


 ほんの一瞬。


 だが。


 それだけで、空気がさらに張り詰める。


「簡単なことだ」


 黒は、静かに言う。


「選ばせる」


 その言葉に。


 ミレイアが、小さく息を呑む。


「選ばせる……?」


「そうだ」


 黒の視線が、ゆっくりと周囲をなぞる。


 わたくし。


 ミレイア。


 元婚約者。


 そして。


 その他の生徒たち。


「人は、選ばなければならない」


 淡々とした声。


 だが。


 それは、命令に近い。


「何も選ばないことは、許されない」


 その一言で。


 場の空気が、さらに重くなる。


 逃げ場が、完全に消える。


「……強制、ですのね」


 わたくしは、静かに言う。


「違う」


 黒は、即座に否定する。


「選択だ」


「同じではなくて?」


「違う」


 今度は、わずかに強く。


「選択は、常に与えられている」


 その言葉に。


 わたくしは、少しだけ笑った。


「では」


 一歩、近づく。


「拒否する選択は?」


 黒の目が、わずかに細くなる。


「存在しない」


 即答。


 迷いがない。


 それが。


 この存在の本質。


「なるほど」


 頷く。


「では、あなたは」


 さらに踏み込む。


「選ばせることで、何をしているのかしら」


 黒は、わずかに沈黙した。


 初めてだ。


 この存在が、間を取ったのは。


「……定義している」


 ようやく出た言葉。


「何を?」


「価値を」


 その一言で。


 すべてが繋がる。


 評価。


 基準。


 そして。


 選択。


「つまり」


 わたくしは、静かに言う。


「あなたがいる限り」


 視線を外さない。


「人は、必ず“決められる”」


「違う」


 黒が、否定する。


 だが。


「“決める”のだ」


 訂正。


 だが。


 それは本質的に同じ。


「いいえ」


 わたくしは、首を横に振る。


「あなたがいる限り、それは“誘導”ですわ」


 その一言で。


 空気が、わずかに揺れる。


 黒の視線が、わずかに変わる。


 初めて。


 “興味”が混じる。


「……面白い」


 小さく、呟く。


「何がですの?」


「気づいている」


 黒が言う。


「だが」


 一歩、近づく。


 その距離が、急激に縮まる。


 圧が増す。


「それでも、選ぶ」


 その言葉に。


 わたくしは、ほんの少しだけ笑った。


「当然ですわ」


 迷いはない。


「選ばないことは、存在しないのでしょう?」


 黒は、わずかに頷く。


「そうだ」


「では」


 さらに踏み込む。


「わたくしは、“あなたに従わない選択”をします」


 その瞬間。


 場が凍る。


 完全な静止。


 誰も、息をしていない。


 カイゼルですら、動かない。


「……興味深い」


 黒が、静かに言う。


「それは、矛盾している」


「ええ」


 わたくしは、あっさりと認める。


「ですが、成立しますわ」


「なぜ」


 問い。


 初めての、純粋な問い。


 わたくしは、少しだけ考える。


 そして。


「選択は、結果ではないから」


 答える。


「過程です」


 その言葉に。


 黒の目が、わずかに揺れる。


 ほんの一瞬。


 だが。


 確かに。


「あなたは、“結果”で人を定義している」


 続ける。


「ですが、わたくしは違う」


 一歩、さらに近づく。


「選び続ける限り、定義は確定しない」


 沈黙。


 長い。


 だが。


 崩れない。


 黒は、じっとこちらを見ている。


 測るように。


 試すように。


「……ならば」


 やがて、口を開く。


「証明しろ」


 その一言で。


 空気が、再び動く。


「証明?」


「そうだ」


 黒の視線が、鋭くなる。


「お前の選択が、定義を覆せることを」


 その瞬間。


 背後で、誰かが息を呑む。


 ミレイアか。


 あるいは、他の誰か。


 だが。


 わたくしは、笑った。


「いいでしょう」


 迷いはない。


「何をすればいいのかしら」


 黒は、ゆっくりと視線を動かす。


 そして。


 一人の人物で止まる。


 ――元婚約者。


「……!」


 彼が、息を呑む。


「この者を」


 黒が、静かに告げる。


「再定義しろ」


 その一言で。


 場の空気が、完全に変わった。


 逃げ場はない。


 言い訳もない。


 これは。


 ただの議論ではない。


 ――実験。


 わたくしは、ゆっくりと彼を見る。


 怯えている。


 揺れている。


 そして。


 壊れかけている。


「……いいですわ」


 小さく、笑う。


「やってみましょう」


 その瞬間。


 すべての視線が、わたくしに集まる。


 期待。


 不安。


 恐れ。


 そして。


 ――観測。


 わたくしは、一歩前へ出た。


 そして。


 静かに、口を開く。


「では」


 息を吸う。


 そして。


「あなたは、何を選ぶのかしら」

ついに「決めさせる側」との直接対話に入りました。


ここからは、ただの理屈ではなく「実証フェーズ」です。

そして対象に選ばれたのは――元婚約者。


構造と感情がぶつかる、本当の山場に入ります。


もし続きを読みたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

次話では、この“再定義”がどんな結果を生むのかを描きます。

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