第63話 これはケーキですか? はい、party timeです
というわけでそれぞれ、自分がどんな立場か、どんなことが好きかなどをそれぞれ紹介していった。
その中でユズは、
「は、ハヤテちゃん。皆なんだかすごい人なんだけど、どうしよう。私なんて、おじいちゃんのおもちゃ屋で手伝いをしてるだけだよー」
なんてちょっと気圧されていた。
◇
皆の自己紹介が終わり、それぞれが談笑を始めた。
今回はパーティって言ってもかなり緩い感じで、マナーとかは気にしなくてよさそうだ。
……集まっているメンバーを考えると、それでいいのか、とも思うけど、まあ堅苦しいのは皆嫌いそうだしな。
それで、さっきちょっとあれだったユズは大丈夫かな? と様子を伺うと、ハヤテと魔皇について話していた。
「魔皇の方たちは、前にパレードで見たことはあったけど、近くで見るともっとすごいね! ホムラさんは美人さんかつ強そうな見た目だし、アオイさんは眼鏡も相まってか知的な感じがするよー。前に、アキナからリンフォンの開発者って聞いたし、やっぱり頭がいいんだろうなー」
「ホムラも魔法がすごく得意なんだけど、それに加えて身体もすごい鍛えているんだよ~。戦うのが好きだからなんだって~」
ホムラのあの肉体は、やっぱり鍛えているんだな。
……そして鍛えている理由もやっぱりホムラだった。
「アオイは色んな知識を持ってるから、賢いとは思うよ~。昔から魔界で色々な研究していて、その過程で得た知識もいっぱいあるみたいなんだ。それと、メイも読書が好きだから、本から得た知識はいっぱい持ってるよ~。それに、ボクも頭はいいよ!」
「えー。ハヤテちゃんはずる賢いって感じじゃないかな? それと、メイさんはお人形さんみたいな見た目をしていて、なんだか不思議だったよー」
「ボクだって長く生きている魔皇なんだから、色々知っているんだからね! ……それと、ボクだけちゃんづけなのは何だか気になるな~。メイも、ちゃんづけで呼んでもよさそうだし~」
「だって、ハヤテちゃんとは仲良しだけど、他の人とは会ったばっかりだもん。それに、魔皇だからハヤテさん、なんて呼ぶのも嫌だよー。ハヤテちゃんが正体を教えてくれて、それでもっと仲良くなれた気がしたのに、なんだか距離が離れちゃう気がするんだもん」
「そ、それならしょうがないな~。ボクをちゃんづけ呼べるなんて特別だよ~!」
あ、ハヤテがちょっと照れてる。
さて、他の人はどうかな? と見渡してみると、アキナはホムラに飲食店の情報を聞きにいったみたいだな。
今はそれぞれ、おすすめの飲食店情報を共有しているみたいだ。
ソフィアもそこに混ざっていて、興味深そうに二人の話を聞いているようだな。
俺もちょっと興味があるし、後で教えてもらおうかな?
……あ、ソフィアが何かまた、ずれたことを言ったみたいだ。
◇
アオイとベイラは完成した魔道具をモニカに渡し、色々と話を聞いているみたいだ。
もう完成しているはずだけど、更なる改良点を探っているのかな?
一方で、メイが、おそらく収納から取り出したであろう本を、イズレに見せながら何かを話しているようだった。
表紙にはゴブリンが描かれているし、ゴブリンの物語の本だろう。
なんて思っていたら、二人が同時にこっちを見た。
え、な、なんでしょ?
「ふむ、ハクトにも意見を聞いてみるか。前に話し合った時、本に挿絵を入れてみることにしたが、どこに、どのような絵を入れるか悩んでいてな」
「……それと、ハヤテにも、聞いてみる」
と、メイはハヤテの所に行くとこっちに引っ張って来た。
……ユズが呆然としているな。
と思ったら、今度はアキナがユズを引っ張っていった。
この前行ったお店の話をする、とかかな?
