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評価を失った悪役令嬢は、すべてを見返すことにした ~誰かに決められる人生なんて、もう終わりです~  作者: ルナ・ローゼ


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第19話 基準は誰のためにあるのか

 ――基準ごと、選び直しますわ。


 その言葉を口にした瞬間。


 世界が、止まった。


 完全な静止ではない。


 だが。


 “動いてはいけない領域に触れた”という確信があった。


「……対象、異常発言を確認」


 上からの声が、わずかに歪む。


 初めてだ。


 この“声”が、乱れたのは。


 わたくしは、ゆっくりと息を吸う。


 ここが境目。


 ここを越えれば、戻れない。


 だが。


「……もう、戻るつもりはありませんわ」


 はっきりと言う。


 その一言で。


 空気が、さらに重くなる。


「ルナ……!」


 カイゼルが、低く呼ぶ。


 今度は、はっきりと警告だ。


「そこは、触れていい場所じゃない」


「ええ」


 頷く。


「だからこそ、触れます」


 その瞬間。


 内側からの圧が、強くなる。


 揃えようとする力。


 均そうとする意志。


 だが。


 それを、受け入れない。


「……基準の適用を開始」


 声が、静かに告げる。


 そして。


 わたくしの中で、何かが“決まりかける”。


「……っ」


 息が詰まる。


 思考が、整えられる。


 選択が、削られる。


 これは。


 これまでの“評価”とは違う。


 もっと深い。


 ――“前提”。


「……なるほど」


 苦しい中で、笑う。


「あなたたちは、ここで決めていたのね」


 人の行動を。


 価値を。


 すべての基準を。


「……それが、秩序だ」


 声が答える。


 今までよりも、はっきりと。


 まるで。


 “意志”を持ったように。


「秩序?」


 わたくしは、問い返す。


「誰のための?」


「全体の安定のため」


 即答。


 迷いがない。


 だが。


「では」


 わたくしは、ゆっくりと目を開く。


「その“全体”とは、誰かしら」


 沈黙。


 ほんの一瞬。


 だが。


 確かに。


 揺れた。


「……個を問う必要はない」


 返ってくる。


 だが。


 遅い。


「必要がないのではなく」


 一歩、踏み出す。


「答えられないのよ」


 その一言で。


 空気が、わずかに歪む。


「……危険だ」


 声が、低くなる。


「あなたは、秩序を否定している」


「いいえ」


 首を横に振る。


「問い直しているだけです」


 その違いは、大きい。


 否定ではない。


 選び直し。


「ねえ」


 わたくしは、静かに言う。


「基準とは、本来何のためにあると思う?」


 返答はない。


 だが、続ける。


「人を縛るためではない」


 もう一歩。


「選ぶための、目安です」


 その言葉に。


 ミレイアが、小さく息を呑む。


 分かっている。


 今、言っていることの意味を。


「ですが、あなたたちは違う」


 視線を上に向ける。


「基準を、“絶対”にしている」


 その瞬間。


 圧が、強くなる。


 怒り。


 あるいは。


 拒絶。


「……それが正しい」


 声が、断言する。


「正しいから、存在している」


「逆ですわ」


 即座に返す。


「存在しているから、正しいとされているだけ」


 その一言で。


 流れが、変わる。


 明確に。


「……論理の逸脱を確認」


 声が、わずかに乱れる。


「対象、修正を強化」


 次の瞬間。


 圧が、一気に強まる。


「……っ!」


 膝が、わずかに沈む。


 だが。


 倒れない。


「ルナ!」


 カイゼルが動く。


 だが。


「来ないで」


 手で制する。


「これは、わたくしの問題です」


 彼は、止まる。


 歯を食いしばりながら。


「……分かった」


 短く言う。


 信じている。


 だから、止まる。


 いい関係だ。


 わたくしは、もう一度前を向く。


 圧は、限界に近い。


 だが。


 まだ、選べる。


「……では」


 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。


「一つ、選びましょう」


 内側に意識を向ける。


 削られる前に。


 決める。


「わたくしは」


 息を吸う。


 そして。


「基準に従いません」


 その瞬間。


 世界が、割れた。


 音はない。


 だが。


 確かに。


 “何か”が、壊れた。


「……!」


 白い人物が、後ろで息を呑む。


 灰色も、動かない。


 完全に、予測外。


「……対象」


 上の声が、揺れる。


「基準への非従属を確認」


 その言葉に。


 わたくしは、静かに笑った。


「ええ」


 頷く。


「それが、わたくしの選択です」


 圧が、消える。


 完全ではない。


 だが。


 明確に弱まる。


 世界が、少しだけ軽くなる。


「……なぜ」


 声が、初めて問う。


「なぜ、従わない」


 わたくしは、少しだけ考える。


 そして。


「簡単ですわ」


 答える。


「それが、わたくしにとって“正しくない”から」


 沈黙。


 長い。


 だが。


 もう、揺れない。


 わたくしの中は、確定している。


「……理解不能」


 声が、そう言った。


 その言葉に。


 わたくしは、少しだけ笑う。


「でしょうね」


 当然だ。


 理解される必要はない。


 選ぶだけ。


「……再定義を実行」


 その一言で。


 空気が、再び変わる。


 今度は。


 拒絶ではない。


 ――再構築。


「対象:ルナ・ローゼ」


 声が、静かに告げる。


「評価方法を変更」


 その瞬間。


 全員が、息を止めた。


「……おい」


 カイゼルが、低く呟く。


「それは……」


 言葉が、続かない。


 そして。


 声が、はっきりと告げる。


「――選択基準による評価を開始」


 その一言で。


 世界のルールが、変わった。

ついに“基準そのもの”に干渉しました。


ここはこの章の中でもかなり大きな転換点です。

ルナが壊したのは評価ではなく、「評価の前提」でした。


そして始まる新しい評価――“選択”。


もし続きを読みたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

次話では、この新しい評価が他の人間にどう影響するかを描いていきます。

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