街道①
今日の夕方にも投稿します。連続投稿の予定です。
よろしくお願いします。
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ドワッフ王国の国境を越えて数日、一行はようやく街道と呼べる道に行きついた。
しかし、道は左右に分かれている。アルドとココミが地図を広げて思案していると、商人トレドが自信ありげに前に進み出た。
「お任せください。ここらは、わしの庭みたいなものです。この道を右‥‥‥西に進めば、馴染みのストン村がありやす。ドルフ村の出稼ぎ人たちも、まずはあの村で一杯やってから、各地の鉱山へ向かうのが習わしでして」
トレドの言葉を聞いてココミが同意を求めるようにアルドを見上げた。アルドは静かに頷きを返す。公の指針を決めるのは、聖霊の使徒であるアルドの役目。それは彼がココミのギルドに籍を置いてからも変わらない、暗黙の了解だった。
ストン村まで半日ほどの距離まで来た、そんな時だった。
すっとアルドが足を止める。魔物の気配を感じ取ったわけではない。だが、まるで冷たい手が心臓を撫でたかのような、妙な胸騒ぎがしたのだ。
「アルドさん‥‥‥? もしかして、この道の先ですか?」
彼のただならぬ様子に気づいたココミが、険しい表情で前方を睨む。
「ああ、そうだ」
アルドの短い応えに、ココミは即座に両目を閉じて集中する。再び開かれた彼女の瞳には、複雑な幾何学模様が淡く輝いていた。『鑑定眼』。その力が捉えた光景に、彼女は声を震わせた。
「村の方角です! 人が‥‥‥魔物に襲われていますっ」
アルドは即座に決断を下す。
「俺が先に行く。ココミさんとアンネはここで防御陣を。偽装や陽動の可能性があるかもしれない。俺が村人と判断したら合図を送る。その後、順次俺との合流を図ってくれ」
言い終えるが早いか、アルドは街道を駆け出していく。その背中に、ココミの緊迫した声が追う。
「私たちも周囲を警戒しながら、すぐに後を追います!」
これは道すがら、幾度も確認してきた手順だった。もしドワッフ王国が戦火にまみれているならば、街道の治安は崩壊しているだろう。その場合、斥候としてアルドが先行して状況を把握して、ココミ達の本体と合流する。商人トレドによれば、この辺りの街道は十日に一度は魔物か、もしくは追い剥ぎに遭遇するという。それを聞いて、命がけの商売なのだな、とアルドが漏らすと、トレドは「まあ、その分うまく行けば儲けも大きいですからな!」と豪快に笑っていた。
(十日に一度の災難、か)
走りながら、アルドは思考を巡らせる。陽動の可能性を口にはしたが、村人を襲うことが陽動であるならばその目的は何だ? 盗賊の類か、それともココミたちと想定した最悪の事態――ドワッフ王国を揺るがす戦火。その混乱の中で起きた、村に略奪に入ったと考える方が自然だろうな。だが、もし本当に戦火が確定なら、出稼ぎ人たちの安否も楽観視はできなくなる。
前方にもうもうと砂埃が舞っていた。ココミが観た襲撃現場に違いない。
木々の切れ間から見えた光景に、アルドは眉をひそめた。ゴブリンとコボルドの混成部隊。ドルフ村やブリッツ監査官を襲った者たちと同種だ。
(やはりドワッフ王国が、混乱の根源かっ‥‥‥!)
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