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村を整備発展していこう②

5/30まで、平日(土日祝は休み)に投稿していきます。

今週の投稿時間は不定期(夕or夜?)になります。


 それまで神妙な顔で大人たちの話を聞いていたミアが、何かを思いついたように、ぱっと顔を上げて身を乗り出した。


「木材や石材のことでしたら、村に来る商人の方にお願いすれば、集めてもらえるのではないでしょうか?」


 子どもらしい純粋な提案に、ユキナは聖母のような(とアルドには見えた)優しい微笑みを向けた。


「ふふ、そうですわね、ミア様。商人に依頼すれば、時間はかかるかもしれませんが、確実に、そして良質な材料を集められるでしょう」

「はい!」


 ミアが嬉しそうに頷き、期待に満ちた目でユキナを見上げる。

 

「ですが」


 ユキナは、諭すように、しかしはっきりと続けた。


「それには、多くの金子(おかね)が必要になりますわ。今の私たち、そしてこの村には、残念ながらその余裕はあまりありません。それに、外部の商人に大々的な資材調達を依頼すれば、私たちの動きーーー村を急いで立て直し、人を集めようとしていることが、外の世界に必要以上に伝わってしまうかもしれません。今のこの不安定な状況で、それは避けたい事態です。ですから、できる限り、まずは私たちの力だけで必要なものを集め、村の基盤を迅速に固める必要があるのですわ」


 ユキナの理路整然とした説明に、ミアは「はい」と小さく頷き、しゅんとうなだれてしまった。


(まあ、ユキナの言うことは正論だ。外部との接触という蛇口を今は固く絞っておいた方がいいかもしれない。今の脆弱なドルフ村の現状が知れ渡れば、力のある者の食い物にされかねない。まさに弱り目に祟り目だよな)


 アルドは彼女の真意を探る。


(彼女が最も警戒しているのは、彼女たちと同じMMO『ストラクト・フォンズ』のプレイヤーだろう。戦闘職の上位者、もしくは特殊スキルを持つ者‥‥‥そんな連中が近くにいないとも限らない 。今は力を蓄えるべき雌伏の時と考えているのだろう。だが、それだけじゃない気もする。彼女のことだから温存した金子は、いずれ帝国の貴族あたりへの裏工作に使うべきだと考えている‥‥‥のかも、な)


 アルドがそんなことを考えていると、ユキナがアルドの視線に気付いてにっこりと微笑んできた。あっ、あながち的外れではないかもしれない。


 と、そんなやりとりの傍で、ココミが元気をなくしたミアの隣に寄り添い、その小さな肩を優しくぎゅっと抱いた。


「ミアちゃん、大丈夫だよ。ユキナちゃんの言うことも正しいけど、ミアちゃんの考えも間違ってないからね。それとね、もし私たちが村の近くで木や石を見つけたら、それを村のために使ってもいいかな? 村の建築資材に使いたいんだ。ミアちゃんはドルフ村の長なんだから、この村のことはミアちゃんが決めていいんだよ。私たちは、村長として頑張っているミアちゃんを心から応援したいんだ。だから、お金は本当にミアちゃんが必要だって思う時のために、だから今は取っておこう?」


 よしよしと安心させるようにミアの頭を優しく撫でた。


 ミアの健気さと、彼女を支えようとするココミたちの姿に広場の空気も和らいでいく。そんな中で、タンスイの豪快な声が響いた。


「うっしゃ! 話は決まりだな。よーし、ミア! 俺も姉ちゃんもユキナも、アルドのおっさんも、みんなで頑張るからな。だからミアも、いっぱい食って元気出せ!」

「もう、タンスイ君ってば、急に大きな声出すんだから」


 ココミが呆れ顔で笑う。


「は、はいっ! タンスイ様!」


 ミアも小さな笑みを浮かべ、こくりと頷くと、残っていたサンドイッチを一生懸命にもぐもぐと食べ始めた。その様子に、周りの村人たちもつられて笑顔になり、広場にはようやく、悲しみの中にも確かな希望の灯がともっていることを実感して、温かな空気が流れ始めていた。陽の光も、先ほどよりいくらか力強さを増したように感じられる。