◇
ハヤテも来たところで、ちょっと気になったことを聞いてみた。
「そういえば、イズレとメイは今日会ったばかりなのか? メイはよく教会に来ていたみたから、本の話をしにイズレのお店にも行ったのかな気になって。それと、イズレは魔界について色々知りたいって言っていたけど、そっちの方は進展があったのか?」
ハヤテは、メイに本について話を聞いてみるのもいいかも? って言っていた気がするし。
……メイに関しては、ハヤテが伝え忘れていた可能性もあるけど。
イズレの方は、魔界について色々聞いたりしたいから魔皇と会いたいって言っていた気がするんだけど。
「あ、ボクはちゃんとメイに話をしたよ~。だから、ボクのせいじゃないからね! それと、ハクトとデートした時にイズレのお店に顔を出したけど、その時に魔界をより広範囲に観光できる許可証を渡したよ~。ハクトも見てたよね?」
……あ、両方ともきちんとやっていたのか。
なんというか、すまんハヤテ。
というか、あの時はただ冷やかしに行っただけかと思っていたけど、それを渡してたのね。
……俺が飾ってあったフィギュアに驚いていた時にでも、渡していたんだろうな。
うん、あの完成度はすごかった。
「……ソフィアの本、面白かった」
あ、これ忘れていたやつだな。
「ふむ。そういえば渡してもらったな。人形、いや、フィギュア製作に集中しすぎて失念していた。……ふむ、製作が一旦落ち着いた時に使わせてもらうとしよう」
こっちもかい!
……それと、一旦落ち着くのって大分先になりそうな気がするけど。
この前行った時も、新しいフィギュアを制作し始めていたし。
その後は、三人で本について色々話し始めてしまった。
あれ? 今日ってパーティの為に集まったんだよな?
……雑談はともかく、これはフリーダム過ぎる気がする。
って、そういえばさっきからクレアの姿を見ていないけど、どこかに行ったのかな?
なんて思ったら、パーティ会場の大きな扉が開き、使用人だと思われる人たちが何かを運んできた。
蓋つきのお皿っぽそうだし、多分何かの料理かな?
その使用人の最後尾からクレアが登場し、テキパキとどこにどのお皿を配置するかを指示していた。
それが終わると、クレアは全員を見渡し
「皆さん、食事の準備ができたのですわ! それと、これから今日の主役が登場するのですわ! 注目してほしいのですわ!」
と、呼びかけた。
それを合図に扉から運ばれてきたのは……、
「おおー! これはすごいな……」
おそらく飴細工か何かで飾り付けられたであろう、三段重ねの巨大なケーキがカートに乗って運ばれてきた。
皆も口々に、わぁ! とか、すごい! なんて言って盛り上がった。
「こちらのケーキは、以前ハクトさんから教えていただいたショートケーキの作り方を元に、こちらのシェフ、パティオが作成したものなのですわ!」
「ご紹介に預かりました、パティオと申します。王城にてシェフを担当させていただいており、今回はこちらのケーキの監修、および調理に携わらせていただきました」
今日はパーティってことだし、パティオさんは丁寧な感じでいくのかな?
なんて思っていたら、
「……ふぅ、今日は私的なパーティみたいだし、堅苦しい挨拶はこれくらいで。今日は、魔道具のおかげでこんなに巨大なケーキを作ることができたよ。本当にありがとう! それと、周りにある料理のいくつかにも使わせてもらったよ。例えばそこにあるお皿の……」
「失礼します」
あ、パティオさんが色々言おうとしたところを、メアリさんに止められた。
……止めるのはいいけど、布で顔を塞いていて、ちょっとかわいそうなような。
でも、ああしないと暴走しそうだもんなぁ。
「……というわけで、献上していただいた魔道具で素晴らしい料理ができたのですわ! 使用人が飲み物を配っていくので、お好きな物を選んで持っていただきたいのですわ! それと、せっかくですし、ハクトさんに乾杯の音頭をしていただきたいのですわ!」
おっと、急に無茶振りがきた。
こういうの初めてだし、なんて言おうか……。
いい感じの言葉が全然思いつかなくて、運んで来てくれた飲み物も適当に取ってしまうくらいだった。
……まあ、今回は緩いパーティだし、その音頭も同じような感じでも大丈夫だろう。




