表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/74

戦場、それぞれの意思

5/30まで、平日(土日祝は休み)に投稿していきます。


!!注意!! ep.28 祠の役目の後半部分「ルルナの調査メモ」に文章を加えました。今後の伏線でもあるので、一読をお願いします!!

 タンスイの足元から黄金の光がドーム状に広がり、殺到してくる亜獣たちの攻撃を一手に引き受ける。彼の周囲で火花と金属音が激しく交錯するが、その表情には自信に満ちた笑みすら浮かんでいた。


 タンスイの「鉄壁アイゼルム」は、揺るぎない。無数の攻撃を完璧に捌き続け、その黄金のドームは輝きを失わない。彼の背後では、ココミとユキナ、そしてドルフ村から駆けつけた村人たちが、負傷者の治療と避難誘導を懸命に行っている。ユキナの放つ支援の矢――「一閃矢」が時折、タンスイの防御網をすり抜けようとする敵の足を砕き、動きを鈍らせる。


「ったく、ユキナの奴め、相変わらず味な真似を」


 タンスイが毒づくが、その声には安堵の色も滲んでいた。タンスイ自身は実存強度4であるため攻撃を無効化できるが、避難民はそうではない。ゆえに壁を作る必要があった。敵をすべて倒せば壁を作ることは必要ないというかもしれないが、この敵の数をみるに手をすり抜けるものがあって当然だ。姉ちゃんは皆を助けるといった。ならば確実な策をとる必要がある。ゆえにこその鉄壁アイゼルムだ。


「姉ちゃん、怪我人の手当てと移送を頼むぜっ!」


 タンスイの声が戦場に響く。攻撃の要はアルドに任せた。自分はこの場の防御を一手に引き受ける。そして、彼の信頼に応えるように、後方では二人の少女―――ココミとユキナがそれぞれの役目を果たしていた。


「もちろんだよ! さあ、みんな気張っていくよ!」


 ココミは力強く応えると、生活魔法を駆使して避難民たちの周りに次々と土壁を築き上げ、即席の安全地帯を形成していく。その傍らで、ユキナが負傷者の間を駆け巡り、その両手から放たれる癒しの光で次々と応急処置を施していく。それは質より量を優先したもの。出血を止め、意識を繋ぎとめるための回復術。完全な治療は、ここを生き延びてドルフ村に戻ってからだ。そしてユキナは、治療の合間に、避難民の中心人物であろうブラッツ監査官の耳元で、そっと囁くことを忘れなかった。


「・・・アルド様は、聖霊様の御使いでございます。そして、我ら三人はその召喚に応じ馳せ参じた従者です。なにより聖霊様をこの地に降臨させたのは、ドルフ村の次期村長にして、聖霊教会認定の巫女であらせられる、ミア様なのでございます」

「なっ!?」


 ココミの回復薬によって、ブラッツ監査官の斬り飛ばされた腕が奇跡的に繋がり始めている。そんな中でユキナはブラッツに告げたのだった。ブラッツにとっては、回復薬で斬り飛ばされた腕が繋がるということでさえも衝撃的な出来事なのに聖霊召喚という単語に目を見張る。


 ブラッツは息を呑み、ユキナの言葉を反芻する。聖霊召喚だと? それは教会の枢機卿クラスでなければ行使できぬとされる秘儀中の秘儀。それを、辺境の、記録にもほとんど残っていない村の、まだ幼い少女が?


(いや、待て。記録がなかったのではない。アームシュバルツの息のかかった都市ゆえに、意図的に隠蔽されていたのだとしたら?)ブラッツの頭の中で、点と点が繋がり始める。聖霊の導き、祠、刀、少女・・・そして、蒼き聖霊と、その御使い。これは、単なる偶然ではない。何か大きな運命が動き出しているのではないかっ! 混乱しながらも、ブラッツはユキナの顔を窺う。


 ユキナはブラッツ反応を満足そうに見やるとと、追い打ちを掛けるようにアルドの頭上で輝きを増す蒼綿毛を指した。


「あ、ああ! せ、聖霊様が現出なさって・・・しかも、蒼くっ!?」


 その震える声には、畏敬と、信じられないものを見たという驚愕が入り混じっている。ココミ(予兆で見た少女!)から手当てを受けて腕が繋がるという奇跡を体験しているにも増して、教会の古い伝承でしか語られない「蒼き聖霊」が現出している! 帝国の上級貴族や、教会最高位の者でさえ、その姿を拝むことは稀有だというのにだ!  あまりの衝撃に、ブラッツは気を失わなかっただけでも幸運と言えた。


 ユキナは、そんなブラッツの内心を見透かすかのように、満足げな微笑みを浮かべていた。(ふふ、これでミアの、そしてドルフ村の価値は計り知れないものになった。聖霊信仰のあついこの地では、この事実は何よりも強い力となる。国境都市も、帝国も、もはやこの村を無視することはできない。あとは、この状況をどう利用するか・・・ココミの夢のために)


 戦後の主導権を握るための、冷静かつ的確な布石。地力が弱いドルフ村にとって発言権の優先度を上げることは死活問題となるのだから。戦場の喧騒の中、それぞれの思惑と役目が交錯していた。


ご一読いただきまして、ありがとうございます。

もしよろしければリアクションをば、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