第72話 あっと驚くおみやげだよ
「それじゃさっそく相談、というか質問をさせてもらおうかな? 俺に与えられた試練は、どうすれば達成した判断になるんだ?」
「うむ、当然の疑問だね。けれど、それはあえて曖昧なままにさせてもらうよ。ただ、こういった計画を考えていて、それが成功すれば試練は達成できるだろうか、みたいな相談が来ても拒否はしないよ。とはいえ、それじゃ無理、とか、可能性はあるね、くらいの曖昧な返答とさせてもらうけどね」
うーん、やっぱりゴールは教えてはもらえないか。
……とはいえ、達成できなさそうだと教えてもらえる、ってだけでもありがたいかな?
「それとね。今回の試練に、期限は設けてないのさ。つまり、君があきらめなければ何年かけてもいいし、その間も時間の流れはそのままにしておくよ」
期限がないって、それでいいのだろうか?
時間の方も、同じようにしてくれるみたいだし。
「それって、いつかは試練を達成できるんじゃないか? 多分、何年かかってでも諦めないと思うぞ?」
希望がある限り、諦めたくないからな。
それに、俺以外にも皆を巻き込むんだ。
俺がもし諦めそうになっても、そう簡単に諦めさせてくれない気がする。
「うんうん。むしろ、その方がいいのさ。試練と言うのは、色々と頑張った結果達成してもらうために与えるからね」
……確かに、そうか。
願いを手の届くところまで持ってくるのが、試練の目的だもんな。
本人が努力し続ける限りは、徒にそれを取り上げることはしないってことだろう。
「なるほどな。……とりあえず、色々と考えてみるよ」
「それじゃ、願いと試練の話は終わりだね! さて、それじゃ親睦を深めるために、色々と話をしようじゃないか」
あ、やっぱりやるのね。
◇
というわけで、神様とは色々な話をした。
途中話に出た、動物や魔物の願いについて聞いてみると、その個体が強く願えばその願いが天界まで届くようになっているそうだ。
そして、同じように願いに対する試練を与え、達成すれば願いが叶うようだ。
とはいえ、知性が高くなければそもそも願うということは不可能だし、善性な生物にしかその機会は与えられない(危害を与える願いはNG)ので、実際にそうなった例は多くはないらしいけど。
それと、人間の場合にも命の危機などに陥った時に強く願えば、神様曰く努力ポイントを消費して、助かることもあるらしい。
そのこともあってか、この世界では努力したり、悪いことはしないようにって考える人が多いみたいだ。
もちろん、そうではない人も一定数いるだろうけど。
◇
「それと、ソフィアについてお礼を言わないとだね」
「お礼?」
何のことだろう?
度々、ソフィアの間違いに修正を入れていたこと?
俺がこの世界に来たから、ソフィアの仕事が増えたこと?
……色々思い当たるような、若干違うような。
「ハクトくんがこの世界に来てから、ソフィアが以前よりも楽しそうにしているからね。ああ、もちろんその前からも、漫画を読んだりして楽そうにしていたけれどね」
「そうなのか? まあ、楽しいなら何よりだし、別にお礼を言われるような感じでもないかな?」
俺が来る前よりの、っていうのはわからないけど、まあ楽しそうにはしているか。
お城に行っておいしいものを食べたり、新しい魔道具を使って料理を作ったり。
それと、閲覧者は限られてるけど図書館も始めたしな。
……うん。
確かに俺が関わった結果、おいしいものを食べたり、新しいことを始めたりしているか。
あっ、それに、
「ここに来る前に、お別れが寂しい、なんて言ってくれたな」
「ほう、そうかい! ふむふむ、仲良くしているようで何よりだ。僕が生み出した天使は、僕の家族であり子供のようなものだからね。これからもよろしく頼むよ」
「……まあ、一応色々とお世話になってるしな。それに、一緒にいると色々と楽しいし、これからも仲良くしていくつもりだよ」
ソフィアの、あの何とも言えないコメントを聞けないと、なんだか物足りない身体になってしまったし。
◇
その後も色々と雑談をしたが、流石に喋るのも疲れて来た。
話の内容としては、神様も案の定というか色々と漫画を読んでいて、それについての話が多かったな。
「おっと。随分と長い時間、話をしてしまったようだね。名残惜しいけど、今日はここまでにしようか。まだ色々と話したいこともあるし、たまに顔を出してくれると嬉しいね」
……神様って、そんなに気軽に会うものじゃないと思うんだけどな。
まあ、当の本人がそう言ってるし、たまに会いに行こうかな?