 アルドは皆の様子を見ながら、話を本筋に戻すことにした。


「それでユキナ。村の記録書には、資源の具体的な場所も記されていたのか?」

「ええ」


 ユキナは手元のメモ(いつの間に用意したのか)に視線を落としながら答える。


「木材に関しては、この聖霊の地から東へ半日ほど行った森に、建材に適した良質な『建木けんもく杉』が自生していますわ。鉱石については、南に見える山岳地帯ですわね。そこにかつてドワッフ族が使っていた古い鉱山の場所が、いくつか記されておりました。主に鉄鉱石や銅鉱石が採掘されていたようですわね」


 ユキナが指さす南の山々は、朝日に照らされてはいるものの、どこか不穏な影を落としているようにアルドには見えた。ドワッフ王国の方向‥‥‥今回の騒動がやって来た場所に近い。


「そこまで詳しい記録が残っているとは。ということは、やはり昔のドルフ村は、林業や鉱業で栄えていた時期があった、ということか?」

「おそらくは。以前はドワッフ王国領でしたから、王国への原材料供給地としての役割が大きかったのでしょう。ですが帝国領に編入されて以降、その役割は徐々に縮小し、結果としてドワッフ王国への『出稼ぎ』という形になった‥‥‥記録からは、そう推測されますわ」


 なるほど。帝国の政策転換か、あるいは何か別の理由か。いずれにせよ、時代に翻弄されてきた村ということか。アルドは腕を組む。そして、ここが聖霊の地であり地域の調停役の村、その役割は代々の村長が担ってきた。とすると、これからはミアが、 彼女にその重責が‥‥‥調停者となるのか。

 アルドは、懸命にパンを頬張るミアの横顔を見つめて、ぽつりと呟いた。


「‥‥‥調停者、か」


 その言葉に、ミアがびくりと肩を震わせ、顔を上げてアルドを見た。


「は、はいっ!?」


 次の瞬間、ミアの顔がみるみるうちに赤くなり、俯いてしまった。


「ま、まだまだ未熟者ですっ! ち、調停者などという大役、わ、私にはまだ‥‥‥。で、ですが、アルド様のご期待に応えられるよう、精一杯、頑張りますっ!」


 しどろもどろになりながらも、健気にそう言い切るミア。その姿にココミが「うんうん、ミアちゃんなら、きっと立派な調停ができるようになるよー」と再び優しく頭を撫でている。

 ユキナも、ふわりと柔らかい、しかしどこか計算された完璧さも感じさせる微笑みを浮かべて、言葉を添えた。


「ドルフ村の長となる家系は、代々、聖霊を感じ取る力が特に強いとされていますわ。ミア様はその中でも、先代の村長よりも強い力をお持ちであると‥‥‥出生時に、聖霊教会から特別な『巫女候補』としての認定を受けていらっしゃると、記録にはございましたわ。ですから、聖霊の巫女として調停に臨めば年齢は関係ないと思いますわね」


 そこでユキナは、ふと思い出したように言葉を継いだ。


「それともう一つ。村の記録によれば、聖霊様の御遣いたる方の正式な称号は『御使徒』とされていますわ。これよりはアルド様を『御使徒様』とお呼びするのが、聖霊教会の作法に適いましょう」

「そうだな。しかし、聖霊教会‥‥‥? そんな組織もあるのか」


(それにしても、御使徒様、ときたか。肩書がまた一段と重くなった気がするんだが‥‥‥)


 アルドが新たな情報に眉をひそめていると、ぽんっ、と軽い音と共に、ルルナが蒼綿毛の姿でアルドの肩のあたりにふわりと現れた。まるでアルドの疑問をよそに、祝福の光を振りまきながら宙を舞い、ミアの頭の上に、そっと、まるで花の冠を載せるように、ちょこんと静かに乗ってみせた。


「「「おおーっ!! 聖霊様が、ミア様のもとにっ!!」」」


ご一読いただきまして、ありがとうございます。

もしよろしければリアクションをば、宜しくお願いします。

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