色々と話したおかげで、神様だってことをそこまで意識せずに話せるようになったし。
「それじゃ、試練について方向性が固まった時にでも、また相談に来させてもらおうかな?」
「ぜひとも、そうするといい。もちろん、そうでなくても気楽に来るといいさ。……その時には、僕がどうやって生まれたかについてでも話そうじゃないか。どうだい? またすぐに会いたくなっただろう?」
あ、そういえば神って存在は本来、概念みたいなものって言っていたな。
……うーん、ちょっと気になって来たけど、また今度にさせてもらおう。
「気になるけど、やっぱり試練の方を優先して考えたいかな」
「おっと、振られてしまったね。それじゃ、人間界に送るとしようか」
との言葉に、俺が了承の返事をしたところで、
「あ、そうだ! これ、お土産」
と箱を手渡された。
それが何かを聞くより先に、視界が光に包まれた。
◇
光が晴れると、すぐ近くにはソフィアがいた。
「お早いおかえりでしたね。……もしかして、創造神様からぶぶ漬けでも出されてしまったのでしょうか?」
なんて、元祖ぶぶ漬けの天使から言われた。
……いや、二代目が出て来られても困るけど。
「あー、いや。最初に冗談で勧められたけど、試練を達成すれば願いを叶えてもらえることになったよ」
「そうでしたか。それはよかったです。……ところで、ハクトさんの手に持っている箱は、試練に関係する物なのでしょうか?」
え? あっ!
そういえば、帰りがけに神様から突然渡されたんだった。
「お土産ってくれたんだけど、なんだろう? ……とりあえず開けてみるか」
ティッシュボックスくらいの箱を開けてみると、その中には……
「植物の芽、か?」
何かの新芽のような物がいくつか入っていた。
「これは、世界樹の新芽ですね」
「世界樹!?」
RPGとかでも出てくる、重要アイテムっぽいものを渡されてしまった。
え、何かクエストでも発生したの?
まさか、これをどこかに植えて育てろ、とかじゃないよな?
「ソフィア。これって、かなり貴重なもの、だよな?」
「そうですね。世界樹から切り取った芽は、魔力を籠めていないと、すぐに萎れてしまいますので」
やっぱりそうだよな。
何故、神様は俺にこんな重要な物を……。
……ん?
なんだか、言い方が気になるな。
「えっと。そもそも世界樹ってかなり貴重な植物……でいいのか?」
「そうですね。ごく一部の地域しか育てることができず、葉は希少な薬草として使われておりますので」
あー。
希少ではあるけど、素材としては出回っているのか。
なら、別に重要な意味とかはないか。
……とはいえ、何故お土産として渡したかはわからないけど。
「じゃあ、この新芽も希少な薬草として使えるのか?」
「そうですね。ですが、せっかくですので天ぷらていただくのはどうでしょうか?」
……ん?
今、天ぷらとか言わなかったか?
「……えっと、食べれるの? いや、薬草として使えるくらいだし、食べても大丈夫なんだろうけど」
「そうですね。以前、創造神様から頂きましたが、とてもおいしかったです」
「あ、食べたこともあるのね」
しかもおいしかったと。
つまり、本当にただのお土産だったってことか。
……いや、山菜を多めに取ってきたらおすそ分け、みたいな感じで世界樹を渡さないで欲しいんだけど。
◇
というわけで、今日のお昼は天ぷらになった。
もちろん、メインは世界樹の芽の天ぷらだ。
ソフィア曰く、おすすめの食べ方は塩で、とのことなので少量の塩をつけて食べてみた。
想像よりも甘味があり、その中にほんのりと苦みがあった。
けれど、それがむしろアクセントとなっていて、とってもおいしかった。
次に神様に会った時には、お礼を言わないとな。
ちなみに食事後にふと疑問に思い、
「なあソフィア。この箱のおかげで、世界樹の新芽が萎れなかったんだよな? もしかして、あんまり出回らない食材なのか?」
なんて、ソフィアに聞いてみた。
「そうですね。基本的に、現地で食べるしか方法がありませんので。その箱は、入れたものの状態を完全に保存して持ち運べるようですね。おそらく、市場には出回ってはいない魔道具でしょうね」
まさかの箱の方がやばいやつだった!
……あの神様のことだし、絶対に狙って渡したんだろうな。




